秘密(著:東野圭吾)を読んだ!
長編の歴史小説(太平記)を読み終えたので、今度は現代小説を読むことにしました。
どの本を読むか悩んだのですが・・・、今年、親となったのでこの本を選びました。
子供は女の子ではなく男の子なので、本で書かれているのとは少し違うかもしれない。
でも、この本が出た直後に読んでから今年で15年経ちます。
- 30代前半と40代中頃の自分がどんな風に変わったのか?
- 親となって何か変化は起きているのか?
読後の感想がどう変わるか???
そんな事を考えながら読み進めました。
「秘密」の感想をまとめます。
『秘密』のあらすじ
自動車部品メーカーに勤める40過ぎの杉田平介は、心から妻と小学生の娘を愛しつつ、平凡なサラリーマン人生を歩んでいました。
しかし、ある冬の朝、彼の人生は一変することになります。
夜勤を終えて自宅に戻った平介は、独りで朝食の準備を始めます。
愛する妻と娘は親戚の葬儀に参列するため、スキーバスを利用して妻の実家へ向っていました。
朝食の準備をしていた平介の耳が付けっぱなしにしていたテレビから流れてくる「ある言葉」を捉えます。
「スキーバスが事故、死傷者多数」と・・・。
病院へ駆けつけた平介は、ぎりぎり妻の死に目に立ち会うことが出来ました。
直子は意識の戻らない娘の手を握り締めつつ、息を引き取るのでした。
妻の葬儀を終えると、奇跡的に藻奈美の意識は戻ります。
直子が身体を挺して守った娘の意識が戻り、安堵する平介でしたが、すぐに別の問題を突きつけられます。
藻奈美の身体には、直子の魂が宿っていたのです。
冗談にも程があると思い、藻奈美を問い詰めるのですが、藻奈美が平介と直子しかしらない2人だけの思い出を語るのを聞き、平介は間違いなく藻奈美が直子であると信じるようになるのでした。
こうして家族3人での奇妙な生活が再開します。
父である夫である男と、娘の身体であり心は妻である少女との生活。
好奇の目に晒されるのを嫌った2人は、家では夫婦、外では親子として振舞うようにするのでした。
しばらくして、平介は事故を起こしたバス会社と遺族会との話し合いに参加し、その会で事故の原因となったバス運転手・梶川の遺族と出会います。
彼には妻と娘が1人いました。
彼女達も事故の遺族であるのに、加害者の家族として非難されていました。
稼ぎ頭を失い、生活も困窮しているだろうと同情する平介に、運転手の妻は、夫の給料は僅かで生きている時でさえ生活は苦しかったと告白します。
この話を聞いて平介は、過労で居眠りをするほどに働いていたのに給料が少ないのはおかしい、博打か?外に女でも居たのではないかと疑うのですが、敢えて口にすることはありませんでした。
事故の直後は少女だった直子(藻奈美)は、中年のままの平介と違い、日々、身も心も成長していきます。
母である直子は、藻奈美がこの身体に戻ってきた時のために必死に勉強に励みます。そして、いずれは医師になることを目指すため、大学に医学部が併設されている私立高校へ進学することを目指すのでした。
その後暫くして、平介は運転手の妻が過労で急死したことを、独り残された娘さんから伝えられます。彼女は渡したいものがあると言うので会って話した際に、実は運転手と妻は再婚であること、そして自分は母の連れ子で運転手の実の娘ではないことを知らされます。
そして、彼女は運転手の形見である懐中時計を平介に預けるのでした。
平介は、半ば故障していた時計を修理屋へ持込みます。
残念ながら、時計時代は値打ちものではなかったのですが、懐中時計の裏に張られた1人の男の子の写真は、人によってはお金に変える事のできない価値だと知った平介は、出張を利用して訪れた北海道で運転手の元妻に連絡を取ります。
しかし、妻は不在であり、替わりに写真の主と思われる男性(運転手の息子)・文也と会って話すことにします。
平介は梶川が事故で無くなったこと、自分はその事故で妻を失ったこと、梶川の妻もその後に亡くなり娘が1人残されたこと、そして、彼女から時計を受け取ったら、裏に貴方の写真が貼ってあったことを伝えます。
文也は、平介の境遇に同情するが、自分と母を捨てて別の女の下へ走った梶川を憎んでおり、形見の時計を受け取ることは拒否します。
平介は、なんとか写真だけでも受け取るように願い、文也は渋々写真だけは受け取り去っていくのでした。
高校に進学した直子(藻奈美)はさらに心身が成長していきます。
彼女は、高校の部活活動で知り合った男の子と惹かれあい、少しずつ、少しずつ、互いの距離を縮めていき、ついにクリスマスに平介の目を盗んでプレゼントを交換しようと待ち合わせます。
嘘をついて家で飛び出した直子(藻奈美)は、待ち合わせの場所に男の子の姿を見つけ、笑顔を浮かべて駆け寄りますが、直ぐにその笑顔は凍りつきます。
そこに、居るはずのない「夫」の姿を見つけて・・・。
平介は交際させて欲しいと食い下がる男の子に「藻奈美と君は生きる世界が違う」と言い、藻奈美を家に連れ帰るのでした。
自宅に帰った直子(藻奈美)は、なぜ平介が自分の居場所を知ったのか不信に思い自宅の電話機の周囲を漁り、ついに録音機を発見します。
それは、藻奈美の行動に不信を感じた平介が、「妻」の心変わりを恐れて仕掛けた録音機でした。
愛する妻を失う恐怖がエスカレートした平介の、「お前は俺の妻だ」という叫びを聞いた直子は、夫婦としての絆を確かめるために平介に抱かれようとします。
しかし・・・どんなに妻を愛していても、娘の身体である妻を平介は抱くことが出来ないのでした。
