lands_end’s blog

未破裂脳動脈瘤との闘いをコーギーに癒され暮らしています。鹿島アントラーズの応援と読書に人生の全てを掛けている40代の徒然日記です。

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『往復書簡』を読んだ!



往復書簡(著:湊かなえ)を読んだ!

前回は色々と考える本でしたので、今回は少し楽に読める本にしようと思いこの本を手にしました。

登場人物達の子供時代の記憶を、手紙と言う媒体を通して思い返す内容となっており、4つの話から構成されるミステリー小説です。

4つの話ですが、1~3話まではそれぞれ独立した話で完結しています。最後の話は3つめの話の後日譚的な扱いとなっています。

読み終えたましたので、感想をまとめてみます。

 

『往復書簡 第1話 十年後の卒業文集』のあらすじ

高校の同級生で同じ放送部に所属していた仲間達が、卒業から10年ぶりに部員であった浩一と静香の結婚式で再会したことから物語は始まります。

放送部に所属していた仲間は、悦子、あずみ、静香、千秋、浩一、良太、文哉の7人でしたが、結婚式にあつまったのは千秋を除く6人でした。

学生時代から仲間を引っ張るリーダー的な立場にあった悦子は、自身の結婚後は旦那の都合で長らく海外にいました。そのため、当時の仲間達とすっかり音信普通状態となっていました。
今回、久しぶりの帰郷で皆と会えるのを楽しみしていたのですが、静香の結婚式に出席していたのは千秋を除く6人だけでした。
千秋は新郎・浩一の元彼女であるため、気まずいので不参加・・・という理由であれば、悦子も違和感を感じることはありませんでした。
ですが、悦子の耳には1つの噂が入っていました。

数年前、静香と千秋とあずみの3人で山登りをした際に、下りで千秋が転倒して顔に酷い傷を負った。その所為で精神が不安定となり、自殺をした・・・。

事の真相を知るべく、悦子はあずみに手紙を書きます。

  • 事故はどうして起きたのか?
  • 千秋はどうなったのか?

唐突な悦子からの手紙にあずみは「本当に悦子なのか?」と疑いますが、悦子とあずみしか知りえないことが手紙に書かれていたので、あずみが知る限りのことを伝えます。

  • 千秋と浩一が別れた経緯。
  • 千秋が今何処で何をしているのか知らない。
  • 事故に疑問に感じている人もいる。

次に悦子は静香にも手紙を送ります。

追求する手紙にならないように気をつけたのですが、静香には悦子がその手紙で何を言いたいのかがバレテしまうのでした。

何度か手紙をやり取りするうちに、静香は告白を始めます。

  • 千秋と浩一が別れた理由
  • 千秋が下りで転倒した理由

それは「手紙の差出人」を驚かせる内容でした。
最後に「手紙の差出人」は7人のうちの1人に手紙を書きます。

真相は本書を読んでお楽しみください。

 

『往復書簡 第2話二十年後の宿題』のあらすじ

定年で教職を退職した竹沢真智子が、かつての教え子であり今は高校教師となった大場敦史「とある依頼」をしたことから物語は始まります。

依頼とは、竹沢の40年弱の教師生活において、どうしてもその後が気になる6人がいるので、大場君が彼らに会って現在の状況を教えて欲しい、という内容でした。

恩師の依頼を受けた大場は、6人の教え子に会う旅を始めます。

1人目:河合真穂
最初に面会をした彼女は、今では結婚して幸せな生活を送っていました。
懐かしい話をする中で、彼女が「あの事故」という言葉を口にしたことによって、竹沢先生がなぜ6人に会って来てほしいと言い出したのか知ることになります。

その事件とは・・・
竹沢先生が大場の居た小学校へ赴任する前の学校で「その事故」は起きました。
授業で使う落ち葉を拾うため、先生は旦那と6人の児童を誘って出掛けます。
昼食を終え、旦那と子供達で川へ遊びに行った時に事件は起きます。
川へ落ちた子供助けようとした旦那さんは溺れてしまい、幸い子供は助かりますが、旦那さんは不帰の人となってしまったのでした。

