lands_end’s blog

未破裂脳動脈瘤との闘いをコーギーに癒され暮らしています。鹿島アントラーズの応援と読書に人生の全てを掛けている40代の徒然日記です。

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『ぬるい眠り』を読んだ!



ぬるい眠り (著: 江國香織)を読んだ!

読み応えのある歴史小説(天下騒乱 鍵屋ノ辻)の後は、柔らかい、ふんわりした書物を読みたいと思って自宅の本棚をゴソゴソと漁ってこの本を見つけました。

発売日を調べたら2017年!
ちょうど10年前の本でした。
すっかり内容を忘れているので、良い機会だと思い再読することにしました。

『ぬるい眠り』の感想をまとめます。

 

『ぬるい眠り』全9章のあらすじと感想

この本は長編小説ではなく、9つの短編からなる本です。
1つずつ、簡単に内容を紹介します。
同時に、感想もまとめます。

ちなみに、私はどうやらあらすじを書きすぎる悪癖があるため、短編の場合、あらすじと言いつつ実はほぼ全文書いていることがあるそうです。
なので、一応気をつけて書くつもりですが、ネタバレがあるかも知れませんのでお気を付けください。

 

「ラブ・ミー・テンダー」

70を過ぎた両親がついに「本当に」離婚すると言い出したことで物語が始まります。

母親が慰謝料は要らないとか、1人で暮らすのではなく憧れのエルちゃん(エルビス・プレスリー)と生活するとか、果ては毎晩エルちゃんが電話をしてくると言い出したので、心配になった娘は実家へ駆けつけます。
色々と追及する娘に対し母親はのらりくらりと対応します。

毎日「エルちゃん」が電話を掛けて来ると言うので、その真偽を確かめるために、両親と一緒に娘は夜半まで待ちますが、この日に限って電話は来ませんでした。
とりあえず出直すことにして、旦那の待つ自宅へ帰るべく車を運転していた娘の目に入った光景は・・・

結末は本書でお楽しみください。

 

「ラブ・ミー・テンダー」の感想

この話を1話目に配置した手腕が凄い。
他の話も読みたいと思わせる1番バッターの役割を果たしています。
多分、江國香織の本は苦手だと言う人も、スッと読めると思います。

気に入ったシーンは母と娘の会話です。

エルちゃんが電話をしてくると聞いた娘が母に突っ込みます。

「日本で話すの?」
・・・
「覚えたんだろ、私のために・・・」

このやり取りは和みました。

 

「ぬるい眠り」

夏、自称・芸術家の耕介さんと出会い瞬く間に恋に落ちた雛子は、妻と別居中だった彼の家で同棲を始めます。
しかし、実家に戻っていた妻が戻って来ることになり、雛子は彼と別れて家を出ることになるのでした。

傷ついていない
引き摺っていない
そう思っていた雛子でしたが、日に日に彼女の心の中で耕介さんの存在が大きくなっていき、ストーカー紛いの無言電話をするほどに追い込まれていきます。

忘れるために、高校生のトオルくんと付き合う雛子でしたが、彼女の心から耕介は消え去ることはありませんでした。
その苦しみから逃れるため、雛子は耕介に「きちんと」電話をすることにします。

秋、きっぱりと別れた雛子は新たな道を歩み始るのでした。

 

「ぬるい眠り」の感想

ザ・江國 香織でした。

この話が1話目に配置されていたら、多くの人が読むのを止めた様に思います。
1話目のエルちゃんの話があるからこそ、この話も活きると思います。

この人の書くこの手の話って・・・
好き嫌いが本当に別れると思います。
読み手のその時の状況によっても左右されそうな気がします。
女性の中には生理的に受け付けないと言う人もいると聞きましたが本当でしょうか?

