村上海賊の娘 第1巻・2巻(著:和田竜)を読んだ!
この数ヶ月、ミステリーやエッセイ中心の読書が続いたので、大好きな歴史関連の本を読みたくなりました。
歴史物回帰に選んだのがこの「村上海賊の娘」です。
「色んな人にこの本は面白いよ」と言われていたので読みたいと思っていたのですが、何故かタイミングが合わずに未読のままでしたが、ようやく手にしました。
文庫本は全4巻で構成されていますが、まずは第1・2巻を読み終えましたのでまとめることにしました。
『村上海賊の娘 第1・2巻』のあらすじと時代背景
(時代背景)
1576年に本願寺一向宗と織田信長勢力の間で行われた石山合戦のうち、信長が石山本願寺を包囲するために築いた天王寺砦を舞台にして行われた戦いがメインです。
『村上海賊の娘 第1巻』のあらすじ
大阪の地を押さえ、経済発展の地盤固めをしたい信長は、一向宗の総本山である石山本願寺に対して和議を結んで退去することで門徒の祈りを助けることを提案します。しかし、本願寺側の回答は「拒否」であった。
そのため、石山本願寺を包囲するため信長や次々と砦を築き兵糧攻めを開始します。
それに困った本願寺側が西の大国・毛利に助けを求めたことから物語が始まります。
毛利としては信長の勢力拡大を止め、自家の安泰を図るためにも本願寺側に付いて船で兵糧を運ぶことに同意します。しかし、その実現のためには瀬戸内を押さえている村上水軍の協力が必要でした。
そこで、家臣の児玉と及美(水軍の武将)を村上水軍の総本山に遣わします。
村上水軍の長である武吉は織田ではなくて毛利に付くしか村上の未来がないことは理解していました。ですが、今や織田家に対抗するには毛利だけでは叶わず上杉の参戦が必須であると考えていました。
ところが、彼が実際に口にしたのは『我が娘を児玉が嫁にもらうのであれば味方する』でした。
武吉の娘・景は、この時代の美的感覚ではとんでもない醜娘でした。
現代であればかなりの美人と思われる彫の深い顔や長い手足は、当時はとんでもなく醜い女として見られていました。
よって、児玉自身は嫁に貰うことを「その場で」断固拒否しますが、毛利家重臣から家のためだと促され嫁にすることを決意するのでした。
一方の景は、能島で児玉が父親に結婚は断ると告げるのを聞いてしまい、だったら自分で旦那を探してやると思い立ち、本願寺へ加勢に向かう百姓のじい様から異国人に慣れた堺では景のような顔つきこそ美人だと言われて上方へ向うことにします。
堺へ行く前にじい様達を本願寺へ送り届けるべく木津砦へ向う途中、信長方の泉州海賊・真鍋一家に捕まってしまいます。
ところが、じい様が言ったごとく泉州の侍はこぞって景を美人だと褒め、しまいにはじい様達を敵方の木津砦に届ける景たちの船を、あとで景が天王寺砦に信長方の総大将へ侘びを入れにくれば返すと約束して景の弟・景親を人質にすると、笑顔(?)で見送ってくれるのでした。
『村上海賊の娘 第2巻』のあらすじ
無事に百姓を届けた景は、申し開きのために天王寺砦へ向い、信長方の総大将・原田直政に謁見します。
その後、真鍋主催の宴会が催されます。
尾張から来た原田にしてみれば景は醜女ですが、泉州侍にとってみれば景は極上の美人であり、本願寺攻めを前に開かれた宴会は景を肴に盛り上がるのでした。
本願寺方の木津砦と信長方の天王寺砦を巡る戦いが始まります。
泉州侍を率いる沼間家の活躍、泉州侍の中で最強の侍・真鍋七五三兵衛の活躍もあり、木津砦は陥落寸前まで追い込まれます。しかし、突如、本願寺から繰り出してきた新手の雑賀衆の鉄砲部隊と鈴木孫一の戦術によって総大将の原田が討たれると状況は一変します。
信長方が総崩れになりかかった所を、真鍋七五三兵衛が駆けつけ奮闘することで押し返し、泉州侍達は辛くも天王寺砦に逃げ込むことに成功します。
そして、援軍が到着するまで天王寺砦で篭城します。
救援要請を受けた信長は、簡易の砦では長くは持たないと考え、軍勢が集まるのを待たずに僅かな手勢で救援に向うのでした。
この信長の奇襲戦術は成功し、砦を囲んでいた本願寺方の勢力を打ち破ることに成功するのでした。
『村上海賊の娘 第1巻・2巻』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は80点です。
人気の作品だけあります。
読み始めて直ぐに作品世界に引き込まれていきました。
村上水軍を描いた本を読む機会は殆ど無かったので、とても新鮮でした。
『村上海賊の娘』をおススメする人
- 歴史が好きな人
- 歴史の中でも特に戦国時代が好きな人
- 毛利や村上水軍、本願寺や雑賀などに触れる機会が少なかった人
歴史好きな人は、一度は読んだ方が良いと思います。
『村上海賊の娘』をおススメしない人
- 歴史物が嫌いな人
- 残虐な表現(殺し方など)に耐性が無い人
まあ、歴史が嫌いな人は手にしないかな。
『村上海賊の娘 第1巻・2巻』を読んで感じた3点
第1・2巻を読んで特に心に残った点を3つ取り上げます。
著者の特徴と言えるのかも知れません。
関東圏で生まれた私にはギャク漫画にしか思えない
こんなこと書いたらきっと関西圏の方には怒られると思いますが、関東で生まれ育った私にとっては、西国の言葉は全てギャグという枠組みになります。
そして、関西弁と一括りにする時点で怒られるかも知れませんが、この小説の2人の主役のうちの片方・泉州侍たち(もう片方は景姫)の会話や態度、そして行動は喜劇でしかない。
大阪等に出張で行った際にテレビで観る新喜劇を彷彿とさせるやりとりです。
そのため、戦闘シーンにグロさを感じません。
腕がもげ、首が飛び、血飛沫が舞うシーンにも笑いがあります。
それが歴史小説として良いか悪いかは、読む人次第だと思います。
もしかしたら、戦闘シーンに笑いがある事を受け入れがたい人もいるのかも知れませんが、遠い過去の話なのに、とても身近な話に感じられる点では私はこのような描き方もありだと思いました。
戦闘の描写が巧みなので臨場感がある
和田さんの「のぼうの城」でも思いましたが、戦闘の描写がとても巧みです。
文章なのに、読んでいて映像が浮かんでくる感じがします。
戦略の説明も的確なので戦場全体の俯瞰図が頭にイメージしやすいですし、細部の描写も見事なので戦術・格闘シーンが映像的に脳裏に浮かびます。
漫画を読んでいるような印象と言っても良いかもしれません。
異常に強い武将を登場させるのが好きらしい
泉州侍の真鍋七五三兵衛(実名:真鍋貞友)の銛は規格外です。
規格外と言うより・・・反則的な強さです。
著者の和田さんは、彼のごとく常人離れした強さを誇る武人を描くのが特徴なのかも知れません。のぼうの城でも「漆黒の魔人」と称された正木丹波守は異様に強かった記憶があります。
小説の中において、武人の戦い方や生き様、そして死に様(正木は死ななかったけど)を読者に強烈に記憶を残すために、異常な強さを与えているのかも知れません。
それにしてもだ・・・。
真鍋七五三兵衛の銛は強すぎだろ・・・。
あんな人間いるのかよ・・・。
村上海賊の娘 第3巻と4巻の感想はこちらから
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