ルーズヴェルト・ゲーム(著:池井戸潤)を読んだ!
7月に入り、列島各地で行われている球児達の熱い戦いのニュースを見ることが多くなってきました。そして、感化されやすい私が手にしたのはこの本でした。
もっとも、この本で取り上げられている野球は社会人野球なので、高校野球とは違いますが、ドラマも面白かったので「野球の面白さを味わえるかな?」と期待しながら読み始めました。
読後の感想をまとめてみます。
- 2分で読める『ルーズヴェルト・ゲーム』のあらすじ
- 10分はかかる『ルーズヴェルト・ゲーム』のあらすじ
- 『ルーズヴェルト・ゲーム』のおススメ度はいくつ?
- 『ルーズヴェルト・ゲーム』の読後感
- ドラマ版『ルーズヴェルト・ゲーム』について
2分で読める『ルーズヴェルト・ゲーム』のあらすじ
青島毅が一代で築き上げた青島製作所の行く末と、高度成長期の社員の娯楽を提供しようと青島が創設した野球部の進退についての物語である。
ガレージ工場から始まった青島製作所は高度成長期の波に乗って年商500億規模の中堅電子部品メーカー会社に成長しました。
しかし、アメリカで起きた金融危機の影響で青島製作所も苦境に立たされます。
メインバンクは融資を渋り、主要取引先からは値下げや減産、さらに納品の前倒しを要求され、あっという間に倒産寸前の状態に追い込まれてしまいます。
そして、青島製作所野球部も苦境に立たされていました。
往年の強さは影を潜め、ライバル会社にも大敗するなど、企業スポーツとしての広告塔としての価値は失墜し、廃部がちらつく状況になっていました。
青島製作所としては、ライバル会社からの合併案を飲んで名前だけを残すことにするか、自分達が誇る技術力で一発逆転を図るしか先はありませんでした。
野球部としては、大規模なリストラを行う以上、野球部の維持に掛かる30億に見合う成果を出すしか野球部の存続を認めさせる方法はありませんでした。
ルーズヴェルト・ゲーム
取られたら取り返す
やられたらやり返す
第32代アメリカ合衆国大統領のフランクリン・ルーズベルトが述べた「一番おもしろいゲームスコアは、8対7だ」という逆転劇に向けて、青島製作所と野球部は戦いの幕を開けるのでした。
かれらの行く末やいかに?
本書を読んでお確かめください!
10分はかかる『ルーズヴェルト・ゲーム』のあらすじ
青島毅がガレージから始めた小さな工場は、一代で年商500億円規模の青島製作所へと成長させます。さらに、高度成長期の波に乗って会社が飛躍を遂げる際に、昼夜を問わず休日返上で働いている社員に対し、せめてもの娯楽を提供しようと思い青島が設立したのが、青島製作所野球部の始まりでした。
電子部品メーカーの中堅どころとして世間に名が知られるようになった青島製作所でしたが、アメリカで起きた金融危機の影響を受けた日本経済の失速を受けて、青島製作所も苦境に立たされることになります。
経営が悪化していることを理由にメインバンクは融資を出し渋り、主要取引先である総合電機メーカー・ジャパニスクは苦境を理由にして減産や値下げを迫りました。さらに、カメラメーカーからは納品予定のイメージセンサーを前倒しで納品しなければライバル会社の製品を導入すると勧告される有様で、まさに八歩塞がりで倒産寸前の状態に追い込まれてしまうのでした。
会社が危機に陥ると時を同じくして、青島製作所野球部も苦境に立たされていました。
社員総出で応援に駆けつけ、その応援をバックに大会で優勝を飾った往年の強さは影を潜めて久しく、打開策として招聘した有名監督も結果を出すどころか電機メーカーのライバル会社であるミツワ電気にも大敗を喫するなど、会社の士気を下げるだけでなく、企業スポーツの役割である広告塔としての存在意義も失い、野球部の廃部が役員会でも話題に上る状況となっていました。
青島製作所の社長細川は、ジャパネスクの諸田に会食に誘われます、その席でライバル会社ミツワ電気の社長坂東を紹介されるのでした。
坂東がこの会席に参加した狙いは、不況下で苦しむミツワと青島が合併して生き残りを図るというモノでした。