しかし・・・
高校生の男の子とって、一歩間違えると危険書物扱いになりそうな気がします。

 

「放物線」

ある日の午後、大学時代の友人3人が中華料理屋で旧交を温める話。

主人公は小説家(ほぼ自称)の道子、残りの2人は自称お堅い仕事の保険会社勤務のかんちゃんと、最近ペットショップで働き始めた光一朗です。
大学卒業から5年、定期的に会い、近況を報告し、食べて、飲む。
友人との他愛ない時間を過ごす話です。

 

「放物線」の感想

少しずつ、少しずつ、昔のままで居られなくなることを頭では判っているけど、昔のままの3人で居れる時間を大切にしたいと思うこころ。

多分、誰にでも思い当たる時間の過ごし方。
この短編を読んでら、きっと、誰かに連絡を取りたくなるはず。

 

「災難の顛末」

ある朝、今日子が目を覚ますと足が倍以上に膨れ上がっていました。
その足には小さな赤い斑点が無数に浮き出ていました。
麻疹や風疹を疑い内科に行っても断定できず、皮膚科へ行くと原因が判明します。

原因は愛猫:ウィスキーでした。

ウィスキーが持ってきた「ある物」が彼女の足に影響を及ぼしたのです。
そしてその「ある物」は、彼女の人生には影響を及ぼすのでした。
答えは本書で!

 

「災難の顛末」の感想

ダメだ!
全く、理解出来ないっす。

これは男には理解不能ではないだろうか?
お前は女心が判らな過ぎと言われるかも知れないが、判らんものは判らんのだ!

 

「とろとろ」

女性雑誌の編集者である美代が主人公。
彼女は小学校の教師である信二と暮らしています。

美代は信二に対して何の不満もありません。
美代にとって信二はパーフェクトなのです。
なぜなら信二といると彼女は「とろとろ」になるから。

そんな美代は、信二といると感じる「とろとろ」をより強くすべく、信二以外の複数の男と付き合うのでした。
職場の同僚や写真家、果てはナンパしてきた学生まで・・・。

 

「とろとろ」の感想

この話は一体なんだ?
先の「災難の顛末」よりも理解できません?
この女何なんだ???

たぶん男も悪いと言うことを書きたいのであろう。
美代と付き合う男の大半はこう思っているはずです。
「都合の良い女」と。

男と女の嫌な面をあからさまに見せる話だと思います。

 

「夜と妻と洗剤」

夜、突然離縁を申し出た妻のために、夫はコンビニへ走り洗剤を買ってくるのでした。

 

「夜と妻と洗剤」の感想

最高です!
「災難の顛末」「とろとろ」とグチョグチョな人間模様を見せ付けられただけに、この短編は最高でした。

見習おう。
嫁さんとまともに喧嘩してはダメだな。

 

「清水夫妻」

拾った猫・きいろの扱いに困り、蕎麦屋で彼氏に相談していたある女性が主人公です。
蕎麦屋に居合わせた「清水夫妻」が、きいろを引き取ることを申し出てくれ、女性は清水夫妻の豪邸を訪れます。
そこで彼女は、「清水夫妻」の変わった趣味を知ります。
彼らは朝起きてまず最初に「新聞の訃報欄」をチェックします。そして、これはと思った人の葬式に出掛けていきます。全く面識がなくても構わず参列します。

やがて、女性も誘われて葬式に参加するようになり、その経験を重ねるうちに、なぜ自分が彼氏からの求婚に答えを出せないのか理由を知ることになるのでした。

 

「清水夫妻」の感想

初めに読んで思ったのは「いいなぁ遺産生活者」
人生を楽しく暮らせるのだろうなぁ・・・。

次に思ったのは、「作者の江國さん実際に行っているのではないか?」
なんとなく、なんとなくですが、そんな気がしました。

最後に思ったのは、「やっぱり生きていたい」
本文中に清水夫妻のこんな台詞があります。

「~すべてがそこで開放されるわけです。そこまで。あとはなんにもなし。解放」

死が全ての悩みや苦しみから救い出してくれる。
そう考えると、死は喜ばしい事のように思えます。

でも・・・
大病して、死を間近に感じた身としてはこう思いました。
「まだ、解放しないで!」
「まだ、生きていたい!」
「なぜなら、悩みや苦しみ、喜びや悲しみ、それらをこの身で感じたいから!」

