天下騒乱 鍵屋ノ辻(著:池宮 彰一郎)を読んだ!
日本史に触れたい気分になって選んだのはこの1冊でした。
本書の元になっている「鍵屋の辻の決闘」は、日本三大あだ討ちの1つだそうで、残りの2つは曾我兄弟の仇討ちと赤穂浪士の討ち入りだそうです。
読み終えましたので感想をまとめます。
鍵屋ノ辻事件が起きた頃の時代背景
まずは事件が起きた頃の時代背景からまとめます。
鍵屋ノ辻事件が起きたのは江戸時代の1634年。既に家康も2代目秀忠も亡くなっており、三代目の家光の時代です。
ちなみに、戦国大名の生き残りとしては以下の武将が健在でした。
- 伊達政宗 1636年逝去
- 蜂須賀家政(小六の息子)1639年逝去
- 立花宗茂 1643年逝去
- 細川忠興 1646年逝去
- 真田信之 (幸村の兄)1658年逝去
けっこう生き残っていたのですね。
鍵屋ノ辻事件の背景にあるのは、1615年の大阪夏の陣以降は戦争が無くなり、侍達の間にも平和ボケが広まりつつある時代において、戦国の荒々しさや武士のあるべき姿を失う事無くしっかりと世間に示した男達の話です。(だと思う)。
『天下騒乱 鍵屋ノ辻』のあらすじ
1630年、岡山藩において事件が発生します。
藩主・池田忠雄が寵愛する小姓が河合又五郎によって斬殺されます。
又五郎の父は、かつて江戸で刃傷沙汰に及んだ際に、幕府の不興を買う事を恐れずに岡山藩が身柄を保護され、藩に大きな借りがありました。
にもかかわらず、河合親子はその恩に仇で報いる行為を選択します。
いさぎよく又五郎に腹を切らせず、江戸へ脱出させて旗本に保護を求めます。
その結果、岡山藩内で処理できる小事件ではなく、旗本対外様大名の争いとなり、幕府にとっても扱いを間違えれば幕府存続の危機にも発展しかねない厄介な事件となってしまうのでした。
そんな折、又五郎の身柄を要求していた岡山藩主・池田忠雄が急逝します。
世継ぎの無い岡山藩にとって、お家取り潰しの危機となりますが、岡山藩家老の但馬と幕府老中の土井が懇意であったため、鳥取の池田本家と国替えをもってお家存続の許しを得る事に成功します。
一方、又五郎の身柄を匿い、幕府に対して反抗的な態度をしていた旗本に対しては、幕府は主要な旗本数人を謹慎処分とします。そして、喧嘩両成敗の論理をもって争いの幕引きを計るのでした。
しかし、藩主逝去の上に実質的な実入りの少ない山陰の国に配置換えになったことにより藩内の不満と、死の間際に藩主が残した「墓前に又五郎の首を捧げろ」と言う遺言を達成するために、家老の但馬と幕府老中の土井は、殺された小姓の義理の弟・渡辺数馬に仇討ちを行わせることを密かに企図するのでした。
ところが、数馬は武士とは言え剣の腕はさっぱりであり、1人では仇討ちを達成出きる見込みはありませんでした。
さりとて、助け舟に多人数の許可を出せば、又五郎側も多人数を護衛に雇うことに繋がり、またしても世間を揺るがす騒動に発展する可能性がありました。
そこで、渡辺数馬の姉の旦那であり、剣豪として名の知られた荒木又右衛門だけを数馬の仇討ちに同行させることにするのでした。
最終的に、仇討ちを狙う数馬側は4人(荒木の従者2名)
又五郎側は十数名(うち主軸となるのは又五郎の叔父で剣術指南役の河合甚左衛門と又五郎の妹婿であり槍の名人である桜井半兵衛の2名)
数馬一行は、幕府側から多くの援助(情報)を受けつつも、報復の機会は一度のみに限るとされたため、確実に又五郎を仕留める機会を伺い雌伏の時を過ごします。
待つこと数年、ついに、奈良の旗本の屋敷に匿われている又五郎一行が、伊賀路を通り、江戸へ向かうという情報がもたらされます。数馬たちは先回りして、途中の鍵屋の辻で待ち伏せすることにするのでした。
1634年11月7日早朝、数馬たち一行の待ち伏せに気付かず又五郎一行が鍵屋の辻にさしかかります。
仇敵・又五郎の姿を確認した数馬一行は、一斉に飛び出して又五郎一向に奇襲を掛けるのでした。
その結果は・・・
是非、本書を読んでお確かめください!
『天下騒乱 鍵屋ノ辻』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は70点です!
追う者、追われる者、双方の苦しさが文面から伝わってきます。
最後の「鍵屋の辻」での闘争シーンは迫力満点です。
『天下騒乱 鍵屋ノ辻』をおススメする人
- 歴史小説が好きな方
- 日本史が好きな方
- 細部に拘った描写(人物の関係性など)が好きな方
ぜひ読んでください。
『天下騒乱 鍵屋ノ辻』をおススメしない人
- 歴史小説が嫌いな方
- 歴史小説は好きだけど、詳細に拘った文章を読みたくない方
- 漢字が苦手な人
歴史好きで本を読むのが好きな私でも、時々、読むのを挫折しそうになるくらいに各人物関係図の説明が詳細に書かれています。
「へぇ~そうなんだ」
と思う薀蓄もありますが・・・
「いや、それはここで書かなくても」
と思う薀蓄もあります。
『天下騒乱 鍵屋ノ辻』の感想文
読み終えた感想をまとめます。
今後読む方へのアドバイスでもあります。
大変な点 とにかく下巻まで頑張って読むこと!
先程、おススメしない方の項目でも触れましたが、とにかく、人物関係に関して掘り下げて掘り下げ・・・掘り下げて書かれています。
- 誰々は誰それの叔父・兄弟であるとか・・・
- 誰々は後日何々の役に付くとか・・・
正直、日本史(特に江戸時代初期)の知識が無い、または余り興味が無い人がまともに読もうとすると、挫折しても不思議ではないほどです。
でも、上巻で疲れて諦めたら勿体無いです。
鍵屋の辻事件が描かれている下巻の後半まで、何としても辿り着いてください。
頑張っただけの価値がある仇討ちシーンになっています。
良かった点 心に響いた家康の教え!
老中の土井利勝が語る、家康の教えが心に響きました。
家康は、自分が亡くなった後に幕府を運営する利勝への餞として話したのでしょう。利勝の晩年に家康のことを振り返って語るシーンが気に入りました。
「よいか、これは悪だぞ。世に権威、武権というものには、それ自体、悪なのだ」
「だが・・・天下を一つに統べるには、それしかない・・・戦乱の世を抑えるには、善悪を越えて、威権を確かなものとするしかない・・・」
「大御所様は、こういわれた。世に最も悪なるは、世人の批判を懼れて何もせず、便々と職に居坐る者だ、と・・・」
本書P366~367より引用
これら家康の言葉、現代の世において、サラリーマンとして働く我々にとっても無視出来ない言葉だと思います。
- 上に立つ者の心得
- 会社の中枢を担うときの心得
意識しながら仕事をしたいと思います。
もっとも、一番心に留めてほしいのは今の政治家どもですが・・・ね。
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