前回までは、未破裂脳動脈瘤が見つかる主原因の一つ、脳ドック(MRI)受診の是非について、自分なりに思ったこと、手術を終えて考えていることをまとめました。
今回は、タイトルに書いたとおり「死」について当時感じていたこと、考えていたことを書きたいと思います。
未破裂脳動脈瘤がありますよ!
と言われた人が、すぐに「死」の恐怖を感じるわけではないと思います。
普通は、未破裂脳動脈瘤?なんだ、それは?何やら危ない響きのある名前だが・・・。と言った感想を抱くだけではないでしょうか。
恐怖を感じるのは、医師の診察で「未破裂脳動脈瘤のリスク=破裂したときのこと」を聞かされ、それから自分なりに色々とネット探索しているうちに、ふと、底知れぬ恐怖に椅子から動けなくなっている自分に気付いたときではないでしょうか?
私はそうでした。
未破裂脳動脈瘤が破裂するとは?
脳動脈瘤が破裂すると、どんな症状が起きるのか?
これはどの医師の説明も100%同じだと思います。
「未破裂脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血が起きる。」
中には、「動脈瘤が破裂し、頭蓋内に膜は3層あり、その中のくも膜の内側の血管が切れることで頭蓋内に血液が溜まり、頭蓋内を圧迫したり、脳に栄養を送るべき血液がなくなり、様々な重篤な症状を引き起こすことです。」
と丁寧に説明してくれた医師もいました。
でも、私にとってこれは洒落にならない!
と事の重大さを認識させてくれた説明は、とある医師が口にした「広島・巨人で活躍した木村拓也さんって選手知ってる?」でした。
このブログでも書いてますが、子供の頃からジャイアンツファンなもので、彼が倒れたときの事も良く覚えていました。彼の本職は捕手でしたが、実際には内野および外野手として活躍していました。引退の年の2009年、延長になってベンチの捕手が足りなくなり、10年ぶりにマスクを被って急造捕手を務めた姿は今も記憶に残っています。引退翌年の2010年4月2日、巨人のコーチをしていた彼は試合前のノックをしていました。突然、ふらっと崩れるようにホームベース付近で倒れ、救急車で病院に運ばれました。そしてそのまま、意識が戻ることなく、5日後に亡くなられました。37歳でした。
その事を思い出し「今、この瞬間(正確には次の瞬間だが)で人生が終る。」
そう思ったら、もう全ての話が耳に入らなくなりました。
人生で初めて「自分が死ぬ」と言うことをリアルに感じた日でした。
未破裂脳動脈瘤が破裂し、くも膜下出血が起きた助からないの?
破裂したら大変な事態になることは理解出来ましたが、その大変な事態がどの程度大変な事態なのか?普通はそんな知識は持ち合わせていませんよね。だからあちこちの病院を回って聞くしかありませんでした。
その回答は以下の通りでした。
くも膜下出血が起きた場合、
- 3分の1の人はほぼ即死状態となる。
- 3分の1の人は重い後遺症を患う又は治療できず亡くなる。
- 3分の1の人は、元気、または多少の後遺症等が出ても社会復帰が出来る。
聞く医師によって、若干の程度の差がありますが、概ね上の様な見解でした。
この結果は、ネットで情報を探していたのでうすうす感づいてはいたけど、やはりかなりショックな回答でした。
未破裂脳動脈瘤が破裂する確率とは?
破裂してくも膜下出血が起きると大変な事になることは判った。
判ったのですが、では、その「破裂する確率」はどうなっているのだろうか?
きっとこの質問は多くの医師を悩ます質問だと思う。でも、未破裂脳動脈瘤の保持者がどうしても聞きたい、いや絶対に聞かざるを得ない質問の一つだと思う。
私が聞いた医師はほぼ以下の様な回答でした。
「一概には言えないけど・・・年1%と考えてください。」
と言うと思います。多少、補足してくれる医師の場合は、
「脳動脈瘤の大きさや出来た場所、年齢や既往症、家族の既往歴でも異なるし、あなたの喫煙歴や飲酒量によって程度は変わります。」
「●●さんの場合は・・・・」
と付け加えられるかもしれません。
未破裂脳動脈瘤の破裂は1%・・・1%か。
でも、この数字ってどういう統計が元なんでしょうか?
