あすなろ三三七拍子を読んだ!(著:重松清)
ブログ再開後の読書感想文第二弾は、重松清の本になった。
ここ数年、もっとも気に入って読んでいる作家の一人です。
今回の「あすなろ三三七拍子」を読んだ感想と、オススメ度合いをまとめます。
念のためですが、感想とオススメ度合いは、私の勝手な思い込みなので、気にある点があってもお許しください。
それと、ネタバレ気味にな所もあると思うので、お気をつけください。
この本は迷えるおっさんへの応援歌です!
(粗筋)
妻と女子高生の娘が一人いる40代の中間管理職・藤巻大介が主人公である。社長の出身大学で風前の灯となっている応援団を存続させるため、社長が考えたのは社員を社会人入試で合格させ、応援団に勤めさせるというウルトラC・・・いや、裏技。剛腕オーナーが一代で築いた会社では、社長の意向には逆らえず、あすなろ大学応援団への人事異動となったことから物語りははじまる。
「いまどき」の若者との確執と和解。一筋縄ではいかない応援団OB。女性人権派の女性教授。40代のおっさんが裸一貫で飛び込んだ若者たちの世界で得るものとは何なのか?なぜ、この2010年代に応援団なのか?
読者それぞれが、●●したい人、そして●●してくれる人、を瞼に浮かべます。
この本を手にしたのは、たまたま古本屋で未読の重松シリーズを探している時に見つけたのが切っ掛けだった。
物語の前半から中盤にかけては、読んで失敗のない重松作品らしく、上手く、楽しくまとめられていた。上巻の最大の見せ場は、合宿だった。噛み合えない、応援団とチアリーディング、そして吹奏楽が、一瞬、まとまるよう熱血青春物語を感じさせつつ、あっさりと落とす。それ以外は、下巻に次々と巻き起こる、若者なりの葛藤。親子の葛藤。中年の葛藤。そして人間としての様々な葛藤。それらを輝かせるための土台作りなんだなと感じました。
この作品でも『死』が重要な要素に!
このブログの中で、私自身が体験した未破裂脳動脈瘤について記しています。
未破裂脳動脈瘤 カテゴリーの記事一覧 - lands_end’s blog
その病を通じて、私自身「どうやって人生の最後を向かえるか」を深く考えさせられました。そのため、とても本作品の中で描かれた「死にゆく人」と「死を看取る人」の両方の感情が他人事とは思えず、私的には読むのが辛かったです。
それと、父親と息子の関係は、やっぱり難しいものだと改めて感じました。
人生で大切なものは、固定概念では語れない!
大人の世界(仕事の世界)における、妥協や、周囲の人やその場に合わせて自分の感情を抑える事は、生きるために仕方の無いことだと思われがちです。
そして、決して明るいイメージでは描かれないのが普通です。
しかしこの作品では、それらが決して「醜い物とは限らない」と描いているのも良かったです。
その上で、「若い」と言うことが「どれだけ大切で」「どれだけ素敵な時代」だったのかを、とてもシンプルに描いているからこそ、その大切さが際立ちました。
「わしら中年になってしもうたら、一年や二年で、そう変わることはない。体は年をとっても、オノレの根っこの部分は、もう、変わることはない」
「せやけど、若い者は違う。一年で別人や・・・中略・・・たいしたもんや。伸びしろが、ようけある、ということや」
本著:287ページより
今までもどこかで聞いたことのあるような台詞だし、さして、真新しい説でもない。
ただ、ここまで読んできた読者の心には必ず突き刺さる。
シンプルな文章だからこそ、スッと心に染み入りました。
プロって流石だなぁ・・・と思いました。
あすなろ三三七拍子のオススメ度はいくつ?
点数としては85点!
上巻はそれほど心躍らなかったし、下巻も最初のうちは「藤巻の応援団引退」は見えていたし、「オチ」も何となく想像が付く展開が続いていました。
しかし、下巻の後半で繰り広げられた、「想像がついていた終わりで感動」したことは、久々に、読んでいて「うわーっ」って素直に楽しめました。
それと、「あとがき」(作者が自分で文庫用にまとめている)がオススメです。
これほど読んでいて楽しかったのは、あまり記憶ありません。
あとがきを読んで、改めてもう一回読みたい。描かれている人たちにもう一度会いたい。って思えましたもの!
最後に注意事項です。
最終章は通勤通学の列車の中で読むのは危険です。私が涙もろいだけかもしれませんが、涙を堪えるために、上を向く時間の長かったこと・・・。
お気をつけください!
重松さんの他の本の感想文はこちら!
昔の記述なので、ちょっと恥ずかしいのですが・・・。