チェーザレ 破壊の創造者(作:惣領冬実)読んだ!
歴史好きの方には是非読んで頂きたいおススメの歴史漫画です。
特に西洋史が好きな方は読んだらきっとはまります!
この漫画は、作者が時間を掛けて一つ一つの背景も描いているし、かつ時代考証もしっかり行っているので、私的には漫画の枠を超える作品だと思っています。
2017年2月現在、チェーザレは11巻まで発表されています。
今回紹介します第9巻は、ミラノ―フィレンツェ―ナポリの三国同盟の傘の元で、束の間の平穏をおくっていたイタリアの諸都市が、激動の歴史に巻き込まれていく予兆が描かれています。
第1~8巻までの各紹介記事はこちらをどうぞ。
漫画『チェーザレ 破壊の創造者 第1・2巻』を読んだ! - lands_end’s blog
漫画『チェーザレ 破壊の創造者 第3巻と第4巻』を読んだ! - lands_end’s blog
漫画『チェーザレ 破壊の創造者 第5巻と第6巻』を読んだ! - lands_end’s blog
漫画『チェーザレ 破壊の創造者 第7巻と第8巻』を読んだ! - lands_end’s blog
『チェーザレ 破壊の創造者 第9巻』のあらすじ
チェーザレのフィレンツェ行きに同行したミゲルは、1日休暇を貰いアンジェロの祖父の工房を訪ねます。
アンジェロから頼まれた『元気にしている・・・』と言付けを伝えにきたミゲルを、祖父は温かく家に招きいれようとします。
その祖父に対しミゲルは言います。
「ユダヤだから迷惑では・・・」と。
それを告げられた時の祖父の表情。
その後、
「ユダヤでもアンジェロと仲良くしているなら関係ない」
と言われた時のミゲルの表情。
この2人の表情がとても印象的です。
ミゲルと祖父の会話からは「フィレンツェの共和制」について知ることが出来ます。
共和制なのに、執政者がいる不思議の謎解き・・・。
帰り際、祖父からアンジェロへの土産としてレリーフを託されます。
アンジェロの若くして亡くなった母をモチーフにしたレリーフ・・・。
それを眺めるミゲルの横顔は、絵画のような美しさです。
メディチ家ではチェーザレとロレンツォが、イタリアの行く末を話し合っています。
- メディチの未来
- ボルジアの未来
- イタリアの未来
少しずつ、パズルのピースが見え始めます。
ローマ・バチカンにおいては、教皇庁とナポリの同盟が成立したとローヴェレ枢機卿が発表し騒ぎが起きます。
ミラノ―フィレンツェ―ナポリの三国同盟は誰もが知るところであり、その強固な同盟からナポリが離脱するからには、それ相応の見返りがあるはずと・・・。
案の定、教皇庁はナポリの王太子に、次期王位を約束していました。
そんな事を約束してはフランスを刺激すると騒ぎ立てる各枢機卿に対し、王位叙任権そのものを渡すわけではない、と詭弁を弄すローヴェレ枢機卿であった。
そして、ナポリが同盟に参加することで、コンスタンティノープル奪還の橋頭堡となることを告げると、多くの枢機卿は従わざるを得ない状況になるのであった。
ピサに戻ったチェーザレは、ジョバンニに父の病状が芳しくないことを伝え一日も早く学位を取る事を促します。
自分の邸へ戻ったチェーザレは、出迎えの中にアンジェロの姿を見つけ、戯れにスペイン語で話しかけます。最初の言葉は通じましたが・・・それ以上は・・・。
その後、アンジェロを部屋へ呼びロレンツォの様態がよくないことを告げ、
驚きの提案をします。
『ジョバンニについてローマへ行かないか』と。
ミゲルが祖父から預かったレリーフを受け取り、大聖堂で神に祈りを捧げているアンジェロが出会うのが・・・ミケランジェロでした。
ミケランジェロ曰く『なぜに芸術を目指したのか?』が興味深いです。
9巻の最後は、
人材派遣会社代表取締役チェーザレによる、
ジョバンニ枢機卿会社へのアンジェロ売込み大作戦です。
このくだり、とても微笑ましいです。
- スペイン語でわざとアンジェロに話して才能の一端を見せ付けたり
- チェーザレとの阿吽の呼吸で会話するアンジェロの様子を見せたり
- ジョバンニの人の良さも上手に引き出してアンジェロに教えたり
なかなか駆け引き上手な人材派遣会社です。
『チェーザレ 破壊の創造者 第9巻』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は75点です。
他の巻に比べると、それほど心躍るシーンがある訳ではないので・・・。
ただし、描かれていることはこれからのイタリアの行く末を暗示しており、重要な巻だとは思います。
『チェーザレ 破壊の創造者 第9巻』をおススメする人
- 歴史が好きな人
- 西洋史が好きな人
第9巻は歴史色はそれほど強くありません。
歴史好きならではの楽しみ方が出来る巻です。
ナポリ王家がこれからのイタリアの火種になる予兆を感じたり・・・。
『チェーザレ 破壊の創造者 第9巻』をおススメしない人
- 歴史の「歴」の字を見ただけで蕁麻疹が出る方だけ
この9巻はかなり読みやすい巻だと思います。
ミゲルとアンジェロの祖父との会話のシーンとか、普通に楽しめるはず。
アンジェロとミケランジェロの会話のシーンも普通に面白い!
『チェーザレ 破壊の創造者 第9巻』お気に入りの3シーン
9巻の中でもっとも興味を引かれた3つのシーンがありました。
- 歴史的に奥深いと感じるシーン
- 笑えるシーンあり
- そりゃ無理があるだろと突っ込むシーン
私的なお気に入りのシーンを紹介します。
ヨーロッパにおけるユダヤの存在
『ユダヤ人の問題』
と言うと、多くの人がナチスドイツ時代の迫害を思い浮かべるのでしょう。
ですが、ヨーロッパにおけるユダヤ人の問題は、実はとっても根が深いのです。
当初は、上手く共存していたのですが、14世紀の黒死病(ペスト)の流行で2000万~3000万もの人々が亡くなったことを契機に、それまで共存していたユダヤ人とキリスト教徒との間に溝が出来、迫害が始まったと言われています。
ミゲルとアンジェロの祖父の会話は、
彼らが生きていた15世紀後半のヨーロッパにおいて『ユダヤ』がどういう位置づけであったのか、私達に教えてくれる奥深いシーンだと思います。
ユダヤについてよくまとまっているサイトがありましたのでリンクしておきます。
危険な妄想を膨らますレオナルドさん
ミラノのスフォルツァ家に身を寄せていたレオナルド。
青銅の騎馬像を作ろうとしていたところ、
三国同盟が消滅しそうな時に芸術など作っている場合ではない!
と主君に言われてしまいます。
単なる騎馬像では敵を止められないと言われたレオナルドは、
騎馬像自体が武器となるシーンを妄想し始めます。
『青銅の騎馬が火を噴き、敵を追い払う』
危ない妄想するレオナルドに、思わず笑いました。
本当に、一歩間違えばただの危険なオッサンですね。
マヌエラからハンニバルへ
娼館でマヌエラとどう遊んだのか聞くチェーザレ。
遊んだことがないので、相手に任せたと答えるアンジェロ。
この会話から、
何ゆえにハンニバルの戦術の話になるのか・・・。
実際に、読んで確認してください。
きっと、「無茶苦茶な連想だろ~」って突っ込みたくなると思います。