村上海賊の娘 第3・4巻(著:和田竜)を読んだ!
前回の記事では、村上海賊の娘 第1巻・2巻の読書感想をまとめました。
噂に違わぬ面白さに引き込まれ、先が気になって仕方なく、続きもあっという間に読み終えてしまいました。
『村上海賊の娘 第1巻・2巻』を読んだ! - lands_end’s blog
今回の記事は、後編となる第3・4巻の読書感想です。
村上一族の物語はいよいよ佳境に入ります。
- 毛利と本願寺の同盟は?
- 本願寺への兵糧入れはなるのか?
- 村上水軍はどうするのか?
- 景姫は素直に結婚するのか?
第3巻・4巻を読み終えたのでまとめます。
『村上海賊の娘 第3・4巻』のあらすじと時代背景
(時代背景)
1576年に本願寺一向宗と織田信長勢力の間で行われた石山合戦のうち、村上水軍が加勢した毛利水軍と信長方の水軍(真鍋家が中心の泉州侍たち)が戦った「第一次木津川口海戦」が物語の舞台となります。
『村上海賊の娘 第3巻』のあらすじ
信長の救援を受けて天王寺砦の包囲は解かれます。
包囲が解けた戦場に、景は自らが本願寺方へ送り届けた信徒の源爺が取り残されていることに気付きます。
そこで、真鍋や泉州侍に爺を助けるよう請うのであるが、侍達にとって戦いを挑んでくる者の命を助ける理由は理解できず、むしろ奇特な事を言い出す女だと煙たがられてしまいます。
ついには、目の前で七五三兵衛によって殺されてしまうのでした。
信徒を追い払った信長はそのまま一気に本願寺へ攻めあがります。
しかし、鈴木孫一の統率の元で体勢を立て直した雑賀衆の鉄砲戦術の罠に嵌ってしまいます。間一髪のところで信長を救ったのは七五三兵衛でした。
乾坤一擲の戦術をかわされると、孫一は配下達におのおの紀州へ逃げのびるように指示を出し自分自身も戦場を脱出しようとします。
しかし、信長方が街道に設置した関所を超えるのは難しくて往生していた孫一が出くわしたのが、天王寺砦から脱出し瀬戸内へ戻る途中の景と弟の景親でした。
そして彼らに救われる形で関所を無事に通過し、信長方の包囲網を逃れるのでした。
自分が思い描く戦と現実の戦の違いを目の前で見て、助けたいと思った源爺や百姓達を救えなかった景は、失意のうちに能島へ戻ることになります。
島に戻った景は、父・武吉の勧めに従い、女らしく生きることを受け入れるのでした。
女性らしい衣服を羽織り、女性らしく化粧を施し、戦船に乗らず奥で過ごす、「景姫」としての生活・・・。
今までの景なら絶対に受け入れなかったはずの生活を、本物の合戦や本物の男達の戦いをつぶさに見たからこそ、景は素直にそれを受け入れるのでした。
念願の景の嫁入りが叶うと確信した村上水軍の棟梁・武吉は、毛利に味方することを決意し、本願寺への10万石に及ぶ兵糧入れを手伝うため、長男の元吉に数百艘に及ぶ軍勢を預けて派遣します。元吉は、毛利方の水軍(児玉家や及美家)の船団と共に兵糧を満載して淡路へ向うのでした。
兄たちの船団を見送る景を前に、父・武吉は大失態を犯してしまいます。
父は、「上杉が参戦しない限り戦闘にはならず、さらに上杉参戦の見込みは薄いので、兄じゃ達はそのまま無事に帰ってくることになる」、と腹の内を景に明かしてしまうのでした。
それを聞いた景は、自分が送り込んだ百姓たちが見殺しになると知り、女として嫁に行く生活を捨て、再度、戦場へ飛び込むことを決意します。
そして、能島を飛び出して淡路にて無為の日々を過ごしている毛利水軍に合流します。
兄たちに合流した景は、自分自身で信長方の水軍と和議交渉を行うと宣言し、真鍋七五三兵衛率いる敵側の陣地に乗り込んでいきますが、七五三兵衛が受け入れるはずなく和議は失敗に終わります。
結局、当初より決めていた引き上げ期限までに上杉参戦の確証を得られなかった毛利水軍は、船団をまとめて瀬戸内へ引き返してしまうのでした。
しかし、ただ1人景だけは、信長方に戦を仕掛けるため毛利水軍を離れます。
引き返して行く毛利水軍を半ば呆然と見送っていた真鍋水軍に対し、思わぬ方角から現れた小船団が攻撃を仕掛けてきます。
船団を率いるのは景、そして船団に乗り込んだ兵は、かつて戦場から脱出する際に恩を着せた孫一とその配下の雑賀衆でした。
七五三兵衛が率いる船団に殴りこみを掛ける景と雑賀衆の行く末やいかに・・・。
『村上海賊の娘 第4巻』のあらすじ
景が率いる雑賀衆が乗り込んだ小船団は真鍋家が統率する信長方の水軍に殴りこみをかけます。
一方、上杉の参戦が無いため予定通り瀬戸内に戻る毛利水軍ですが、その途上、景が一人で殴りこみを掛けに行ったことを知ります。
この事実が毛利水軍の中核である村上水軍に知れ渡ると、兵達は姫を助けるために戻ることを求め、雄叫びを上げるのでした。