思いもよらぬ提案に、細川は猶予を貰い合併案のメリット・デメリットを考えるのでした。
青島製作所野球部は、ライバル会社のミツワ電気に監督を引き抜かれます。さらに監督はチームのエースと4番を一緒に連れて行ってしまいます。
監督不在ではどうにもならないため、青島製作所野球部は伝手を頼って新監督・大道を招きます。しかし大道は高校野球の監督しか経験はなく、社会人野球での実力は未知数でした。そのため、最初はチームをまとめるのに苦労をすることになりますが、やがて、大道の過去データを元にした緻密な計算が、最終的には勝利に近づくと知った部員は大道を認め、団結して新チームで戦っていくことにします。
しかしながら、取締役会でも野球部の存続が話し合われる中、社内リクリエーション大会で素人チームにあわや敗戦を喫する寸前まで追い込まれ、ますます苦境に立たされるのでした。
合併案に頭を悩ます細川でしたが、ミツワ電気の狙いは両社の共闘ではなく「青島製作所の技術」であると思い至り、合併案は拒否するのでした。
しかし、八方塞の状況は日々深刻さを増しており、打開策を見つけないことには遠からず会社の存続が危ぶまれることになってしまいます。
そこで細川は、カメラメーカーに要求されているイメージセンサーの早期納品を目指せないかと開発部長に掛け合うのですが、担当者の回答は「予定通りにしか出来ない」と繰り返すのみでした。
野球部は、社内レクリエーションで野球部相手に快投を見せた派遣社員の沖原に目を付けます。
プロでも通用すると思われる才能の持ち主を野球部所属にするために、監督やマネージャー、そして部長の三上まで尽力します。
一旦は反対勢力によって野球部の願いは潰えるのですが、三上の発想の転換によって目出度く成就します。
苦労して野球部に引き入れた沖原の才能は、早くも試合で証明されます。
大道のデータ野球とエースを手に入れた青島野球部の復活劇が幕を開けると思った矢先に、沖原が起した過去の事件が暴露されます。
高校時代、部活の先輩を殴り退部していたという事実が・・・。
そして、その殴った相手は、今はミツワ電気のエースとなっているのでした。
ミツワ電気からの合併案を、細川社長、笹井専務ともに同意の上で却下したのであったが、ミツワの坂東社長は奥の手を使って合併案を蒸し返すのであった。
青島製作所は青島が一代で築いた会社ではあったが、株主の比率に弱点がありました。それは、創業者の青島が過半数の株を持っている訳では無いということでした。
そこで坂東は、大株主達に対して、未上場の青島株が合併後に上場すればそれ相応の報酬が手に入ると合併案を囁きかけるのでした。
その話に動かされた株主達の要求に応じ、細川は臨時株主総会を開催します。
場の雰囲気はミツワとの合併案へ流れかけるのですが、生え抜きの笹井専務の心の叫びに感化された筆頭株主の女傑城戸が合併反対に回ることで、ミツワとの合併案は正式に否決されることになるのでした。
当面の危機であった合併案を退けた細川であったが、会社の苦境は変わらずであった。
既に大幅なリストラを敢行し、野球部も廃部の方針と決め、主要銀行からの融資を得ようともがく青島製作所であったが、経営の回復の決め手が見出せないのであった。
そんな折に、技術部から一本の内線が入ります。
「ご足労だが開発部まで来て欲しい」と。
野球部は、せっかく手に入れた逸材の沖原がスキャンダルで潰されかけ、再び苦境に陥ります。しかし、監督・スタッフ・チームメイトの助けによって何とか沖原を立ち直らせ、大会へ臨もうとした矢先、会社が融資を受けるために野球部を廃部する方針であると告げられます。
自棄になってもおかしくない極限状態に追い込まれた選手達でしたが、彼らは逆に結束力を高めるのでした。
- 応援してくれる社員のために
- 自分達のために
- 仲間のプライドのために
ライバルであるミツワ電気野球部を倒し、全国大会へのキップを勝ち取ることを決意するのでした。
技術部が細川を呼び出した真相は如何に?
