六つの希望 吉祥寺探偵物語(著:五十嵐 貴久)を読んだ!
吉祥寺探偵物語はシリーズ化されていて、この本は3冊目にあたります。
第1弾 消えた少女-吉祥寺探偵物語
『消えた少女―吉祥寺探偵物語―』を読んだ! - lands_end’s blog
第2弾 最後の嘘-吉祥寺探偵物語
『最後の嘘 -吉祥寺探偵物語-』を読んだ! - lands_end’s blog
現在、シリーズは5冊目まで発表されており、今回、3~5冊目まですべて入手したので一気に読むことにしました。
吉祥寺探偵物語第3弾、六つの希望を読み終えたので感想をまとめます。
『六つの希望 吉祥寺探偵物語』のあらすじ
(物語の背景)
バツイチ・子持ち、元銀行員の川庄が主人公である。
妻は若い男と暮らすと言って家を出て行ってしまったが、一人息子の養育費として十分な金を貰っているため、川庄は自宅近くのコンビニでアルバイトをするだけで生計を立てていました。
昼過ぎから18時まで働き、一旦自宅へ戻って息子に夕飯を食べさせる。そして、その後は夜の街へ繰り出す。そして、朝まではしご酒で飲み歩き、息子に朝ご飯を食べさせて学校へ送り出したらしばし休息。
昼前に起床して、コンビニへ・・・。
これが、主人公である川庄の暮らしでした。
この平凡な日々に変化が訪れるのは、川庄が飲み歩いていた店の1つで知り合った人から、「猫探しをしないか?」と持ちかけられたのがきっかけでした。
その猫探しをきっかけに、時々、私立探偵まがいの事をするようになるのでした。
(六つの希望のあらすじ)
川庄が働くコンビニで事件が起きます。
いつも通り、昼過ぎにコンビニへ出勤して仕事を始めます。
昼時のコンビニはある意味戦場のような忙しさです。
そんな店の中に、コンビニには不似合いな格好をした6人が入ってきます。
フルフェイスのヘルメットをした彼らに対して、防犯上の都合からヘルメットを脱ぐように伝えたところ、彼らからは意外な返答があります。
曰く「我々はコンビニジャック犯であり、店員とお客を人質にして立て篭もる」と。
そしてゴルフバックから銃を取り出し、混乱した店内をコントロールするために天井に向かって発砲して人質たちを従わせるのでした。
正社員ではないが古参の店員である川庄は、仕方なくジャック犯たちとの交渉役となります。
その川庄に対し、彼らはさらに不思議な要求をします。
曰く「警察へジャックされたと連絡しろ」と。
意味が判らない川庄でしたが、知り合いの警視庁の夏川刑事に連絡をするのでした。
やがて川庄は、ジャック犯達が金目的ではなく、何かを世間に要求しようとしている老人達であることを突き止めるのでした。
事実、川庄の見立て通り、ジャック犯は警察の交渉人へ5つの希望を突きつけます。
- 寿司やタバコ、そして酒など、簡単には手に入らない嗜好品を寄越せ
- 地元の市長を寄越せ
- ジャック犯達が世話になっている老人ホームの園長を寄越せ
- 数十年前にある場所に住んでいた女性を探して寄越せ
- ある家族を探して寄越せ
犯人の主犯格が元自衛隊員である点や、彼らが銃を所持して立て篭もっているという事実は、彼らが爆弾をとある小学校に設置し、6時までに彼らの要求が聞き入れられなければ爆発させるという脅しに真実味を与えます。
そのため、警察はジャック犯の要求を1つずつ叶えながら人質を少しずつ解放させるのでした。
一方で川庄は、ジャック犯が地元の小学校に爆弾を仕掛けたという話を聞き、一人息子・建人の身を案じて必死に彼らから爆弾を仕掛けた場所を聞きだそうとします。
- 警察は6時までに彼らの要求を叶える事が出来るのか?
- 川庄は爆弾の在りかを聞きだすことは出来るのか?
- 6人のジャック犯で5つの希望・・・あとの1つの希望は何か?
川庄の孤独な戦いの結末は如何に?
本書を読んでお確かめください。
『六つの希望 吉祥寺探偵物語』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は80点です。
ちなみに、1作目と2作目は75点でした。
第3弾も五十嵐作品の良さが全開です。
テンポ良い台詞回し。
パンチの効いたギャグ。
時々、深く考えさせられる台詞もあり。
あっという間に読み終えてしまいました。
『六つの希望 吉祥寺探偵物語』おススメする人
- 吉祥寺探偵物語を読んだことがある人
- 五十嵐作品が好きな人
- テンポ良い小説を読みたい人
- 各キャラクターをきちんと描いた本を読みたい人
『六つの希望 吉祥寺探偵物語』おススメしない人
- ギャグ連発の小説が嫌いな人
- 読む本を厳選する必要がある忙しい人
- こんなの現実にはありえねぇ~とか言っちゃう人
コンビニジャックの仕方、要求の内容、最後の展開・・・
まあ、ありえないですね。
でも、小説だからこそ、その「ありえなさ」を楽しめるのですが。
『六つの希望 吉祥寺探偵物語』の読後の感想
最初から最後まで、井の頭公園のそばにある、川庄が働くコンビニが舞台となって物語は進んでいきます。
場面が変わらないので、誰にでも書けそうな内容と思うかも知れませんが、実はかなりハイレベルだと思います。
ジャック犯や人質、警察や川庄の動きによって、少しずつコンビニの中の様子も明らかになっていき、最後の方では読者自身が、ジャックされているコンビニ店内の様子を頭に思い描くことができる様になります。
1つの場所で起きる事件を見事に描いていると言う点がとても面白かったので、私はシリーズ3作目にしておススメ度80点としました。
もちろん、感じ方は人それぞれなので、手抜きだ!と言う人もいるし、場面が変わらず退屈だ!と言う人もいるようです。
それから、ジャック犯である老人達の要求ですが、全部ではないけども、ハッとする内容もありました。
彼らの世代の親を抱える身として、これから彼らの世代になる身として、考えさせられる台詞が随所に見られました。
作者の五十嵐さんがどこまで意識したかは判りませんが、私は、この本は単なるギャグ満載の笑える小説、または、テンポ良く読める痛快小説、という範疇に留まらず、この本は高齢化を迎える日本社会への一種の警鐘のように感じました。
この本を読み終えたあとに、「近々、両親の顔を見に行こう・・・」と思ったのは私だけでしょうか?
↓おすすめの本と漫画のブログランキングはこちらへ!
↓応援ありがとうございます!