グラスホッパー(著:伊坂幸太郎)を読んだ!
世間では有名な本だと思いますが、私は初めて読みました。
今まで多くの人が薦めてくれましたし、ブログ等で様々な人が絶賛しているのを見て、この本に興味は持っていました。
ではなぜ、今まで読まなかったのか・・・
その理由として思い当たるのは、行きつけの飲み屋の親父さんが「伊坂さんの『砂漠』が好きなら、読まない方がいいかもしれんね!」と言ったのが原因だと思います。
その言葉が引っ掛かり、今まで読まずに過ごしてきました。
しかし、先日、急性腸閉塞で入院して苦しんだ際に、「人生いつ何が起きるか判らないので、気になることは気になる時にしておこう」と改めて心に誓い、今更ながらですが、読んだ次第です。
『グラスホッパー』・・・読み終えましたので、感想をまとめておきます。
3分で読める『グラスホッパー』のあらすじ
中学教師であった27歳の鈴木は、妻をひき逃げ事故で亡くします。
犯人は、裏の世界で力を持つ父親の庇護の元、罪に問われることはありませんでした。
愛する妻の無念を晴らすべく、その男の父親が経営する会社「フロイライン」に入社し、犯人である息子に復讐する機会を伺っていました。
しかし、何度も同じような事件を隠蔽してきたため、鈴木と同じように復讐を狙って入社する人間が多く、会社側も鈴木を疑っていました。
それゆえ、鈴木の入社目的をハッキリさせるため、会社側は、拉致してきたカップルを殺すように命じるのでした。
葛藤の末、妻の復讐を遂げるため、関係のないカップルを殺すことを決意します。
疑いの目で見ている鈴木が、会社からの難しい指示に対してどういう行動を取るか見届けるため、鈴木達の居る場所にドラ息子(犯人)は向かっていました。
ところが、なんと鈴木の目の前で、誰かに交差点に押し出され、車にはねられて死んでしまいます。
仇を目の前で失い、呆然とする鈴木に、会社側は息子を押し出した犯人を追跡するように命じます。
鈴木は、その犯人を追跡し、自宅を突き止めて犯人と対面を果たします。
彼は「押し屋」と呼ばれる殺し屋であり、フロイラインと対抗している「劇団」と呼ばれる裏稼業集団の1人でした。
鈴木は、彼らのことを会社に報告するかどうか迷います。
その間隙を縫って、「劇団」の連中は、フライラインの社長の殺害に成功します。
「劇団」の手によって、復讐を成し遂げた鈴木は、都心を離れ地方都市で人生の再出発を果たすのでした。
10分はかかる『グラスホッパー』のあらすじ
2年前、愛する妻を轢き逃げで亡くした元中学教師の鈴木(27歳)は、妻の無念を晴らすために教職を辞めます。
そして、裏世界で名の知れた会社「フロインライン」に入社するのでした。
なぜなら、彼の妻を殺した男は、「フロイライン」の経営者・寺原の息子であり、父親の権力に守られ、鈴木の妻をひき殺した事件も揉み消していたのです。
それゆえ、犯人へ復讐すべく、鈴木は敢えて犯人の懐に飛び込んだのでした。
ドラ息子は、鈴木の妻を轢き殺した事件だけではなく、それ以外にも多くの悪事を働いていましたが、全て父親の権力をバックに揉み消していました。
そのため、鈴木と同じように、復讐を企てて密かに入社してくる人間があとを絶ちませんでした。それら過去の経緯から、入社したての鈴木にも、会社(社長とどら息子)は疑いの眼差しを向けていました。
ある日、鈴木は上司の比与子から、会社が拉致した無関係の若いカップルを殺害するように命じられます。
それは、鈴木を試すための指令でした。
鈴木が裏の世界にドップリ浸かれるのかどうか?