野球部の最後の戦いの行く末や如何に?
ルーズヴェルト・ゲーム
取られたら取り返す
やられたらやり返す
第32代アメリカ合衆国大統領のフランクリン・ルーズベルトが述べた「一番おもしろいゲームスコアは、8対7だ」という逆転劇に向けて、青島製作所と野球部は戦いを始めるのでした。
結末は本書を読んでお確かめください。
『ルーズヴェルト・ゲーム』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は75点です。
↓kindle版はこちら
楽しめる一冊でした。
ただ、後述しますが、当初の目的であった「野球を楽しむ本」としてはイマイチでした。
その点が、80点にならなかった原因です。
『ルーズヴェルト・ゲーム』をおススメする人
おススメする人は以下のような人です。
- 半沢シリーズが大好きな人
- 痛快な逆転劇が好きな人
- 勧善懲悪な話が好きな人
基本的には万人受けする本だと思います。
『ルーズヴェルト・ゲーム』をおススメしない人
おススメしない人は以下のような人です。
- お約束なパターンは嫌いな人
- 野球に全く興味がない人
(知識が無い人ではなく、興味を感じない人)
野球を心底嫌っている人の場合は、読み進めるのがシンドイかも知れません。
『ルーズヴェルト・ゲーム』の読後感
読み終えた後の感想について述べたいと思います。
読了直後の感想は、「イマイチ!」でした。
話としては面白いし、話の展開も無理はありません。
ただ、内容に深みを感じられませんでした。
その主な原因と思われることを2つ取り上げます。
悪役がイマイチ際立っていない!
勧善懲悪の話であるが、悪役の描き方が弱いのです。
会社編としての悪役としては、ミツワ電気の坂東社長とジャパネスクの諸田社長の両社になりますが、灰汁の強さが描ききれていません。
特に諸田もあくどさは出ていません。
強いて言えば坂東に乗せられた株主の竹原はソコソコ描かれていたと思いますが、パンチ力は弱かったです。
それから野球編の悪役としては、沖原が暴力沙汰を起してしまったミツワのエース如月や、青島製作所に砂を掛けて去っていった監督とエース&4番になりますが、これも描かれ方が尻切れトンボ状態で・・・。
読んでいて、「こいつムカつくわ~」ってなるような表現は皆無でした。
そのため、最後の「正義が勝つ」部分のスカッと感が薄くて残念な結果となりました。
野球の表現が物足りない!
野球をモチーフにした小説なのに、野球の1つ1つのプレー描写が薄いのです。
点数やイニング毎の結果については描写されていますが、沖原の投球の凄さや選手達のプレーの良し悪しについては詳細を描いていません。
正直、読んでいて私は不完全燃焼でした。
野球の表現について作者があとがきで記していた
野球の表現に不満を感じていたら、あとがきで作者が理由を述べていました。
それは、「どんなに文章で野球のプレーの見事さを描いても本物には敵わないから・・・」という理由でした。
確かにそうかも知れません。
漫画なら躍動感を様々な方法で描けるけど、文章では難しいのかも知れません。
それでも、野球経験者なら文章から幾らでも想像を膨らませることが出来ます。
またそれとは別に、文章で飯食ってるプロなんだからこそ、誰もが野球の凄さを感じられるような文章を、諦めるのではなくトライして書いて欲しいと思いました。
ドラマ版『ルーズヴェルト・ゲーム』について
誰もがドラマ「半沢」の再現を期待して観たのは、ドラマを作成したスタッフにや演者にとってはやりにくかったと思います。
半沢には及ばないのでコケたように言われることもありますが、平均視聴率14.5%はそんなに悪くないと思うのです。
実際、ドラマを見ていましたが結構面白かったです。
特に、悪役の如月を演じた鈴木伸之の演技は良かったです。
常に人を小馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべた表情は・・・見ていて「こいつだけは痛い目に遭わせてやりたい!」と思わせる怪演でした。
ちなみに、この鈴木さん、先日放映されいた人気ドラマ「あなたのことはそれほど」で有島光軌役を演じていました。
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