lands_end’s blog

未破裂脳動脈瘤との闘いをコーギーに癒され暮らしています。鹿島アントラーズの応援と読書に人生の全てを掛けている40代の徒然日記です。

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『変身』を読んだ!



変身(著:東野圭吾)を読んだ!

このブログのテーマの1つに自分が受けた脳動脈瘤の闘病日記があります。
2016年春に開頭クリッピング手術を受け、無事に生還することが出来ました。
無事に生還しましたが、それでも様々な手術後遺症(軽度)が身体に残り、「頭を開けるというのは大変な事なのだ」と身を持って実感しました。

それだけに、今回の本のテーマ「脳移植」に強く興味を持ち、読みたいと思って手にしました。

『変身』の読書感想文をまとめます。

 

2分で読める『変身』のあらすじ

メーカーの工場に勤務する成瀬純一が主人公です。

ある日、たまたま入った不動産屋で強盗事件に巻き込まれます。
女の子を助けようとした純一は、犯人に拳銃で頭を撃たれてしまいます。

瀕死の重傷を負った純一を救ったのは、東和大学病院の堂元教授でした。
彼は助手の若生と橘直子と一緒に、「世界初の脳移植」を成功させたのでした。

橘直子の介護を受け、身体が回復した純一は無事に退院します。
家に帰り、恋人と会い、職場に戻り、少しずつ元の生活を取り戻そうとした成瀬純一でしたが、少しずつ自分自身に対して違和感を感じるようになります。

愛していたはずの恋人に心が躍らなくなる
趣味であった絵画にまったく興味が沸かなくなる
全ての人を小馬鹿にして攻撃的な性格となる
事件をきっかけに別の人格が入り込んだ感覚

純一はこの自分の変化は「脳移植」に原因があるに違いないと考え、「ドナー」を探すことにします。

そして、苦労の末に彼が探り出した「ドナー」はなんと・・・。

2分バージョンのあらすじではこれ以上細かく書きません。
詳細を知りたくない方は、下の10分バージョンは読まないでください。
詳細を知りたい方は10分バージョンを覗いてください。

 

10分は掛かる『変身』のあらすじ

メーカーの工場に勤務する成瀬純一が主人公です。

彼は人と争う事を好まず、文句を言うこともなく、自分の世界に閉じこもりがちな内向的な性格でした。
彼の唯一と言って良い趣味はデッサンでした。
画材を買いにいつも同じ店を訪れていた彼は、やがて1人の女性店員・葉山恵と言葉を交わす親しくなります。
最初は、単に客として親切にしてくれているだけだと考えていた純一でしたが、彼女が本当に自分と自分の絵に関心を抱いていることを知り、付き合い始めます。

純一は先立つものは無かったが部屋を変えたいと思い不動産巡りを行っていました。
その最中、彼は大事件に巻き込まれてしまいます。

銃を持った強盗が「不動産」に押し入り、金を要求したのです。
銃を振りかざす犯人に恐れをなして、客も店員も身動きが取れずに居ましたが、ただ1人、母親と一緒に来店していた女の子が窓から逃げ出そうとて見つかってしまいます。
犯人が女の子に銃を向けたのを見るや、純一は何も考えずに立ち上がり、女の子と犯人の間に身体を割り込ませるのでした。

頭部を撃たれ、瀕死の重傷を負った純一は、脳神経外科の権威である堂元教授が居る東和大学病院に運び込まれたのでした。
そして、堂元は純一に世界初の手術を施したのでした。
「世界初の脳移植」手術を。

意識が戻ったときに純一が目にしたのは、天井や壁が一面真っ白な部屋と、純一が目を覚ますまで3週間に渡って看護を続けてきた堂元の助手である若生と橘でした。

意識を取り戻した当初、純一の記憶ははっきりしませんでしたが、日が経つにつれ、何故に自分が病院に居るのか思い出します。
しかし、鏡に映る自分の顔に違和感を覚えたり、食べ物の好みが変わったりして、自分自身をなかなか取り戻せませんでした。

そんなある日、缶コーヒー(今までの自分の好みではない)が飲みたくなり、病室を抜け出して院内をさ迷います。
辿り着いた部屋には大きな保管庫があり、その中にはガラスケースに入った人間の脳が収められていました。