を確認するためである、さらに、仮に鈴木が言われるがままに殺害を実行すれば、その事実を握ることで。今後、会社が鈴木に対して有利に立つという狙いもありました。
無関係の人を殺すことに対し、鈴木は当然悩みます。
しかし、自分が今生きている理由はただ1つ。
「妻の復讐を遂げる。」
ことだと自分自身を納得させるのでした。
本懐を遂げるため、鈴木は、罪の無い2人を殺害することを決意します。
その時、鈴木の違法行為を見届けるため、鈴木がカップルと共に閉じ込められている車に、鈴木の仇敵である寺原の息子が近づいて来ました。
仇が手の届くところに見据えた鈴木は、次の瞬間、予想外の出来事に遭遇します。
交差点を渡ろうとしていた寺原の息子は、突然、何者かに押されて道路に飛び出し、車に跳ねられて死んでしまうのでした。
妻の仇に、目の前であっけなく死なれて呆然とする鈴木に対し、会社は「押した人間」を尾行してねぐらを突き止めるように命じるのでした。
寺原の息子が死んだ様子は、鈴木だけなく、鯨と呼ばれる「殺させ屋」も目撃していたことで、事態は複雑な様相を呈しはじめます。
鯨は、殺しの依頼を受けると確実に相手の息の根を止めることで有名でした。
殺すのではなく、自殺させるのです。
この時も、梶衆議院議員から、自分の秘書を死なせるように依頼を受け、依頼どおり自殺をさせたところでした。
その後、現場を立ち去る際に、寺原の息子を殺した「押し屋」を見かけます。そしてその男が、かつて、自分が仕事を失敗した原因を作った男であることに気付きます。
鯨は、今こそ彼を殺害することで、己を苦しめている幻聴や幻覚から解き放たれると考えます。そして、「押し屋」を殺して、殺し屋稼業から足を洗おうと決断します。
鯨に殺しを依頼した議員の梶は、極度の小心者でした。
秘書を殺す理由を鯨に知られたと思い込んでいる梶は、鯨も抹殺しなくてはいけないと怯え、別の殺し屋に鯨を殺害するように依頼します。
そして、殺し屋に鯨を始末させるため、鯨を誘き出すのですが・・・
新たに依頼した「殺し屋・蝉」は、指定された時間に現れませんでした。
動揺する梶に不審な点を感じた鯨は、梶を追求して自分を殺そうとしていたことを突き止めるのでした。そして、梶が依頼した相手の名前を聞き出し、それが「蝉」であることを突き止めるのでした。
「蝉」は、別件に追われていたため、指定された時間に間に合いませんでした。
その仕事とは、社長の息子を殺害した「押し屋」が「フロイライン」の社員に探されているという情報を掴むことでした。
情報を得ることには成功しますが、鯨の殺害に失敗した蝉は、せめて「押し屋」は自らの手で捕まえようとします。
一方、比与子から寺原の息子を押した犯人を追いかけるように指示された鈴木は、その男の後を付け、ついに彼の自宅を突き止めます。
家を覗くと、妻と2人の子供に囲まれた、普通の男がそこに居ました。
悩んだ末、呼び鈴を押して男と対面し、鈴木は「押し屋」と言う殺し屋稼業があることを知るのでした。押し屋は「槿」と名乗るのでした。
「押し屋」の居場所を突き止めた鈴木でしたが、比与子にその場所を伝えるべききかどうか躊躇します。
業を煮やした比与子は迷う事無く鈴木を薬で眠らせ監禁します。
そして、拷問して無理やりにでも吐かせようとした時、殺し屋「蝉」が乱入し、鈴木は助け出されます。
なぜ「蝉」が現れたのかと言うと、彼もまた、「押し屋」の居場所を探していたからです。「蝉」は、比与子が鈴木を拉致するのを見掛け、鈴木を手に入れれば「押し屋」の居場所を知ることが出来ると考え、比与子から鈴木を強奪したのでした。
監禁されていた場所から外へ出ると、そこには同じように「押し屋」を探していた「鯨」が待ち伏せていました。
2人の殺し屋の戦いは、「鯨」に軍配が上がります。
鈴木の身柄を手にしようと戻った鯨でしたが、鈴木は忽然と姿を消していました。
鈴木の姿を探していた鯨は、その追跡の最中、幻覚に襲われます。
そして、道路に飛び出した鯨は、車に轢かれ亡くなるのでした。
殺し屋同士が戦っていた時に鈴木を助け出したのは、「槿」でした。
彼は、自分は「劇団」に所属する人間であること。
