日曜日の夕刊(著:重松清)を読んだ!
この本は、重松さんの作品の中で未読だった1冊でした。
かなり前に古本屋さんで見つけて購入していたのに、何故か『読み終えた箱』に入っておりました。収納の仕方を再考しないとダメみたいです。
12の短編からなる1冊で、ちょっとした空き時間に読むのに最適かな?と思って読み始めました。
『そもそも、日曜日に夕刊はないだろに・・・?』
と題名に対して独り突っ込みしながらですが。
すきま時間に少しずつ読むつもりが・・・一気に読み切ってしまいました。
読後の感想を、頑張ってまとめてみます。
『日曜日の夕刊』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は80点です!
いつもはあらすじを先に書くのですが、
今回は12の短編からなる本なので先に全体のおススメ度から始めました。
続いて、各話ごとの簡単なあらすじと、私的な気に入り度を紹介します。
12話からなる『日曜日の夕刊』の紹介
短編なので、あまり内容を書きすぎてしまうと、これから読む方が面白くないと思うので、サラッと触れるだけにしておきます。
私のお気に入り度、簡単なあらすじ、そして感想等をまとめています。
実際に自分で読んで感動したい方は、読まないほうが良いかも知れません。
第1話 『チマ男とガサ子』
お気に入り度A
(あらすじ)
とにかく細かく、神経質な28歳の男と、どれだけ下準備をしても悉く裏目に出てしまうドジな女の子。
この二人の出会いからゴールインまでを描いた話である。
(感想)
チマ男がどれだけ細かいのか、彼を振った女性の叫びを引用します。
ガスの元栓・トイレの電気・留守番電話・ハンカチ・定期―OK? LET’S GO!なんて紙を玄関に貼るな!!
思わず、すいません!
って叫びました。
だって、『定期』は私も玄関に貼った事あるから・・・。
LET’S GO!は書いてないけど。
それから、女の子の心の変遷描写が見事でした。
最初はチマ男のことを『細かい目配りが出来る人』と褒めていたのに、
次第に『細かいことにうるさいヤツ』となってしまう。
チマ男くんの行動で気になったのは、
相手の女性の『がさつな所』を最初から我慢出来ないのに無理に押さえ込んでいる点。
遅かれ早かれ破綻は見えているだろうに、なぜに我慢するのか?
最後の、チマ男からガサ子へのプロポーズはナイス!
定番かも知れないけど、気に入りました。
第2話 『カーネーション』
お気に入り度A(最後の最後でAになった)
(あらすじ)
よりのよって『母の日』に再婚相手を自分の子供に紹介しようとした誠司。
家にも外にも居場所を失いつつある女子高生の聡子。
認知症の母の面会帰りの康夫。
この3人が乗り合わせた列車の網棚に、一輪のカーネーションが置かれていました。
カーネーションが置いてある理由を自問自答する3人。
そこへ、途中から乗車し傍若無人に振舞う若者3人が花をを取ろうとすると・・・
「やめてよ!」
「その花に触るな!」
「あっちに行け!」
思わず3人は顔を見合わします。
終点で降りた後、聡美は電車に戻りカーネションを持ち帰る
康夫は母への土産にさくらんぼを買う
誠司は家に着き子供2人と亡き母(妻)の日を祝うと・・・
(感想)
誠司の2人の子供がパパへ繰り出すサプライズ・・・きっと泣きますよ。
思わずウッ!と来ない人とは飲みにはいけません。
第3話 『桜桃忌の恋人』
お気に入り度B(最後の最後でBへ)
(あらすじ)
大学入学したばかりの広瀬くんが主人公である。
国文科のクラス名簿作成時に、好きな作家欄に太宰治と書いたことから話は展開していきます。
彼は太宰の宰の字を間違えて書いていたのです。ウ冠の下を辛ではなく幸と・・・。
その事を知って突っかかる太宰マニアの女性・永原さん。
広瀬の苦しい言い訳にあっさりと納得すると、今度は広瀬が太宰の生まれ変わりと思い込み始めます。
この永原さん、実は毎年5月に自傷行為を繰り返し留年すること数回・・・。
愛する太宰の自殺を真似し続けているのです。
そんな彼女に危険な香りを感じた広瀬は彼女から逃げ始めます。
しかし、ついに彼女の手に落ち、無理心中に誘われるのかと思いきや、彼女は一人で再び太宰の後を追ってしまうのでした。
独り後に残された広瀬がとった行動は・・・。
(感想)
途中はちょっとホラー気味ですが、最後のまとめは秀逸です。
おもわず、『流石、重松!そう来たか!!』と声に出てしまいました。
第4話『サマーキャンプへようこそ』
お気に入り度C
(あらすじ)
明晰な頭脳を持つ小学生の圭太と、アウトドアには縁のないパパの二人で参加したサマーキャンプの話しです。
学校の先生から、圭太は子供らしくないといわれ、子供らしいことをさせれば良いのではないかと考える母親の策略に乗った父親でしたが・・・。
アウトドア素人のパパは何も出来ず、2人して惨めな思いをする事になります。
彼ら2人のキャンプに未来はあるのでしょうか?
