lands_end’s blog

未破裂脳動脈瘤との闘いをコーギーに癒され暮らしています。鹿島アントラーズの応援と読書に人生の全てを掛けている40代の徒然日記です。

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『ゼロの迎撃』を読んだ!



ゼロの迎撃(著:安生正)を読んだ!

安生さんの前作、『このミス』で大賞に輝いた『生存者ゼロ』は、文章のテンポや言葉遣いが私的にはかなりツボにはまり楽しめました。

『生存者ゼロ』を読んだ! - lands_end’s blog

 

その後、古本屋さんで第2作目を見つけたので購入し、期待しながら読み始めました。
結構ボリュームがありましたが、無事に読み終えましたので感想をまとめます。

 

『ゼロの迎撃』のあらすじ

梅雨前線を伴った大型台風が日本に近づき大荒れの海上で、船を乗り換える武装集団の描写で物語の幕が開きます。

朝鮮半島を出発した潜水艇と小型船は、中国漁船団に紛れて南下し、紀伊半島沖で日本からの船と合流します。
乗り換えた彼らの向かう先は、東京湾でした。

 

陸上自衛隊の情報官である真下は、情報官としての任務を終え、他部署への異動を間近に控える身でした。
彼は、病が見つかり手術に臨む妻に対し、今まで放置してきた罪滅ぼしも含め、出来る限り側にいようと決心していました。

そんな状況の彼ですが、政府主要会議への呼び出されます。

その理由は、『正体不明の集団が首都圏に潜入したと思われる』からでした。

既に情報官の任を退く前提であったことに加え、妻の手術を直近に控えた真下は、上から押し付けるように命じられた任務に納得することが出来ずにいました。
その結果、冷静な判断を下すことが出来ず、多くの同僚を殺してしまう『命令』を出すことになるのであった。

 

都内に潜入した武装集団のリーダーは、北朝鮮軍の元エリート将校・ハンであった。
彼は、北朝鮮軍において順調に地位を築いていたのだが、両親が亡命を試みたことによって失脚し、妻と娘とも引き裂かれ強制収容所送りになるのであった。

中国軍の将軍・はそのような状況に陥っているハンに目を付け、亡命に失敗した両親を目の前で殺害しつつ、ハンにある計画の指揮を執るように命じるのであった。
親の仇である崔の命など受けたくなかったが、妻と娘の命を目の前にチラつかされては、進んで協力するより選択肢はなかったのである。

 

ハンと共に都内に潜入した北朝鮮軍兵士は約180名であった。
いずれも特殊な訓練を積み、人を殺すことに何の躊躇を抱かぬ殺戮マシーンではあったが、180名では正面から戦っては勝ち目はなかった。
そこで、ハンは『最終目的=東京壊滅』に向けて様々な手を打つのであった。

  • 羽田空港や成田空港の施設の爆破テロ
  • 錦糸町のマンションを占拠
  • 政府の主要機関へハッキング
  • 核爆弾を持込んだように見せかける車

一方で彼は、崔によって北朝鮮内部の収容所に囚われている妻と娘の救出作戦を、かつての部下に命じていたのであった。

 

真下は初動においてハンの作戦にまんまと掛かり、100名以上の優秀な隊員を犬死にさせることになる。

己の判断を悔やむ真下は、改めて任務に専念することを近い、独自の判断で動く裁量権を求めるのであった。
審議官・影山が、法を楯にして真下に力を預けるのを全面否定するのであったが、首脳陣は最終的に期限を区切って真下に独立チームの結成と独立して動く許可を与えるのであった。

チームを結成し、都内に潜む北朝鮮のシンパを炙り出し、彼らの目的を洗いそうとする真下であったが、しかし、中隊規模の兵指数で『東京壊滅』を宣言するハンの目的が何であるのか不明であり、かつ、『東京壊滅』のための手段も『核』への疑いは捨てきれぬものの、確証を得ることが出来ずにいました。

それでも、僅かな手がかりを元に少しずつハンを追い詰めていく真下は、ついに、ハンの『東京壊滅作戦』を突き止めることに成功するのであった。

 

  • ハンの妻と娘の救出作戦はどうなるのか?
  • ハンの『東京壊滅作戦』とはどのような作戦なのか?
  • 真下はハンの作戦を止めることが出来るのか?
  • 中国軍の崔将軍がハンに東京壊滅をさせる狙いは何処にあるのか?

後半、超大型台風の接近とともに都内に吹き荒れる鋼鉄の嵐・・・
結末は、ぜひ、本書でお楽しみください!

 

『ゼロの迎撃』のおススメ度はいくつ?