その点を突っ込むと、すぐに医師はこう言うと思います。
「脳ドックやMRIが日本人の健康診断に必須ではないので、正確な所は判りません。」
また、
「年1%として、5年後は5%、10年後が10%とは単純に言えないかもしれません。」
とね。
要するに、1%の根拠はこれまでのデータを元に破裂する確率を割り出しているのであって、果たしてそれがどれだけ正しいのかは、今の段階ではまだ研究途上だと言う事みたいです。
なぜなら、全ての人に脳ドック(MRI)受診が義務付けられているわけではないのが原因です。
くも膜下出血を起こした患者は、ほぼ全てが血管に何らかの異常(多くは未破裂脳動脈瘤)があったと考えられる訳ですが、くも膜下出血を発症した全ての人がMRI等で診断されていた訳ではないため、いつ、その異変(未破裂脳動脈瘤)が出来ていたのか判らないと言う事です。1ヶ月前なのか、半年前なのか、数年前なのか?正確には判らない訳です。
実際、私も脳動脈瘤が見つかった時に、いつ出来たのか?を聞いても、「正確には判らないと言われました。」
しかし、1週間後に再度MRIを撮った時には、「形やサイズに変化がないので、最近では無いと思う。よって、破裂の緊急性は無いと思われる」と言われました。
一方、くも膜下出血は実際に発症した人の数の把握は可能であり、その明確な患者の数を元に、その後の状態をデータとして蓄積しているそうです。
つまり、未破裂脳動脈瘤の破裂する確率と、くも膜下出血の死亡・生存率の統計とは、その統計の信頼度が異なるようでした。
未破裂脳動脈瘤の破裂確率のまとめ
平均すると1%程度である。
しかし、くも膜下出血を起こした患者が未破裂脳動脈瘤を持っていたのか?」または「持っていたならいつ発生したのか?」が正確に統計としてはない。
それゆえ、経験値の積み重ねで弾かれた数字であると言うことです。
未破裂脳動脈瘤の発見率と破裂率から自分の未来を探る
前回の記事では「脳ドック(MRI)において未破裂脳動脈瘤が見つかる確率」をまとめました。
記事を要約しますと、
●40代以上であれば、100人受ければ5人(5%)に見つかるでした。
今回の記事では、未破裂脳動脈瘤が破裂する確率と、破裂した場合の死亡率をまとめました。
●破裂する確率は1%である。
●破裂した場合の最終的な死亡率は約50%である。
この数字を調べた上で、僕は次のような計算をしていました。
1万人X0.05%=500人 500人X0.01%=5人 5人X0.5%=2.5人
計算して、意味の無いことには後になって気付きました。でもあの当時は計算せずにはいられない心境だったです。
1万人に対する死亡確率でいえば、0.00025%(1万分の2.5人)だ!
宝くじ1等の確率が1000万分の1、交通事故で死ぬ確率が1万分の1・・・
おお、やはり宝くじとは当たらぬものだ・・・。
うわっ、交通事故で死ぬ確率より高い!
と訳の判らぬ比較を続け、現実逃避をしていた事を覚えています。
本当に意味がないんです。でも、やってしまう。
判ります。だって、そうでもしなければ、頭が冷静にならないんですよね。
だから、後で考えれば無駄な事をやっていいんです、調べ周り悩んでいいんです、ジタバタしていいんです。
真剣に悩み、その人なりの方法で見つけた光に一喜一憂していくうちに、少しずつ冷静に自分の現在を見る事が出来るようになります。
『自分自身の・家族との・恋人との・友人との「明日・来週・来月・来年・・・」を見るために、これから自分が何をすべきなのか?』を。
ここまで4回に渡って、未破裂脳動脈瘤が見つかる可能性やその確率、脳動脈瘤の破裂する確率とその怖さを述べてきました。
次回『未破裂脳動脈瘤と闘う ~揺れ動く心との向き合い方~』です。