ビブリア古書堂の事件手帖第5巻(著:三上 延)を読んだ!
鎌倉にある古書店の美人店主・栞子と、
大学卒業後に職がなく、縁あって古書堂でアルバイトを始めた青年・大輔。
彼ら2人が古書に纏わる様々な謎や陰謀を解いていく小説です。
今回読んだのは、当シリーズの第5巻です。
読後の感想をまとめます。
『ビブリア古書堂の事件手帖第5巻』のあらすじ
当シリーズを読んだことの有る方ならご存知かも知れませんが、ビブリア古書堂シリーズでは、各章で様々な本が取り上げられています。
それゆえ、あらすじ紹介も各章毎にまとめていきます。
プロローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
4巻で大輔は、栞子に自分の気持ちを告白したが、栞子はすぐに回答せず、5月まで待って欲しいと伝えるのであった。
その点に関して、大輔の視点で、栞子の気持ちが『何処にあるのか』思い悩む様子が描かれています。
第一話 『彷書月刊』(弘隆社・彷徨舎)
古書店界隈で噂になっている『不思議な売主』についての謎を解く章です。
謎の売主は彷書月刊のセットを売りのですが、数日後に自分でそれを買い直すのである。もちろん値段は、店側の売値で構わないと・・・。
そして暫く経つと今度は別の店で売り、数日後に買い直すことを繰り返すのでした。
この謎に包まれた売主の狙いは一体何であるのか?
この話しを仕入れてきた大輔が、店で栞子に話すと、彼女は驚いた表情を浮かべます。
『まさに、彷書月刊を売りたいという連絡を受けた』と。
やがて、店に現れた謎の売主はごく普通の『初老の女性』でした。
売りに出す彷書月刊のセットは、これといった特徴のある品ではなく、『新田』という書き込みがある上汚れもあり、高くは引き取れない品であったが、売主はその値段で構わないと言い、売買契約を結びました。
数日後、せどり屋の志田が知り合いの男を連れて古書堂を訪れます。
彼らが持ち込んだ本を栞子が査定している間、連れて来られた男は『あの彷書月刊のセット』について何か志田について話していました。
そこで、査定終了後、何を話していたのか志田に訪ねるのですが、特に謎の解明に役立つような回答は得られませんでした。
しかし、数々の謎や事件を解明してきた2人には志田の様子から『何か』を感じ取っていました。
- 『新田』というマークは何を意味するのか?
- 志田の『意味深な行動』は何なのか?
- 彷書月刊を『再び買い戻す』のはなぜか?
結末は本書にてぜひ!
第二話 手塚治虫『ブラック・ジャック』(秋田書店)
栞子の友人リュウによって話が持ち込まれます。
父親が大切にしている本のコレクションの一部が盗まれたので、依頼者の菜名子は父親が出張から戻るまでに取り戻したいと考えていました。
犯人は既に判明しており、引き篭もりになっている弟・慎一でした。
しかし、姉が訪ねても理由を話そうとはしませんでした。
この手強い弟に対し、栞子は父親が収集していたブラックジャックには、いくつもの版
が存在すること解説しながら、少しずつ弟に口を割らせることに成功します。
彼は、父親の本を盗むことで父親にショックを与えようとしていました。
なぜならは、母親が危篤状態で病院に駆けつけるときに、父親が本屋へ寄り道して買った本が、ブラックジャックの4巻だったからでした。
母親の死に目よりも大切にした本を奪うことで、父親に怒りを現そうとした訳です。
栞子はブラックジャックの4巻が4冊ではなく5冊あったことに着目し、
『なぜ、父親がわざわざ死に目に会えなくなってでも4巻を購入したのか?』と言う謎を解いていきます。
謎の真相は本書にてぜひ!
第三話 寺山修司『われに五月を』(作品社)
かつて両親が店を経営していた頃の常連さんの弟であり、栞子が継いでからも頻繁に店に本を売りに来てくれた男・澄夫が話を持ち込みます。
栞子が継いだばかりの頃に澄夫が持込んだ本は、実は盗本であっため、その対応で栞子も澄夫の家族も多大なる迷惑を掛けられていました。
そのため、栞子は澄夫を店に出禁にしていたので、当然、持込んだ依頼も断るつもりでした。しかし、彼が持ち込んだ話は、栞子の母親からの『ある意味挑戦状』であったため、母親に会う為にやむなく依頼を引き受けることになるのでした。
依頼は、亡くなった澄夫の兄が遺言で、『寺山修司の『われに五月を』を澄夫に譲る』と伝えたのだが、家族がそれを信じずに渡さないからどうにかしてくれ。というモノでした。
これまでの彼の所業を考えれば、遺言自体が嘘でしかないと誰もが思ったのですが、栞子は念のため澄夫の実家を訪れ、状況証拠を集めていきます。
亡くなった兄の書斎を調べ、
妻から話しを聞き、
栞子は一つの結論に到達します。
兄の遺言は●●である!