村上水軍の将達は、兵達の求めに応じて毛利水軍を離脱することを決意し、毛利の将(児玉と及美)へ離脱することを告げると彼らも呼応し、全軍で戦場へ戻ることになるのでした。
殴り込みを掛けた景と雑賀衆ですが、得意の鉄砲戦術も海戦では思うような効果を得られず、真鍋水軍の戦術の前にジリジリと追い詰められていきます。
一隻、また一隻と沈められて行く雑賀衆の乗った船・・・
そこへ、毛利水軍の法螺が鳴り響きます。
しかしながら、海戦では姿が見えてから実際に戦闘に加わるまで時間が掛かります。
七五三兵衛は、景たちの小船団を壊滅させてから反転しても、毛利水軍に対処する余裕があると考え、まずは景たちの小船団を殲滅するべく切込みを掛ける準備を進めます。
この苦境を脱するため、景は自ら囮となり敵を引きつけて獅子奮迅の働きをします。
暴れまわる景に手を焼いた七五三兵衛は、味方が居るのも構わずに景が大立ち回りを行う船に対し、得意の銛を打ち込み沈めるのでした。
それでも、景の行動は無駄にはなりませんでした。彼女の活躍は狙い通り雑賀衆の壊滅を防ぎ、毛利水軍の来着までの時間稼ぎに成功したのでした。
こうしてついに、毛利水軍(中心は村上水軍)と織田水軍(中心は真鍋水軍)の戦いの幕が開かれるのでした。
- 村上水軍は噂に違わぬ強さを発揮するのか?
- 七五三兵衛によって沈められた景はどうなったのか?
- 数で負ける七五三兵衛達はどうなるのか?
- 戦の勝敗はどうなるのか?
最後の戦いだけは詳細を書いてしまうと読む価値がなくなるので書きません。
是非、本書を読んでお確かめください!
『村上海賊の娘 第3巻・4巻』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は80点です。
第1・2巻に続いて高得点です!
流石に人気作品だけあり、後半もダレません。
第4巻は第一次木津川口海戦だけで構成されていますが、ゲップは出ませんよ!
『村上海賊の娘』をおススメする人
- 歴史が好きな人
- 歴史の中でも特に戦国時代が好きな人
- 毛利や村上水軍、本願寺や雑賀などに触れる機会が少なかった人
- 天王寺砦の戦いや第一次木津川口海戦を良く知りたい人
歴史好きな人は絶対に読んでください!
損はさせません!!
『村上海賊の娘』をおススメしない人
- 歴史物が嫌いな人
- 残虐な表現(殺し方など)に耐性が無い人
- 戦闘シーンばかりの本は嫌いな人
まあ、歴史が嫌いな人は手にしないかな。
『村上海賊の娘 第3巻・4巻』を読んで感じた3点
第1・2巻を読んで感じたことも3点取り上げました。
- 関東圏で生まれた私にはギャク漫画にしか思えない
- 戦闘の描写が巧みなので臨場感がある
- 異常に強い武将を登場させるのが好きらしい
『村上海賊の娘 第1巻・2巻』を読んだ! - lands_end’s blog
第3・4巻でも気になったことを3点取り上げます。
もう少し武吉に光を当てて欲しかった
「信長の野望」などのゲームで戦国時代に親しんだ私にとって、村上水軍といえば村上武吉が全てです。
ゲームでは西日本では最も強い武将の1人であり、水軍を率いると滅法強くて何度も痛い目に遭いました。
その彼が・・・ちょい役というのは残念です。
まあタイトルが「村上水軍の娘」なので、景が主役になるのは仕方ありません。
ですが・・・
武吉の海戦シーンも読みたかったなぁ。
この小説で初めて村上武吉を知った人が、ただの親馬鹿なオッサンと思ってしまいそうで心配です。
村上水軍の強さの秘密が判りにくかった
真鍋水軍や、その他の海戦に不慣れな泉州侍達の乗った大型船に対しても、村上水軍の将兵達は強さを発揮していました。
ですが、その強さがイマイチ判りにくかったです。
海戦だと練度に差があれば圧勝で終わると思うのですが・・・。
意外と手こずっている印象でした。
まあ、七五三兵衛と景に焦点を当てている分、脇役の活躍がぼやけるのは仕方が無いのかも知れません。
登場人物たちのその後を追ったエピローグが素敵
第一次木津川口海戦終了後の後日談としてエピローグが最後に収められています。
これが私的にはヒットでした。
自分はこういう後日談とか好きなので、思わず何度も読み返してしまいました。
- 村上水軍衆のこと
- 毛利家のこと
- 本願寺のこと
- 信長のこと
- 真鍋家のこと
- 泉州侍たちのこと
- などなど・・・。
ネタバレになるので詳細は書きませんが、読んでいて「へー」とか「ほー」など楽しめましたし、「そんなことがあったのかぁ」という驚きもあり、歴史好きの人はこのエピローグだけでも読んで欲しいです。
今回、全4巻をあっという間に読んでしまいました。
久々に大当たりの歴史小説でした!
おススメです!!
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