 

「ケイトウの赤、やなぎの緑」

ガソリンスタンドを家族で経営している憲悟と結婚して暮らしていたちなみが本編の主人公である。
憲悟には何も不満もなかったのに、ある日ちなみは出会ってしまいます。

ゲイである弟に連れて行かれた日本家屋で開かれる怪しげなサロンでに会ったちなつは、憲悟と別れて朗と再婚します。

朗と出会ったサロンは「普通の人」が集まる会ではなく、ゲイや芸術家くずれなど一癖も二蓋もある連中の集まりであった。
ごくごく普通のOLをしてきたちなみにとって、彼らは受け入れがたく、出来れば深く関わりたいと思う連中ではなかった。

しかし彼女は、大切な弟がその会でしかヴァイオリンを弾かないため、その音色を聞きたくて夫の朗と共にその日本家屋を訪れているのでした。

 

「ケイトウの赤、やなぎの緑」の感想

実はこの話が一番読みたかった話です。

この話は、自分が江國さんの作品に嵌るきっかけとなった「きらきらひかる」の続編なのです。

www.road-to-landsend.net


この話は「きらきらひかる」の数年後が舞台ですが、きらきらひかるの主人公である笑子と旦那の睦月、そして睦月の恋人であったくん、彼ら3人にも等しく時が流れていることを知り、嬉しくなりました。

時は等しく誰にでも襲い掛かる。
いつまでも同じままではいられない。

そう教えられた気がします。

「ケイトウの赤、やなぎの緑」だけ読んでも楽しめます。
ですが、この「ケイトウの赤、やなぎの緑」を本当の意味で楽しむには、「きらきらひかる」を読んでからの方が良いと思います。

「ケイトウの赤、やなぎの緑」で一番心に残ったのはちなみの台詞です。

私の人生は私のものだ

うん、確かに。
しかし難しい台詞をさらっと吐きやがるなぁ・・・。

 

「奇妙な場所」

邦枝69、和子52、美々子50、親子三人の話です。

既に主人(娘にとっては父親)は無く、女3人がそれぞれ独立して生活しています。
彼女達は年の瀬に必ず集まります。
馴染みのフランス料理屋で食事をし、スーパーで年越し用に大量に買い物をします。
女3人、ただひたすらに全力で食べて飲んで、そして騒々しく買い物をして、またそれぞれの家路につきます。

来年もまた必ず集まることを心で願いながら。

 

「奇妙な場所」感想

とても良い話だと思います。
ただ、自分にはいまいちヒットしませんでした。

男だからか?
年齢が足りないのか?
環境の所為なのか?
よく判りません。

でもたぶん、多くの女性(ちょっと年配の)はニコリとするような気がします。

 

『ぬるい眠り』のおススメ度はいくつ?

おススメ度は75点です!

評価の分かれる作品があり、全体の点数は伸びませんでした。

それでも、やっぱり江國さんの作品は私の読書肌には合うようです。
中には理解不能な部分もあるけど・・・。
ホッコリしたい時にいつも彼女の本を読んでいる気がします。

ぬるい眠り (新潮文庫)

ぬるい眠り (新潮文庫)

 

 

『ぬるい眠り』をおススメする人

  • 江國さんの作品が好きな人
  • きらきらひかるを読んだことのある人
  • 小難しい話を読みたくない人
  • フワッとした話を読みたい人

 

『ぬるい眠り』をおススメしない人

  • 江國さんの作品が苦手な人
    ※けっこうザ・江國な作品が含まれているので・・・。
  • ・理不尽に感じる人間関係が嫌いな人
    ※我侭、かつ理解不能な言動を取る登場人物が多いです。

 

まとめ

10年ぶりに読んだ『ぬるい眠り』
予想通り、ほぼ完璧に内容を忘れていましたので楽しめました。

また10年後、いや20年後の還暦を迎えるころにまた読んでみたい。
その頃、どんな人生を送っているのだろう。
ちなみのように、「私の人生は私のものだ!」と胸を張って言える人生を送っていたいと思います。

 

 

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