信長(作:工藤かずや、画:池上遼一)を読んだ!
テルマエ・ロマエ、ヒストリエと西洋史の漫画を立て続けに読んでいたら、なんだか日本史の漫画を読みたくなりました。
そこで、本棚を漁って引っ張り出したのがこの「信長」です。
第1巻は30年前に発行された古い漫画です。
掲載当初は人気漫画でしたが、著作権侵害問題もあり、完結するまで途中で10年以上の中断がありました。
私自身、読み返すのは10年ぶりだと思います。
漫画「信長」の感想をまとめます。
漫画『信長』の掲載期間や掲載誌について
掲載期間は1986年10月号~1990年2月
掲載誌はビッグコミック
全8巻
漫画『信長』のあらすじ
あらすじとっても、信長の事跡を描いた漫画です。
歴史的に言えば、1560年の桶狭間から1582年の本能寺の変までが8巻に渡って描かれています。
簡単に、各巻毎の取り扱いに触れておきます。
尚、各章の文言は勝手に私が付けました。
1巻 信長という男
- 1560年の桶狭間の戦いの勝利
- 美濃における斉藤家の親子の争い
- 信長政権で重要なキーパーソンとなる秀吉が登場
- 信長の足利将軍家の扱い方(この時点では13代将軍・義輝の時代)
- 信長がこれからの時代は鉄砲が重要だと考える逸話(堺の豪商)
総じて、信長の飛躍を感じさせる巻です。
2巻 信長飛躍
- 1562年、家康(松平元康)との同盟(信長の死亡まで終生守られた稀有な同盟)で東側からの脅威を取り除いたことが描かれています。
- 信長の妹・お市さまの浅井家への輿入れ
- 1567年、秀吉による墨俣築城と織田家悲願であった美濃制覇
- 1568年前後、15代将軍・足利義昭を援助し中央に名を売る信長と、明智光秀との出会いが描かれています。
尾張のうつけが飛躍する様が画がかれた巻です。
3巻 信長包囲網
- 1570年、越前・朝倉攻めと、浅井家の裏切りによる危機が描かれています。
- 1571年朝倉・浅井に味方した延暦寺(比叡山攻め)が描かれています。
信長の事跡でも「悪」とされる比叡山攻めに巻の半分を割いています。
4巻 続・信長包囲網
- 1572年に始まった武田信玄の上洛によって起きた三方ヶ原の戦い(家康惨敗)と、信玄の急死により難を逃れる信長が描かれています。
- 1573年の足利義昭の挙兵と堪忍袋の緒がきれた信長による義昭の追放と室町幕府の滅亡が描かれています。
- 1573年、浅井朝倉連合軍との戦いと、朝倉氏を一乗谷へ追いつめ滅亡させる様が描かれています。
突如、歴史の表舞台に躍り出た信長を潰そうとする既得権益者達による包囲が描かれています。
5巻 巨大化しつつある信長陣営
- 1573年、秀吉によるお市様の救出劇と浅井家の滅亡について描かれています。
- 妙覚寺の変
(本能寺と並び京都での信長の在所となっていた妙覚寺に信長が居た際に危うく命を落とす事件があったことを描いています。後年の本能寺の変で信忠が滞在した時の話ではない) - 1574-5年頃、越前・加賀を掌握した一向宗との戦いについて
- 1575年、武田滅亡への始まりとなる勝頼の長篠城侵攻について
信長包囲網を食い破り、巨大化しつつある信長勢力について描かれています。
6巻 長篠の戦い
- 1575年5月、武田滅亡の決定打となる長篠の戦い
(巻の半分以上を割いています) - 信長の政策の目玉であった楽市楽座が取り上げられています。
- 1575年頃、上杉謙信と本願寺に挟まれて領土を拡大できない信長の苦悩が描かれています。
歴史好きなら誰でもしってる有名な戦が描かれています。
また、歴史の授業でも習う楽市楽座の描写はそのまま教科書で使ったらと思わせる出来です。
北の上杉謙信と一向宗、そして西の本願寺勢に挟まれた信長の、政権運営の舵取りの難しさが判ります。
7巻 激化する本願寺との戦い
- 1575年末、実権は握りつつも信忠に家督を譲り様子が描かれています。
