風よ、万里を翔けよ(著:田中芳樹)を読んだ!
小説家の書く歴史小説にどっぷりと浸かるきっかけになったのは、田中氏のこの作品を読んでからだと思います。
史実に即して・・・
とまではいきませんが、歴史上の人物や出来事を上手く料理して、万人に受けるような形にしていると思います。
初めて買ったのは1990年代でしたが・・・
新装版が出ているのを知って、再読することにしました。
読後の感想をまとめてみます。
- 『風よ、万里を翔けよ』のあらすじ
- 『風よ、万里を翔けよ』のおススメ度はいくつ?
- 『風よ、万里を翔けよ』をおススメしたい人
- 『風よ、万里を翔けよ』をおススメしない人
- 『風よ、万里を翔けよ』の私の感想
- その他の田中作品の読書感想文
『風よ、万里を翔けよ』のあらすじ
300年ぶりに中国を統一した王朝・隋の時代が舞台となります。
第2代皇帝の煬帝によって企図された高句麗遠征軍を編成するために、隋は全土から徴兵を行いました。
花家にも役所から徴兵の命が届き、かつて従軍した際に戦傷を負い、歩くのに支障を抱えていた父親ですが、妻と娘を家に残して従軍することになりました。
父親は、不自由な足ゆえ、今回従軍すれば生きて故郷に戻ることは難しいだろうと覚悟し、妻と別れを交わしていると、両親の前に武装した1人の麗人が現れます。
よく見ると、その武人は彼らの一人娘である『木蘭』でした。
彼女は、年老いて身体が自由にならぬ父親の変わりに、自分が従軍することを決意し、両親を説得しに来たのでした。
始めは反対した両親も、彼女の決意が固いことを知り、心配しつつ大切な一人娘を遠征軍へ送り出すのでした。
高句麗遠征軍の集合地である中国東北部へ移動する最中、木蘭は1人の男・賀廷玉と出会います。彼もまた高句麗遠征軍の徴兵によって集められた兵士であり、集合地へ移動する途中でした。
道中を彼と過ごした木蘭は、信に足る人物だと感じていたため、遠征軍集合地へ到着後の部隊編成で、賀と部隊が一緒になると安心感を覚えるのであった。
賀の方も、木蘭のことを弟のように気にかけ、何かと世話を焼くようになっていき、共に戦場で命を預けて闘う中で、かれらの絆は『男同士の朋友』として深まっていきました。
100万の大軍を揃えた隋の高句麗遠征軍でしたが、補給のミスなどから失敗に終わり、多数の骸を異国の地に残して引き上げることになりました。
花木蘭と賀廷玉も何度も危ない目に遭いながら、辛くも無事帰国を果たします。
彼らにとってこの遠征で得たものは、隋の老将軍・薛世雄との出会いでした。
帰国後、彼ら両名の才幹を認めた将軍の口添えによって、2人は沈光の部隊に配属されることになります。
都の警備をしながら日々を過ごしていた彼らは、翌年、再び起された高句麗遠征軍に従軍します。
2回に渡る無謀な遠征は、隋の国力を疲弊させ、民衆の不満が募り、賊が横行し、やがて各地に反乱軍が起こり国土を脅かすようになります。
そのため、皇帝は自分では手を下さず、数名の臣下に国土の安定を命じるのでした。
その内の1人・張須陀はそれまで無名と言って良い人物でしたが、ふとした事で煬帝によって見出され、河南討捕大使に任命されるのでした。
都に居た花木蘭と賀廷玉は、張須陀に元において副将を務めるように命を受けます。
河南討捕軍は、少数ながら隋きっての精鋭部隊へと成長し、大小200戦以上の戦いに勝利し、反乱軍を退けていました。
しかしながら、皇帝の度を超えた豪奢な生活と、為政者としての責務を放棄した行動には、反乱軍の芽を生み続ける元となり、栄華を誇った隋帝国は斜陽の一途を辿ることになります。
- 帝国の屋台骨を必死に支える河南討捕軍の行く末は?
