きらきらひかる(著:江國香織)を読んだ!
この本を読むのは初めてではありません。
10代後半に始めて読んで以来、人生の節目節目に読み返している。10回は読んでないと思う。でも5回以上は読んでいる気がする。
私が本を複数回読み返すのは、自分が年齢を重ねたり、色んな経験を得ると、本の読み方や感じ方が変わるのが楽しいからである。
この本も、私にとってはそんな1冊です。
- 『きらきらひかる』のあらすじ
- 『きらきらひかる』の私にとっての存在
- 『きらきらひかる』のおススメ度はいくつ?
- 『きらきらひかる』の好きな2つの台詞
- 『きらきらひかる』の続編
- 今までに記事にした江國さんの作品
『きらきらひかる』のあらすじ
お見合いで結婚した笑子と睦月。彼ら夫婦の非日常である日常を描いた小説です。
互いに結婚する気は無かったのに、親の勧めで参加したお見合いで互いに惹かれるものがあり、結婚をした笑子と睦月。
笑子はイタリア語の翻訳の仕事を不定期にしていて、睦月は内科の勤務医として働いていた。
笑子の重要な仕事は、寝る前にベッドのシーツをアイロン掛けしておくことであり、掃除・洗濯・料理は主に睦月が担当していた。
新婚ホヤホヤの彼らは、端から見れば幸せそうな普通の夫婦であった。
ただし、寝室のチェスト最上段にある『2つの診断書』を見なければ。
一つ目の診断書は、『笑子の精神病が正常の域を逸脱していない』ことを証明するものであり、
もう一方の診断書は、『睦月がエイズには感染していない』ことを証明するものであった。
つまり、幸せそうに見えるこの夫婦は、
妻はアル中で精神病を患っており、夫はゲイなのであった。
互いの両親は、それぞれの子供の秘密を知りつつ、そのことを見合いの席でも、結婚したあとでも互いの親族に『互いの子供の特別な事情』を告白はしないのであった。
笑子の両親は『正常の域を逸脱していない精神病患者』の娘が、ようやく捕まえた優良物件を手放さないことに腐心していたし、
睦月の両親も『ゲイ』である息子とその性癖を知りつつ結婚してくれた嫁を気遣い、息子との関係が長続きするように腐心していた。
それゆえ、互いの両親(特に両方の母親)は積極的に夫婦関係の維持のために子作りを勧めるのであった。
笑子は睦月の恋人である紺(年下の男)とも良好な関係を保っていたし、睦月の職場の同僚である産婦人科の柿井とその恋人である樫部(男・脳外科医)達と過ごす時間も、大切な時としていて、このまま変化無く睦月と暮らすことを希望していた。
しかし、笑子の唯一の友人・瑞穂や、笑子の精神科の担当医師、それと自分の母親と義理の母親が口にする『子供を作れば・・・』という言葉に、徐々に心を掻き乱されていくのであった。
さらに、優しすぎる睦月も笑子の心を痛ませる原因の1つであった。
情緒不安定になっていく笑子を危惧し、睦月は自分だけが恋人・紺との逢瀬を重ねることに心を痛め、笑子のかつての恋人を笑子に会わせる様に瑞穂に依頼する。
非常識な依頼に憤慨しながらも、その依頼を受けた瑞穂であったが、事の真相を知った笑子が発狂寸前に追い込まれるのを見て、睦月を呼び非難するのであった。
笑子を追い詰めているのは自分であると思い至った睦月は、瑞穂に自分の性癖を伝え、それとなく笑子の両親へ伝わるようにするのであった。
真相を知った笑子の両親は、睦月の両親にも声を掛け、笑子と睦月の自宅で親族会議を開くのであった。
その席上、笑子は『互いに脛に傷を持つもの同士』と発言し、彼ら夫婦は寝室の引き出しから『2つの診断書』を持ってくることになるのであった。
最初から答えのない親族会議は物別れに終わるのであったが、笑子は1つの計画を立てるのであった。
計画実行のために、人工授精の相談に睦月の同僚である柿井の元を訪ねるのであるが、笑子の口から出た提案は柿井を絶句させるものであった。(この提案に関しては詳細を書きません)。
その笑子の提案を知らされた紺は、笑子をそこまで追い詰めた睦月を詰り、殴りつけると、一人、旅に出てしまうのであった。
紺が笑子と睦月の元から消えて、もっとも動揺したのは笑子であった。
しかし、1週間程経つと急に落ち着きを取り戻し、再び、両親を落ち着かせるために動き始めるのであった。
- 睦月が恋人と別れたこと
- 人工授精をするつもりであること
それをアピールして睦月と自分の両親との間の確執を取り除くと、次は睦月の気持ちを落ち着かせるために作戦を練るのであった。
恋人の紺を失って1ヶ月、
平静さを失っていく旦那のために笑子が仕掛けたサプライズとは?