おススメ度は75点です。

面白いです。
前作と同じくテンポも良いし、自分的には好みの文章です。 

ゼロの迎撃 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ゼロの迎撃 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 ただ、前作の80点より低くなった理由はあります。

感想の部分でその点について述べてみます。

 

『ゼロの迎撃』読後の感想

読んでいる最中は、初めて知る『日本の国の実態』もあって、大変面白かったです。
前作と同じく、この先どうなるの?
という興味がわき続けて、長編ですが『あっ』と言う間に読んでしまいました。

良かった点と気になった点をいくつかピックアップします。

 

この国のことで知らなかった事が満載

読んで良かったのは、初めて知った日本という国の事情です。

特に、自衛隊が簡単に出動できない訳・・・には愕然としました。

要約)
自衛隊が国内で交戦し、民間の所有物を壊した場合、その賠償をどうするか定かでないでため出動しにくい・・・。

もう、ビックリですよね。何のための防衛力なのかと・・・。

 

ただ、気になって防衛省のHPを見たら、次のように書いてありました。
Q&Aの13問目をそのまま引用します。

Q13
 自衛隊法第88条には補償の規定がありませんが、自衛隊による「武力の行使」により民間人に被害を与えた場合には、損失を補償しなければならないのではありませんか。

(答え)
1  武力攻撃事態における民間被害には、国(自衛隊)の行為に伴う損害のみならず、相手国による損害などもあることから、その補償の取り扱いについては、武力攻撃事態終了後の復興施策の在り方の一環として、政府全体で検討していかなければならない問題と考えています。
2  武力攻撃事態において、自衛隊による武力の行使により民間に被害が出た場合の損失補償については、現行自衛隊法には規定は置かれていません。このため、このような被害についての損失補償請求があった場合には、憲法第29条第3項の適用を検討することとなると考えられますが、この規定は、社会的に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課する場合には正当な補償を要することとしたものと考えられ、武力攻撃事態による被害がかかる特別の犠牲であるか否かについては、個別具体的な事例ごとに判断することとなります。

防衛省・自衛隊:Q&A

上記を読むと、本書で書かれていることよりも、もう少し柔軟に対応出来るように思います。制度が変わったのですかね?

ただ、いずれにしても堅苦しさを感じますが・・・。

自衛隊の存在、自国の防衛、そう言った事を考える切っかけになる1冊です。

 

梶塚首相のような政治家・・・頼むから居て欲しい

中盤、真下の情報分析を元に、自衛隊の各部隊に出動を命じる場面があります。
その命令に対し、あろうことか、拒否する部隊・隊員が描かれています。

最終的には、自衛隊の最高指揮権を担う首相による、冷静かつ熱いメッセージによって『自衛隊員達は奮い立ち』ます。

今の日本の政治家に、残ってますかねこういう人。
普段は昼行灯でもいいから、危機に臨んで化ける人・・・いて欲しいです。


ですが、このシーンは、やはりその危惧はあるのか・・・というショックの法が大きかったですね。
この点も、命令に背くことが出来るのか・・・とネットを調べたら、こんな記事がありました。

www.asahi.com

 

正直、この点は今まで意識したことの無い事なので知識不足です。
なので、今はどうこう書くことは止めておきます。
今後、少しずつ自分なりに勉強してみます。

 

多すぎる登場人物 把握しきれません!

前半から中盤にかけて、武装集団にどう対応するのか何度か会議が開かれています。
この会議の出席者が多いし、肩書きは難しいし、正直、会議の部分は邪魔でした。
誰が誰なのか読んでいて混乱してしまうので、もっと省いて欲しかったです。

 

嫌味な審議官・影山はいずこへ?

自分は表に出ず、行動する人の足を悉く引っ張る最低な人間を、審議官・影山が演じています。
法の番人と言えば聞こえは良いが、それを利用して真下の足を引っ張ることしか考えていません。
多分、読者のほぼ100%が、『最低だ、こいつ!』と呟いたことでしょう。

この影山さん、後半、急にフェードアウトします。
この人のこと、作者は回収し忘れたように思います。
残念です。

 

最後の戦い

真下のチームは、真下の分析に基づいて最後の戦いに臨みます。
4人のチームが3つに分かれて戦うのですが、これがどうにも良くありません。

  1. 戦いの内容が判りにくい
  2. 饒舌になり過ぎた感がありテンポが損なわれている
  3. ハンの最後はちょっと無理があるような・・・

私的にはイマイチでした。

 

この本をおススメする人

  • 前作『生存者ゼロ』を楽しめた方
  • ミリタリー物が好きな方

 

この本をおススメしない人

  • 前作程ではないが、グロいシーンが苦手な方
  • 一方的に北朝鮮や中国が悪し様に書かれているのが嫌な方

 

まとめ

今回も、作者が拘って作られている内容の深さには感服しました。

分厚い1冊ですが、読んで損は無いと思います。

 

ささやかな疑問

最後にふと思った疑問です。

どうして、作者はこの本のタイトルにも『ゼロ』ってつけたのかな?
前作は、なんとなく理解できましたが、近作には今ひとつ噛み合わないような気がします。

 

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