「劇団」とは「フロイライン」に対抗する裏の組織であることを教えます。
また、鈴木が殺そうとしていた「若いカップル」もまた、「劇団」の人間であり、毒殺を得意とする「スズメバチ」と言う殺し屋であったことも教えるのでした。
さらに、危ういところで死を免れた彼らカップルによって、「フロイライン」の社長寺原は殺害されており、さらに鈴木の上司であった比与子は「押し屋」が列車に押し出して殺害したことも教えるのでした。
「劇団」によって、復讐の相手を全て殺害してもらった鈴木は、復讐という目的を失ったので裏の世界から抜け出します。
そして、広島へ移住して塾の講師を始めて人生の再出発を図ります。
ある日、ホームで列車を待っている時、向かいのホームに2人の子供がいました。
子供を見ていた鈴木は、彼らが「押し屋であった槿」の家に居た2人の子供だと気付き、彼らに声を掛けようとしますが列車がホームに滑り込んで来て、彼らの姿を見失ってしまうのでした。
『グラスホッパー』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は70点です!
面白い本ではありました。
ですが、自分の嗜好にはイマイチ合わなかったのだと思います。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2007/06/23
- メディア: 文庫
- 購入: 13人 クリック: 172回
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『グラスホッパー』をおススメする人
- 伊坂作品が好きな人
- ミステリーが好きな人
- 緻密に計算された文章が好きな人
『グラスホッパー』をおススメしない人
- ミステリーが嫌いな人
- 仕掛けのある本を読むのが嫌いな人
- 自分の脳内で物語を補完しながら読むのが嫌いな人
特に脳内で物語を補完する作業は、登場人物達の絡みを理解するためには必須の作業となります。(そうしないと、何が何だがサッパリになる。)
なので、そういう本が嫌いな人は止めた方が良いかもしれません。
『グラスホッパー』の読後の感想
最初に述べたように、この本はずっと気になっていた一冊なのですが、とある理由から読んでいませんでした。
その理由とは、飲み屋の本好きのマスターが、「伊坂さんの「砂漠」が好きなら、止めた方がいいかもよ」って言われたからです。
読み終えて、マスター恐るべし!
と呟きました。
マスターが指摘したとおり、「砂漠」をこよなく愛した自分にとって、この本は合いませんでした。
マスターにその事を告げると、ニヤニヤしながら、杯おごってくれました。
なんか、自分を見透かされているようで、ちょっと怖くなりました。
『砂漠』が好きな自分にとって、『グラスホッパー』の何が合わなかったのか?
グラスホッパーの世界ですが、完全に非現実の世界ですよね。
一方、砂漠の世界は、現実により近い世界ですよね。
砂漠の登場人物達も、とても親近感が持て、友人にいそうなヤツが出てきます。
一方、グラスホッパーの登場人物は、主人公以外は、ほぼ現実離れしたヤツばかりが出てきます。
じゃあ、SFが嫌いなのか?
と言うとそういう訳ではありません。
どちらかと言えば良く読みます。
なのに、なぜにグラスホッパーがダメなのか・・・。
ここから先の見解は、私の勝手な感想なので、読んで不快に感じたら許してください。
私が思うに、伊坂さんの文体や言葉や会話のリズムは、現実により近い世界や、親近感を感じさせる(生身を感じさせる)登場人物を描いた時に、その良さが存分に発揮されるのではないかと思うのです。
だから、グラスホッパーのような非現実の世界ではなく、「普通の人間らしさ」を見せてくれた作品の方が、より好きになれたのではないか?
そう考えています。
『砂漠』・・・本当になんでこんなにも好きになったのだろう?
あの独特のテンポと言い回しが本当に好きです。
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