真実は本書にてぜひ!
エピローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
大輔の告白に対し、5月末までには答えますと言った栞子でしたが、その期限を前にして大輔に『気持ちを受け入れる』ことを伝えます。
それでも、
『いつか母親が自分達を捨てたように、突然どこかへ行きたくなるかも知れない・・・、それが怖い・・・』
と話す栞子に対し大輔は、
『いや、俺もいっしょに行けばいいじゃないですか』
と諭すのであった。
最後に、栞子を階段から突き落として大怪我を負わせ、現在は収監中であるはずの田中敏夫から挑戦状が届きます。
『晩年』をすり替えたお前の猿芝居をしっている。連絡しろ。
『ビブリア古書堂の事件手帖第5巻』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は70点です!
面白かったです。
謎解きも
2人の関係の発展も
ワクワクしながら読むことが出来ました。
ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
- 作者: 三上延
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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『ビブリア古書堂の事件手帖第5巻』をおススメする人
- 色んな本の存在を知ることが好きな人
- ドロドロしてない純情恋愛モノが好きな人
- これから出張でサラッと数時間で読める本を探している人
『ビブリア古書堂の事件手帖第5巻』をおススメしない人
- 激しいアクション等がないと興奮できない人
- 色んな本の裏話には全く興味が持てない人
- シリーズ物の本は1巻から読まないと納得できない人
※シリーズ物なので、本来は1巻から読んだ方が楽しめます。
ただし、この第5巻だけでも読むことは可能です。
『ビブリア古書堂の事件手帖第5巻』の2大面白ポイント
この第5巻における面白ポイントを2つ上げておきます。
あくまでも私の視点なので、同様の感想を皆さんが持たれるかは判りません。
目次にはない断章が存在する
プロローグ、第1~3章、エピローグはあらすじで簡単に触れてますが、
この第5巻では各章のあとに、それぞれ『断章』が存在します。
しかもこの断章、目次には記載がありません。
4巻までには無かった試みであり、作者の新しい仕掛けなのかも知れません。
断章は、物語の語り手が直前の章で関わった人になり、物語を別の角度から補完するような内容となっています。
ちょっと、ネタバレ気味かもしれませんのでご注意を!
断章Ⅰ 小山清『落穂拾い・聖アンデルセン』(新潮文庫)
せどり屋の志田目線で語られます。
栞子が、彷書月刊を売っては買い戻す謎の女の正体を暴いたことを『敢えて志田』に伝えに来ます。
- なぜ、彼女は各地の本屋に彷書月刊を売っては買い戻しているのか?
- そして、その行為が志田にどう関わっているのか?
が語られています。
断章Ⅱ 小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫)
親友・リュウの目線で語られます。
栞子と待ち合わせをしている時に、かつて、彼女の母親と出会った時のことを回想するシーンが語られています。
栞子は、リュウが母親と連絡を取っていると感づき、母と連絡を取りたいとリュウに依頼します。
断章Ⅲ 木津豊太郎『詩集 普通の鶏』(書肆季節社)
栞子の目線で語られます。
なぜ、母親・智恵子が父親と一緒になることになったのか?
その経緯を母親に尋ねています。
なぜ愛した男と幼き娘2人を捨てて失踪したのか?
傷ついた娘の疑問も語られています。
ついに進展、栞子と大輔の関係
第1巻からスタートした、栞子と大輔の純情物語もついに動き始めます。
はっきり言ってエロさはゼロ!その点に期待してはダメです。
2人の奥手な関係には、読んでいてお尻がムズムズすることもあります。
とはいえ、4巻まで読んできた読者にとっては、
ある意味、産みの親の心境で2人の関係を見守る事が出来るのではないでしょうか?
どう進展するのか、ぜひ本書でご確認ください!