『きらきらひかる』の私にとっての存在
この本は、私が初めて読んだ江國香織の本です。
学生時代に片想いしていた女の子に、無言で渡されたのがこの本でした。
正直、彼女が何を言いたいのかさっぱり判らなかったのですが、
ただ、『これ以上何か言ってはいけない雰囲気』だけは判りました。
40を過ぎて思うのは、
随分と粋な振り方をするヒトだったなぁ・・・と思います。
未だに女性の言動には謎が多くて、途惑ってばかりいますが・・・。
『きらきらひかる』を読みたくなるとき
きらきらひかるとの出会いは、上述したとおりで、その時には読書に気持ちが入っていなかったので、江國作品に嵌ることはありませんでした。
ですが、その後に付き合っていたヒトから『こうばしい日々』を渡されて読んだ後に、もう一度、この『きらきらひかる』を読み直すと、なぜだか途端に江國さんの文体や世界観に溺れてしまったのです。
そんな中でも、このきらきらひかるを読みたくなる瞬間はちょっと変わっているかも知れません。
- 自分の環境が大きく変わった時(仕事や引越しなど)
- 誰かと別れたとき(死別でも生き別れでも)
- 単に悲しいとき
- 新しい一歩を踏み出すとき
- なんとなく読みたくなる
こんな感じです。
今回の理由は、4かな。
昨年、大きな病気で手術・入院したのですが、年も変わり、新しい人生のスタートとしたいと思ったから。
それから、私の病気は脳外科関係だったので、作中に脳外科医が出てくるのを思い出し、治ったら読み返そうと思っていたのも理由とすれば、5も該当するのでしょうか?
『きらきらひかる』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は90点です!
何度も読んでいるのに、飽きないし、色褪せない。
人間関係の不思議さを、いつも新鮮な気持ちで楽しめるという稀有な作品だと思います。
『きらきらひかる』をおススメしたい人
何といっても、江國さんの世界観が受け入れられるかどうかだと思います。
それがどういう世界観なの?
と言われると、正直説明しようがありません。
でも、この『きらきらひかる』は江國作品が受け入れることが出来る体質かどうか?
その試金石になる本だと思います。
日常を描いているけど、それが非日常でもある、不思議な世界観を。
『きらきらひかる』をおススメしない人
おススメしたい人に書いた様に、江國さんの世界観を受け入れられる人です。
理解することとは違います。理解なんて絶対に出来ません。
ただ、江國さんの世界観をストレートに『そうね、それもあるね』と受け入れられるかどうかだと思っています。
他にもこんな人は読むのを控えた方がいいかも。
- 純愛小説が苦手な人
- 黒白ハッキリしない関係が嫌な人
たぶん、男と女だと受け入れ方や読み方も違うような気がします。
『きらきらひかる』の好きな2つの台詞
読む度に、好きな台詞が変わります。
そのため、いっぱい好きな台詞はあるのですが、今回は以下の2つ選んでみました。
あしたもあさってもその次も、僕たちはこうやって暮らしていくのだ。
素直にいえば、恋をしたり信じあったりするのは無謀なことだと思います。どう考えたって蛮勇です。
2つめの引用は本編からではなく、あとがきに作者が書いている台詞です。
この本のあとがきは、江國作品を知るには結構大切かも知れません。
『きらきらひかる』の続編
『きらきらひかる』の終わり方は、この記事では書きません。実際に読んで確認してください。
その上で、この作品には続編がありますので、是非、読んでください。
『ケイトウの赤、やなぎの緑』(「ぬるい眠り」に収録)
『きらきらひかる』で描かれた世界から約10年後の世界が舞台です。
きらきらひかるが描かれたのが1991年、続編の舞台は2000年代初頭。
この10年がどれだけ私達の生活に大きな変化をもたらしたのか、それを感じるのも面白い読み方です。
IT(メール等)の発展が、人との付き合い方で変えたことと変わらないことなど、思うことはいっぱいあります。
それでも、笑子と睦月の在り方は、読者の期待を裏切らないと思います。
先に引用したとおり、
あしたもあさってもその次も、僕たちはこうやって暮らしていくのだ。
なのですから。
ちなみに私は続編は以下の雑誌で知りました。
彼女の世界観が良く判る一冊でおススメです。
新潮ムック 江國香織ヴァラエティ (Shincho mook)
- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/03/29
- メディア: 大型本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (16件) を見る
今までに記事にした江國さんの作品
たぶん、殆どの本は読んでいるけど、なぜか記事にしてません。
結構、難しいから、まとめるのが・・・。
以下の3作品は、随分前に書いたので、ちょっと恥かしい内容ですが、参考までに。