この日以来、2人の間には心が通わなくなります。
喧嘩をするわけでも、愛し合うこともない、ただ、2人で暮らしているだけでした。
そんな日々が続いていたある日、平介は梶川運転手の元妻・典子に呼び出されます。
典子が平介に侘びをしたいと言っていたので、平介は「せっかく北海道まで会いに来たのに息子が意固地になって会わせなかった事を詫びるのだ」と思っていました。
しかし、彼女の詫びは予想外のものでした。
典子は梶川と結婚する直前に、かつて付き合っていた男と浮気したのでした。
たった一度の過ち・・・なのに、その男の子供を宿してしまったのです。
生まれてきた子供を梶川は溺愛します。
その姿を見る度に典子は罪の意識に苛まされ、同時に真実を心に隠します。
ところがある日、ひょんなことで梶川は自分の血液型が思って血液型と違うことを知ります。そして、文也の血液型は自分の血液型と典子の血液型から決して存在しない血液型だと知って、典子を問い詰め、ついに真実を知ってしまいます。
その後も暫くの間は、梶川は子供の前では何事も無かったように振る舞います。
しかし、ある日、伝言を残して典子と子供の前を去ってしまうのでした。
「すまん、父親のふりは出来ない」
時が過ぎ、文也が大学受験を迎えるころ、梶川から典子に連絡が来ます。
そして、進学に十分な資金が無いと知ると彼は援助を申し出るのでした。
梶川が文也の年齢を覚えていただけでも驚きなのに、なぜ、実の子でない文也のためにそこまでしてくれるのか典子が聞くと、彼はこう答えるのでした。
「家族の幸せが全てだ」と。
この話を聞いた平介の心で何かが弾けます。
そして、家に帰り直子に言うのでした。
「長い間、苦しめて悪かった。」
そして、学校行事に行ってくるように話しかけます。
「藻奈美・・・だぞ。」
平介の心の決意を知った直子は部屋に閉じこもり一晩泣き続けるのでした。
翌朝・・・起きてこない直子(藻奈美)を心配して部屋に入った平介は、藻奈美を見つけるのでした。正真正銘の藻奈美を。
この日を堺に、藻奈美の身体には直子と藻奈美が交互に宿るようになり、徐々に藻奈美でいる時間が多くなっていきます。
就職活動で上京した文也は、自分の態度を詫びるために平介に連絡してきます。
そこで平介は、文也を家に招き、藻奈美の手料理を振舞うことにします。
玄関先で初めて会った藻奈美と文也の目が絡み合います。
藻奈美でいる時間が更に長くなった頃、藻奈美から山下公園に連れて行ってくれと頼まれます。そこは平介と直子が始めてデートした場所でした。
何かを予感しつつも平介は公園に連れて行きます。
ベンチに座ると直子が現れ、「ありがとう。忘れないでね」と、平介に別れを告げ去っていくのでした。
この日以来、父と娘だけの家族になります。
それから数年、藻奈美と文也が結婚することになります。
式の当日、平介は文也に梶川の形見である懐中時計を渡そうと思い、故障している懐中時計を直しに馴染みの修理屋に行きます。
そして、店主から藻奈美のある行動を知らされるのでした。
その藻奈美の行動が意味することは・・・
真実を知った平介が取る行動は・・・
ラストは本書を読んでお楽しみください。
『秘密』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は90点です!
是非、読んで欲しいです。
本が好きな方なら、絶対に損はしないと思います。
『秘密』をおススメする人は?
誰にでも読んで欲しい一冊ですが・・・
あえて指名をするならば次の人達です。
- 10代の若者(女性の方がいいかも)
10代の女性が読んだら気持ち悪くなる内容かも知れません。
でもきっといつか、この本を若い頃に読んだ価値に気付くはず。 - 父親(子供が息子でも構わない)
娘を持つ父親の永遠のテーマ(嫉妬と心配)なのでしょう。
でも、息子でも心配する気持ちは変わらないはず。 - 義理の父・母になる人
実の子で無いからこそ、注ぐ愛情は深くなるのでしょうか?
『秘密』をおススメしない人は?
屁理屈をこねる人は止めた方が良いと思います。
例えば・・・
バスの事故の原因が不明とか、遺族と加害者がそんな簡単に分かり合えないとか・・・
瑣末な部分に囚われず、「人を愛することとはどんな事なのだ!」という作者の想いを素直な気持ちで読める人でないダメだと思います。
『秘密』を読み終えて感じたこと
冒頭に書いたように、初めて読んだ時から15年が過ぎました。
当時、30代前半だった私も40代後半になりました。
若さや体力を失い、その代わりに痛みや経験を得ました。
公私共に大きく生活環境が変わりました。
それによって・・・
今回、読んで一番心に刺さる部分も変わりました。
●30代前半、独身で仕事もノリノリだった頃・・・
一番心に残ったのはラストシーンでした。
感動と言うよりも、「ほーそうきたかぁ~」という驚きでした。
●40代後半で息子を持つ父親となった今・・・
一番心に刺さったのは梶川が典子と文也の前から姿を消す時の置き手紙でした。
「すまん、父親のふりはできない」
このシーンを読んで、しばらく考え込んでしまいました。
家に帰って息子の笑顔を見たら涙が出てきました。
「自分だったら、どうするだろう・・・」と。
たぶん、絶対に回答が出ないと思います。
良い本の再読はやっぱり止められません。
自分が人生で得てきた経験や、周囲の環境で、読んだ時の感じ方が大きく変わります。
だから、読書は楽しい!
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