河合さんは、先生から救急車を呼ぶように頼まれたため、直接現場を見ていません。
そのため、旦那さんを亡くしてまで子供を助けた先生に同情的。

2人目:津田武之
東京の証券会社勤務。
彼が現場に着いたときは、先生が必死に旦那さんに人工呼吸をしていた時でした。
彼は先生がこの日に選んだ6人が貧乏な家庭の子供だったことに気付いていました。
最初は素直になれなかったけど、旦那さんのお弁当が旨かった事を強烈に覚えており、その旦那の死を目の前で見たことで、人の好意を素直に受けられるようになって今の自分があると感謝していた。

3人目:根元沙織
現在は結婚して2児の母である。
先生と共に現場に駆けつけ、事件の一部始終を見ていた。
川に駆けつけた先生は、しがみつく子供を放り出し、旦那を先に助け出したのであった。
その所為で、大人への不信感を抱いたまま成長したが・・・
2児の母となった今なら判る。
自分でも他人の子より、愛しい自分の子供の父親を助けるだろう・・・と。

4人目:吉岡辰弥
土木会社に勤務している。
先生が自分を連れ出したのは、クラスメートの女の子との喧嘩が原因だと気付いていた。
あの時、自分がクラスメート喧嘩しなければ、先生は自分を連れて行くことはなかったはずであり、自分があの場に居て、無理に川の中の飛び石で遊ぼうと提案したから、クラスメートは溺れたわけであり、溺れた子がいたから、先生の旦那は川に飛び込んで亡くなってしまったのである。
彼は今も全てが自分の責任だと思い込んでいます。
事件後も喧嘩したクラスメートの女の子とは頻繁に会っていて、彼女に好意を抱いていました。ですが、2人が一緒になっても前向きな未来はないと思い込み、別れを告げていました。

5人目:生田良隆
川で溺れた男の子である。
大場は彼には直接会うことは拒否され、メールを一通受け取ります。
先生の旦那さんが死んだのは自分の所為だと悩み、さらに親や周囲の人から「先生の旦那さんのぶんまでがんばらなきゃね」と言われることが苦になり、何度も自傷行為を繰り返していた。
ある日、あの事件の日に先生の旦那さんと話した鳥の声が聞こえてふと空を見上げると、マンションから今にも取り降りそうな女性を見つけます。慌てて交番に駆け込み助けを求め、なんとか女性は無事保護されるのでした。

そして彼は思います。
「一人分の命を助けたことになる。これで、旦那のことは終わったことにしてもいいだろうか。」
そして、メールの最後をこう締めくくります。
ようやく重荷を下ろし、今の彼の生活を楽しんでいて幸せなのでほっておいて欲しい。

6人目:旧姓、藤井利恵(現在、山野梨恵)
吉岡と喧嘩したクラスメートである。
彼女もまた、吉岡と同じく先生の旦那さんが死んだのは自分の所為だと思いつめて生きてきました。
しかも当時、先生のお腹には子供がいた事も母親から聞かされていました。
小学校卒業後、両親の離婚を切っ掛けに名前を変えた彼女は、現在は看護師として働いており、さらに大場自身の婚約者でもありました。

なぜ婚約者が6人目なのかと驚く大場は、竹沢先生の意図が判らなくなり混乱します。
そして、唐突にプロポーズして返事がもらえないと吉岡を卑下する言動を取り、婚約者と別れてしまうことになるのでした。

物語の結末は本書を読んでお楽しみください。

 

『往復書簡 第3話十五年後の補習』のあらすじ

30を目前にして海外協力青年隊に応募し、僻地への赴任が決まった純一、中学以来の恋人である万里子に2年待って欲しいと告げるのであった。
話を聞いた彼女は、純一が自分と別れたいから海外へ行くのではないかと誤解してしまいます。
彼女がこのような考えに至るのには実は訳がありました。
それは、彼ら2人が中学時代に体験した「ある事件」が原因でした。

彼らには幼馴染が2人いました。
1人は外交的な一樹、もう1人は内向的な康孝
小さい頃は仲が良かった彼らですが、成長するにつれ性格の違いもあり段々と疎遠になっていた。
しかしある日、一樹が康孝を殴るという事件が起きて、彼らの関係が大きく狂い始めます。必死に万里子は喧嘩を止めようとするが、康孝が一樹を挑発したことを知っていた純一は止めようとはしませんでした。
それ以来、一樹は康孝に会うたびに暴力を振るい、万里子が止めに入ると日々が続いていました。
やがて、一樹と万里子に康孝から手紙が届きます。
仲直りをしたいので資材置き場に来て欲しいと・・・。
資材置き場に行った一樹と万里子は康孝に閉じ込められて、火をつけられます。
たまたま手紙の事を知っていた純一が様子を見に来たので、万里子は助け出されますが一樹は焼け死んでしまいます。
そして、同級生を殺してしまった康孝は学校の屋上から身を投げてしまいます。