(感想)
正直って、私は気に入りませんでした。
良く出来たお子さんが救いですが、それだけです。
子供を持つ身になったら少しは変わるのかも知れません。
第5話『セプテンバー'81』
お気に入り度B
(あらすじ)
東京の郊外に30年ローンでマンションを買った男が主人公である。
37歳の誕生日を迎えた日と、ふと地方から上京し、友人たちと遊んで回っていた19歳の誕生日を思い出します。
1981年9月、大学の仲間とディスコへ遊びに行き、そこで出会った1羽のカラスとの不思議な一夜の回想とは?
(感想)
男なら間違いなく、誰もが1度は主人公と同じような回想をしているはずです。
『あの子はどうしているのだろう?』と。
男ってしょうもない生き物ですね。
第6話『寂しさ霜降り』
お気に入り度C
(あらすじ)
24歳の姉と18歳の妹の、ある3ヶ月の話である。
彼女達の父親は、姉が中学生のときに、愛人と暮らすことを選び、母と2人の娘を捨てることを選択します。
綺麗だった姉は、様々なストレスを抱えて過食症となり、今では体重90キロを超える巨漢になっていました。
従兄弟から妹へ、彼らを捨てた父親が危篤だと伝えられます。
妹自身は父親に会う気はないのですが、今の姉の状態を父親に見せて少しは反省させたいと思い、姉に父親の事を告げます。
すると姉は、妹の思いとは異なり突如猛然と『ダイエット』を始めるのでした。
目標は、父と別れたときの体型、3ヶ月で40キロ以上のダイエットです。
その結末は如何に?
(感想)
正直、う~ん・・・。なお話でした。
何でダイエット始めたのか、自分には理解出来ませんでした。
第7話『さかあがりの神様』
お気に入り度B
(あらすじ)
小学2年生の娘・葉子と37歳の父親・真一のお話である。
弟が生まれ、その世話に翻弄される母親。寂しいの我慢している娘を気にする母は、父親に葉子の逆上がりの手伝いを頼みます。
実は真一も、かつて母の再婚相手である『逆上がりの神様』に助けて貰った経験がありました。苦しい時に、無骨だけど、静かに支えてくれた大人の温かい手。
それを思い出した真一は、かつて自分がして貰ったように『ソッ』と娘に手を添えるのでした。
(感想)
凄い、いい話です。
真一にとっての故郷の話も良かったです。
(母が無くなり、疎遠になってしまった義理の父と、父親違いの弟の存在)
良い話なんですが、評価Aになるための『何か』が足りないような気がします。
短編なのに、色々詰めすぎなのかも?
第8話『すし、食いねェ』
お気に入り度B
(あらすじ)
保育園年長の子供・翔太とその両親による、ある日曜日の話である。
翔太の誕生日のプレゼントを買いにデパートへ来たのですが、プレゼントの値段の折り合いが夫婦で合わず、大切な日なのに喧嘩別れしてしまいます。
旦那は先に帰ってしまい、母と子二人だけで居たところに、バラエティー番組のディレクターが声を掛けてきます。
普段は行かないような店で食事をする風景を撮りたいと。
要するに、高級料理に慣れない家族の慌てふためく様を撮り、それをお茶の間で笑ってやろういう企画なのである。
妻は、その企画の意図を知りつつ、腹の立つ旦那をその企画に放り込むことで、喧嘩の憂さを晴らそうとします。
銀座の高級寿司店に放り込まれた旦那と翔太の行く末や如何に?
(感想)
私、こういう類の話が苦手です。
旦那と翔太が恥かしい目に遭うと判っているので、読んでいても落ち着きがなくなってしまうのです。
結果的には、家族の絆が深まる1日となるのですが、私は苦手です。
よって、評価はB。
第9話『サンタにお願い』
お気に入り度A
(あらすじ)
地方から出てきた浪人生が主人公である。
浪人生にも関わらず、本人は大学へ行く気を失っており、受験シーズン直前のクリスマスもピザの配達に精を出していました。
店の方針であるサンタのコスプレを着て配達を終え、店にバイクで帰ろうとした彼を呼び止めたのは・・・茶髪のギャルであった。この金で暫く付き合ってくれ・・・と。
あぶない雰囲気を感じて逃げようとする彼を必死に止めるコギャル。
押し問答の末、援助交際で得た金の使い道に困っている彼女の願いを叶えるため、しばし一緒に過ごすことにします。
彼女の行きたい場所であった、誰も居ないクリスマスの校舎に侵入し、そこで彼女の話を色々と聞くうちに、彼はある計画を思いつきます。
浪人サンタから彼女へのプレゼントとは?