- 花木蘭と賀廷玉の両名は、隋の滅亡に殉じてしまうのか?
- 朋友・賀廷玉に、女の身である事を明かす日はくるのか?
隋帝国最後の日々と、花木蘭と賀廷玉の行く末については、本書を読んで確かめてください。
『風よ、万里を翔けよ』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は80点です!
本当は100点を付けたいくらい好きなのですが、
冷静に採点して80点としました。
100点にはしない理由を、おススメ情報で簡単に説明してみます。
『風よ、万里を翔けよ』をおススメしたい人
- 歴史が好きな人
- 硬い文章を読むのが苦にならない人
上記の人は、是非読んで欲しいと思います。
特に、中国の歴史は三国志とか水滸伝くらいしか手を出したことがない・・・、
と言う人には是非読んでもらいたいと思います。
この本は、中国歴史小説の読み始めには、最適な1冊だと思います。
また、田中作品のファンにも読んで欲しいと思うのですが、
残念ならが、ファンなら誰でも気に入る作品ではないと思います。
私の勝手な判定ですが・・・、
- 銀河英雄伝説が好きな人→たぶん気に入ります。
- アルスラーン戦記が好きな人→たぶん大丈夫でしょう。
- 創竜伝が好きな人→歴史が嫌いだったら手を出さない方がいいです。
また、田中作品の特徴とも言える、
登場人物のコメディチックな軽快なやり取りが好きな人は、
それを期待して読み始めると挫折するかもしれません。
『風よ、万里を翔けよ』をおススメしない人
- 歴史に全く興味の無い人
- 漢字が多い文章を読みたくない人
上記に該当する人は、避けた方がいいかなぁ・・・と思います。
『風よ、万里を翔けよ』の私の感想
始めてこの本を手にしたのは、大学生の頃でした。
高校時代、私は田中作品の至宝・銀河英雄伝説にどっぷりと浸かっていました。
それを知った歴史の先生が、この本を貸してくれたのです。
最初は銀英伝と違う、硬い文語体のような文章に途惑いましたが、
幸い、歴史が好きだったこともあり、私はこの本に嵌ることが出来ました。
歴史の教科書では、
『300年ぶりに中国を統一した隋帝国であったが、第2代皇帝煬帝の暴政によって僅か38年で滅びてしまいます』
としか書かれていません。
こんな無機質な文章だけでは、歴史の面白みもあったものではありません。
ですが、この『風よ、万里を翔けよ』を読むことによって、隋や煬帝の見方がガラッと変わったのです。
私が歴史小説を好んで読む理由は、単に歴史が好きという事もあります。
ですが、
『教科書や年表では知りえない人々の生き様を見ること・知ることが出来る!』
というのが、一番の理由です。
そういう歴史の見方、読み方の面白さを教えてくれたのが、この1冊でした。
中国歴史物小説にはまるきっかけになった一冊
花木蘭と賀廷玉は、伝承としてその名が残りますが、実在の人物ではありません。
それゆえか、この作品では花木蘭が主人公と言う位置づけですが、作中で派手な活躍はしていません。
むしろ、歴史上の人物である、薛世雄や張須陀、木蘭たちを引き立ててくれた沈光、さらには河南討捕軍で木蘭たちと一緒に副将をつとめた秦叔宝や羅士信に光が当てられ、彼らの事跡がしっかりと書かれています。
彼らの記述を読んでいると、さらに彼らの事が知りたくなって、学生の頃は中国史の小悦を貪る様に読みまくりました。
後にその経験が、中国人と仕事をする時にどれだけ潤滑剤の役割を果たしてくれたかと思うと・・・。
この『風よ、万里を翔けよ』との出会いには、ただただ、感謝しかありません。
その他の田中作品の読書感想文
かなり多くの本を読んでいるのですが、記事にしたのは今回の作品以外には2件しかありません。少しずつ増やして行きたい・・・。
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