事件の衝撃が大きすぎた万里子は記憶を失ってしまい、この話は、あとで周囲の人達から聞いた話でした。そして、万里子をここまで支えてきたのが純一でした。

純一の赴任先に会いに行くことを考えた万里子は、英会話クラブに所属します。そこで出会った男性は万里子に好意を抱き、彼女を半ば強引に誘うのですが、彼の身体から匂うタバコの香りが万里子の記憶を呼び覚ますのでした。

記憶を取り戻した万里子は純一に手紙を書きます。
資材置き場に一樹と共に閉じ込められた万里子は、一樹に襲われて転倒し記憶を失います。その後、記憶を取り戻した時に目にしたのは、血のついた角材を手にした黒い人影でした。
そして、手紙でこう問いかけます。
あの人影はだれ?
私の想像が間違っていると言って!

純一から届いた手紙には・・・

このあとの二転三転は本書を読んでお楽しみください。

 

『往復書簡 第4話『一年後の連絡網』のあらすじ

これは第3話『十五年後の補習』の後日譚としての位置づけになります。
発展途上国に派遣された青年達が交わす手紙の中に、純一や万里子のその後、または藤井利恵のその後を彷彿とさせる内容が書かれています。

 

『往復書簡』のおススメ度はいくつ?

おススメ度は80点です!

第1話だけだと70点。
第2話が85点。
第3話は4話があったので85点。

気持ちよく「えーっ、マジですか!?」と思わぬ展開を楽しめました。

往復書簡 (幻冬舎文庫)

往復書簡 (幻冬舎文庫)

 

 

『往復書簡』をおススメする人

おススメするポイントは次の3点です。

  • ミステリーが好きな方
  • 登場人物達と同年代の30代の人
  • 手紙世代の人

年齢の制限はそれ以下やそれ以上では楽しめないと言うわけではありません。
それから、手紙世代ではない人と、手紙世代の人とでは、読後の感じ方が違うと思うだけで、楽しめないと言う訳ではありません。

 

『往復書簡』をおススメしない人

おススメしない人は次の1点です。

  • ミステリーの設定に無理を感じると絶対に許せない人

具体的には次の読後感でまとめます。

 

『往復書簡』読後の感想

3話共に面白いですし、流石だなぁ、湊さん!
そう思いましたが、ちょっとだけ気になった点がありましたので、触れておこうと思います。

ただ、思いっきりネタバレになるので、未読の方は読まない方が良いかもしれません!

 

『十年後の卒業文集』の設定で波紋

十年後の卒業文集は悦子が結婚式に参加して、悦子が手紙を書いている訳ですが、実はこれが悦子ではなかった!というオチです。

確かに、怪我をして整形手術をしたという件はありますが・・・
高校時代の友人に誰も気付かないって・・・あるか?
とネット上でもだいぶ話題になっているようです。

私自身も最初は疑問には思いました。ですが、先日読んだ百田さんの「モンスター」では完璧な別人になる整形手術を施す話もありましたので、まあ、アリかなと結論付けました。

 

『二十年後の宿題』で最後に竹沢先生を訪れるのは誰?

竹沢先生から気になる6人に会ってくれと依頼を受けた大場さん。
最後の一人が現在の自分の婚約者であったため、ギクシャクして別れてしまいます。

しかし、物語の最後は男性から竹沢先生への手紙で終わります。
その手紙の中に、彼女とお見舞いに行くと書かれているのです・・・。

誰だよ~!!
こういう終わらせ方は止めてよ~!!
気になって仕方ありません!!!

ちなみにこの『二十年後の宿題』は2012年に製作された『北のカナリアたち』の原案だそうです。
私は観た事がないのですが、映像になるとどうなるのか気になります。

 


私は手紙世代なので、読み終えた後、なんだか手紙を書きたくなりました。
PCやスマホなどで打つのとは違う、手で書くという行為を、したくなりました。

親にでも手紙を書いてみようかなぁ。

 

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