  • 1つには「ドナーNO.2」
  • もう1つには「ホストNJ」

と書かれたラベルがそれぞれ貼られていました。
後日、見つけた脳の事を堂元に話すと、彼は純一が「人類初の脳移植」を受けた人間であることを告げるのでした。

退院の許可が下りず、何週間も様々な検査を受ける日々でしたが、入院生活に少しずつ刺激が加えられます。
恋人の恵や会社の同僚、そして手術費用を出してくれた嵯峨氏に会い、さらに事件を捜査している刑事との面会では事件の事や自分を撃った犯人・京極瞬介の事を聞くのでした。
犯人である京極は、純一が居た不動産屋の社長の隠し子であり恨みから店を襲ったこと、さらに彼は、純一を撃った後、自殺したことを知ります。

ようやく退院してアパートに戻った純一は、事件前の日常を取り戻そうとします。
しかし、少しずつ、少しずつ、自分自身に違和感を覚え始めるのでした。

  • 恋人である恵のソバカスが気になる
  • 会社のやる気のない同僚に怒りを覚える
  • アパートの隣人に殺意を抱く
  • 趣味であったデッサンに興味がわかない
  • 音感が鋭くなりピアノを好むようになる

「気が弱く」「争いを好まない」人間だった自分が、「好戦的」な人間に変わっていく事に戸惑いを覚えるのでした。

定期検査に訪れた大学で、純一は堂元に尋ねます。

移植された「他人の脳片」が「自分の脳」に影響を及ぼしているのではないか?

堂元は、「他人の脳片なので元のようには活動しないが、人格が変わるようなことは想定していない」と答えます。

この答えに納得がいかない純一は、ドナーを突き止めれば自分の身体に起きていることに答えを見つけられるのではないかと考え、ドナーを捜し始めます。

ドナー情報を手に入れた純一は、ドナーの遺族の元を訪れます。
そして遺族と会話する中で、自分の脳に移植された脳片は「違うドナーである」と言う結論に達するのでした。

事の真相を探す間にも、純一の変化は止りません。

より暴力的になり、ついには同僚に怪我を負わせて逮捕されます。
嵯峨氏の力で解放されますが、彼の変化に動揺した恵は純一から離れてしまいます。

その頃から、病院で介護してくれた橘直子との新密度が増していきます。
付き合い始めた直子と共に嵯峨氏の家に招かれた際に、命を助けた女の子から決定的な一言を浴びせられます。
「前に会ったおじちゃんじゃない」と。

さらに、純一をアパートへ送る車の中で嵯峨氏つぶやいた何気ない一言「犯人の京極は音楽家志望だったそうです」によって、純一の頭の中に1つの仮説が生まれます。

自分の脳に移植された脳片は「自分を撃った犯人の脳」ではないのか?

その仮説を確認するために、純一は京極の妹に会いに行くのでした。

彼女に会って確信した純一は、大学へ行って堂元を問い詰めます。
言い逃れが出来ないと悟った堂元は、事情があって京極の脳片を利用したことを認めるのでした。

直子との距離を縮めていく純一は、実は彼女が「誰かの指示」で自分に抱かれ、自分の脳の状態を密かにスパイしていることを知ると、衝動的に直子の首を絞めて殺し、遺体をバラバラにして山中に捨てるのでした。

純一の心が残っているうちに死を選ぼうとアパートに戻った彼は、恵と再会します。
彼女は、苦しんでいる純一を最後まで支えると決意して、逃げ帰った田舎から再度上京してきたのでした。
彼女の借りているウィークリーマンションに身を潜めた純一は、全ての現象を元に戻すために「ある行動」を起こすのでした。

ここから先は書きません。
実際に本書を読んでお確かめください!

 

『変身』のおススメ度はいくつ?

おススメ度は75点!です。

面白いです。
徐々に徐々に壊れていく成瀬純一の様子から目を離せません。

変身 (講談社文庫)

変身 (講談社文庫)

 

 

『変身』をおススメする人

  • ミステリーが好きな人
  • 東野作品が好きな人
  • 人格入れ替わり物が好きな人

先日読んだ百田さんの『プリズム』も人格が入れ替わる(多重人格者の)話でしたが、私の好みには合いませんでした。

『プリズム』を読んだ! - lands_end’s blog

ですが、この『変身』はマッチしました。

 

『変身』をおススメしない人

  • グロテスクな表現が苦手な人
  • エロ表現を一切見たくない人
  • ミステリーが嫌いな人

かなり、グロテスクな表現もあります。
でも、そこを飛ばすと話が繋がらなくなるので読まざるを得ませんのでご注意を!