- 1576年、本願寺を陸の戦いでは追い詰めますが、海上では毛利水軍等に惨敗します。(天王寺合戦、第一次木津川口海戦)
- 1578年、信長は中国方面へ侵攻を開始しますが、荒木村重の謀反等で挫折を繰り返す様が描かれています。
(諸説ありますが、この漫画では荒木村重自身の謀反ではなく、妻子と一族・重臣の裏切りであったという立場で描かれています) - 信長の政策の苛烈さ(特に軍事面)を受け入れ難くなってきた光秀の苦悩が描かれています。
本願寺との戦いが無ければ、信長はどこまで勢力をのばしたのだろう?と思わせる本願寺方の執拗な抵抗。
光秀の謀反を暗示させる描写もあります。
8巻 本能寺の変
- 1576年、完成した安土城の絢爛豪華さが描かれています。
- 1580年4月、本願寺の大阪からの退去の様子
- 1582年、名門・武田の滅亡について描かれています。
(最後まで忠義を貫く武将として真田昌幸が登場します) - そして・・・本能寺の変へ向けて事態が動き出します。
安土城が現存していて欲しかったと思わせます。
私の真田好きの原点はこの漫画だったかも知れません。
武田戦で活躍した家康を京へ招いた信長は光秀を接待役に指名しつつ、途中で、領地召し上げの上で毛利攻めに加わるように命令します。
信長の意図を計りかねる光秀は、一族の生きる道を求めてついに立ち上がります。
漫画『信長』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は80点です!
信長の事跡を理解するには最適の一冊だと思います。
もちろん、これが全てではないし、全て正しいわけではないと思います。
ですが、あまり余計な描写や解釈が入っていないので、初心者も、ある程度歴史に精通した人間にも楽しめる漫画だと思います。
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漫画『信長』をおススメする人は?
- 歴史好きの人
- 戦国時代好きの人
- 信長が大好きな人
- 池上さんの絵がとにかく好きな人
漫画『信長』をおススメしない人は?
- 歴史漫画が嫌いな人
- 残酷なシーンが苦手な人
漫画『信長』の著作権侵害問題について
この漫画を取り上げるには、この事件について触れる必要があると思いますので簡単にまとめておきます。
この事件の概要は、画を担当していた池上氏が安土城を描写する際に、無断で他の出版物に掲示されている写真を元に描いたことが原因です。
問題が発覚した1990年、私はまだ学生でした。
当時、インターネットなどありません。
順調に発売されていた「信長」が、なぜ突然発売停止になったのか、さっぱり判りませんでした。
困った私は近所の小さな書店(昔は小さな地元密着の書店があった)のおじさんに尋ねて、事の真相を知りました。
残念だけど、続きは読めないと思っていたのですが・・・
なんと事件から10年以上過ぎた2003年、問題となった画を書き直して発売されたのです。
単行本として世に出すことに尽力された方々に、そして無断使用されたにも関わらず、作品を世に出すことを了承してくれた方々に、感謝します。
漫画『信長』の私の感想
初めてこの漫画に触れたのは学生の頃は、歴史漫画などは多くなく、戦国時代好きの自分にとっては画期的な漫画でした。
また、ゲーム「信長の野望」などを好んでプレーしていた私にとっては、何度も何度もこの漫画を読んでゲームの世界の色付けに利用していました。
言ってみれば、幸せな子供時代を思い出す漫画です。
でも、決して子供相手の内容ではありません。
信長の飛躍から本能寺での死までを、丁寧に、そしてしっかりと描ききった素晴らしい歴史漫画だと思います。
歴史好きの人はもちろん、そうでない人も、一度は読んで見て欲しい歴史漫画です!
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