(感想)
私的にはこの話好きです。
まず、話のテンポが好き。浪人生のモノローグも親近感が沸く話し方です。
ただ、このエピソードで伝えたいことは・・・イマイチ理解出来ていません。
ですが、読んだ後、なんだか『スッ』としたので、Aにしました。
第10話『後藤を待ちながら』
お気に入り度B(途中まではA)
(あらすじ)
中学の同窓会に参加するため、地元の町へ息子とともに帰郷した武史が主人公である。
彼らが中学3年生のとき、クラス全体で苛めた『後藤』が同窓会に来ると聞いて、お尻が落ち着かなくなる同窓生たち。
誰もが言います『苛めてた訳ではなく遊んでいただけだ』。
そして誰もが判っています『自分たちが後藤を自殺未遂に追い込んだ』。
暫くすると、同級生の子供と遊ばせていたはずの息子の姿が見えなくなり、慌てて友人たちと息子を探すことになります。
息子はどこへ行ったのか?
後藤はいつやってくるのか?
(感想)
子供の頃の何気ない『イジメ』
その頃は決して判らないけど、
- 年を取って初めて判ること
- 親になって初めて判ること
誰もが、きっと心のどこかに『チクッ』とした痛みを感じるお話しです。
お気に入りはAのつもりでした。
でも、最後の最後でBになりました。
期待しすぎたのかも知れません。
重松がイジメに対する回答を出してくれるんじゃないかと・・・。
第11話『柑橘系パパ』
お気に入り度C
(あらすじ)
中学3年のヒトミが主人公である。
小学6年から中2の夏まで単身赴任で家を不在にした父親が、3年ぶりに実家に帰ってきました。その父親に『どう接して良いのか判らない』ヒトミの苦悩が描かれています。
- 母と二人で楽しくやっていた家に異物が入り込んだ違和感
- 嬉しそうな母親への反発
思いつめた彼女はついに、消臭剤を手にして『自分の家庭に入り込んだ異臭』を取り除こうと実力行使に訴えます。
父親と年頃の娘の関係について描いたお話しです。
(感想)
読んでいて悲しくなってしまったので評価Cです。
友人の家庭を思い出してしまって・・・。
なんで女の子って豹変したようにオッサンを嫌うのですかね?
小さかった頃は、『おじちゃん独りで寂しかった●●ちゃんが結婚してあげる』なんて言っていた可愛い娘さんだったのになぁ。
いまじゃ、彼女の父親とまとめて汚い物体扱いをされてます。
第12話『卒業ホームラン』
お気に入り度A
(あらすじ)
小学6年の智と彼が所属する野球チームの監督を務める父・徹夫のお話しである。
智が小学1年になったとき、父としては智とただ楽しくキャッチボールをしたいと思いグローブを購入した。しかし、智が友人たちに父は甲子園に出た事があると話したことで少年達が集まってくるようになり、やがて彼らをまとめて少年野球チームを作ることになるのであった。そして、甲子園出場経験を買われた彼は、半ば強制的に監督に就任させられるのでした。
選手の保護者それぞれが訴えてくる願いを受けつつ、先発メンバー、出場メンバー、ベンチメンバーのリストに頭を悩ませ続ける徹夫。その苦しんだ6年もようやく終わる最後の試合前夜、徹夫はベンチ入りメンバーの最後の1選手を誰にするか悩んでいた。
智の実力ではベンチ入りは厳しい。
しかし、父親としては最後のチャンスを息子にあげたい・・・。
試合当日、メンバー提出の直前になって徹夫は勝利至上主義を優先し、智をベンチ入りメンバーから外し、最後のチャンスを試合前に奪ってしまうのである。
勝利を目指し、父から鬼になったのに、試合はボロ負け。
この試合展開であれば、間違いなく智を出場させるチャンスがあったと悔やむ徹夫。
試合後、父親として智に謝ると、智は思わぬことを言い出します。
「中学でも野球をやるよ」
そう言う智を、父も母も「別のスポーツをしたら良いのでは?」と説得するのだが、彼は再度はっきりと言うのであった
「だって、ぼく、野球好きだもん」
それを聞いた父・徹夫は・・・。
(感想)
この話のテーマは、
- がんばれが必ず良いことがある
- がんばったって必ず良いことがある訳ではない
この2つなんだろうと思って読んでいました。
でも、読んでいるうちにちょっと違う気がしてきました。
このお話が教えてくれるのは、
- 人が心底何事かに打ち込むために必要なことは【好き】であるということ
それを、改めて教えられた気がします。
小学校の時、レギュラーに絶対なれない事は判っていました。
それでも僕は毎週末、4年間に渡ってグラウンドに通い続けました。
友達と野球するのが本当に好きだったから。
それを思い出して、ちょっと幸せな気持ちになれました。
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