 

『変身』を読んで感じた3つのこと

読み終えて感じた点を3つ取り上げます。
基本的にはこの本に対して高評価ですが、取り上げる3点は評価に繋がらなかった疑問点と言えるかもしれません。

 

その1 この本のテーマは何であろうか?

読み終えて思いました。
作者が伝えたかったのは「いったい何だろうか?」

考えた結果以下の3つが思い浮かびました。

 

真の愛は不変

たとえ脳を弄られて本人の人格が変わっても
たとえ脳を弄られて恋人の人格が変わっても
本当の愛は不変だと言いたいのか?

最終盤における純一と恵のやりとりから感じました。

 

人間の脳の可能性について

ホンの僅かの脳片を移植しただけで、大部分の脳の持ち主の人格を一変させる可能性があるというのは驚愕しました。

脳の研究が進んだ未来では、ホンのちょっと脳を操作するだけで誰もが天才になりうる世界になるのでしょうか?

 

人間の最大の欲求・不老不死が達成される

この『変身』を要約すると・・・

銃で頭部を撃たれ重態となった患者に、脳死状態のドナーの「脳片」を移植すると、脳死したはずのドナーの人格が、移植を受けた患者の中で蘇る。

これって要するに、
人間は永遠に生き続けられると言う事でしょうか?

極端な話、近い将来に脳移植が確立されると、金持ちは手頃なドナーを見つけておけば、何かあっても脳片を移して永久に生き続けられる様になるのではないでしょうか?
そう考えると寒気がしてきます。

 

その2 医学的なリアリティ感をもっと出せなかったか?

ミステリーとしては十分に楽しめるので余計な事かも知れませんが、医学的なリアリティ感が少ないと感じました。

具体的には「脳移植してそんなに簡単に回復するのか?」と言う点です。

自分は脳移植より遥かに軽い手術(脳動脈瘤にクリップを着ける)を受けました。
それでも、頭部を開ける訳であり、術後の回復にはかなりの苦痛と時間を要しました。
1年以上経っても完治したとは言えません。

このような手術を受けた事による「肉体的な苦痛」の描写は、手術を受けた事によって人格が変わりつつある「心の苦痛」とは異なるので、描かれていないのも仕方ないのかな・・・とは思います。

ですが、ちょっと残念でした。

 

その3 脇役の扱いがちょっと雑では?

成瀬純一と葉山恵に関しては、かなり細部まで書き込まれています。
また、犯罪者の京極瞬介とその妹に関しても比較的突っ込んで書かれています。
しかし・・・
サブキャラクターの扱いがけっこう雑に思うのは私だけでしょうか?

 

嵯峨氏

娘が命を救ってもらったお礼に純一の手術費用を全て負担します。
またその後も、純一が警察署にお世話になった時にも色々と力になっていました。
が・・・終盤は消えてます。

重要人物の匂いがする割にはアッサリと消えました。

 

橘直子

純一と親密な関係になった直子は、犯人である京極が大切にしていた妹に面影が似ていました。

直子は、純一の味方だと言いつつ「誰かのため」にスパイ行為をしていました。
その裏切りが純一に露見すると、アッサリと殺害されてしまいます。

 

助手の若生

堂元教授の助手である若生さんは、密かに橘直子に恋していました。
そのため、純一が直子を殺害したと知ると強烈な殺意を純一に向けますが・・・。

彼は復讐を遂げる事無く、出番は失われます。

 

堂元教授

世界初の脳移植を行った偉い人ですが・・・。
存在感が薄く、キャラクターも確立されていません。

最後も突然、人道的な医師みたいに描かれています。

 

倉田刑事

純一が撃たれた事件の担当でした。
その後、純一が直子を殺害した際、純一を疑い捜査を進めようとしますが、「謎の」上からの指示で捜査を断念します。
そしてそれっきり登場してきません。

 

これらの点が、読後に若干の不完全燃焼感をもたらしたように思います。

 

東野圭吾の他の作品の感想文

覗いて頂いて、気になる本がありましたら是非!

www.road-to-landsend.net

 

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