モンスター(著:百田尚樹)を読んだ!
百田さんの作品は『永遠のゼロ』を読んでからは意識的に避けてきました。
永遠のゼロがあまりにもインパクトのある内容だったので、しばらく冷却期間をおかないと冷静に他の作品を読めないな・・・と考えていたのが理由です。
だいぶ冷却されたので、この作品にトライしました。
この作品はこの作品でパンチのある作品でした。
読み終えたので、感想をまとめます。
2分で読める『モンスター』のあらすじ
瀬戸内に面した小さな町で生まれた田淵和子が主人公です。
彼女は、二目と見れない酷い容姿の女の子でした。
幼い頃から「ブス」「化け物」と蔑まれてきた彼女は、心も次第に醜くなっていきます。
そんな容姿の彼女も、思春期に入ると人並みに恋をします。
中学時代に憧れた先輩には、意を決して手編みのマフラーを渡しますが、翌日、野良犬の首にマフラーが巻かれたのを見つけるのでした。
高校時代は、会いたいと思っていた幼馴染・高木英介に再会します。しかし、自分の醜さを知っていた彼女は、彼が自分と付き合うには目が見えなければ良いのだと思いつき、カラオケのドリンクにメチルアルコールを混ぜる事件を起すのでした。
事件の結果、家族からも見限られ、名前すらも変えて(鈴原 未帆)東京の短大に放り出されます。
短大でも容姿の所為で苦しみ、就職活動も上手く行きませんでした。
やっと見つけた安月給の仕事をしながら、人生を終えていくと思っていた矢先、彼女の目は1つの広告を見つけます。
「美容整形」
金さえ掛ければ、自分が20数年間苦しんできた容姿から逃れられると知った彼女は、1千万円近くの大金を継ぎこみ、顔だけでなく、性器にまで整形を施すのでした。
道を歩けば、誰もが振り向く姿に返信した彼女ですが、心が満たされることはありませんでした。心の飢えを満たすにはただ1つ、幼少時から憧れ続けた英介と恋をしたいと思うようになります。
決意した彼女は、風俗で稼いだ億単位の金を元手に地元に高級レストランを開業します。
オーナーの美貌とシェフが作る料理は、街の人々をレストランへ誘い込みます。
しかし、和子が来店を待っているのは、たった一人の町民・英介でした。
そしてついにその日がやってきます・・・。
この先は、是非本書を読んでお楽しみください。
10分は掛かる『モンスター』のあらすじ
瀬戸内に面した小さな町で生まれた田淵和子が主人公です。
彼女はこの世のものとは思えない形容し難い容姿の女の子でした。
幼少期に迷子になった際、自分を励まし守ってくれた男の子がいました。彼はその後ほど無くして別の街へ引っ越してしまい、会うことはなくなるのですが、彼女はいつか彼と再会することを心に秘めながら成長していきます。
小学生は幼児期とは比べ物にならないほど言語能力は上がります。しかし、精神年齢は低いままのため、級友(特に男子生徒)からは酷い侮蔑の言葉を投げ掛けられます。「ブス」「化け物」と蔑まれて続けた彼女の心は、容姿同様に醜く歪んだ物へと変化していくのでした。
容姿が酷い彼女でしたが、思春期に入ると人並みに恋をします。
中学時代に憧れた先輩には、意を決して手編みのマフラーを渡しますが、翌日、野良犬の首にマフラーが巻かれたのを見つけるのでした。
高校時代は、まさかの奇跡が訪れます。
幼児期に自分を守ってくれた幼馴染・高木英介と偶然再会します。
しかし、自分の醜さを知っていた彼女は、彼が容姿が酷い自分と付き合うには彼の目が見えなければ良いのだと思い、級友達と遊びに行ったカラオケで提供されるドリンクにメチルアルコールを混ぜる事件を起すのでした。
事件自体は不起訴となりますが、本物のモンスターとなった和子はついに家族からも見限られてしまいます。名前も田淵和子から鈴原未帆へと改名させられて、東京の女子短大に放り出されてしまうのでした。
短大では表向きは侮蔑の言葉を投げ掛けられることはありませんでしたが、合コンなどでは一種の見世物状態とされていました。
もちろん就職活動においても、上手く行くはずもなく、人生において「容姿」がどれだけ重要なのか思い知らされる日々が続きます。
やっとの思いで見つけた仕事は安月給で、ただ生きていくに十分なだけでした。
部屋と職場の往復で人生を終えていくのだと思い詰めていた矢先、彼女の目は1つの広告を見つけます。
「美容整形」
恐る恐る訪れた整形外科で、自分が20数年間苦しんできた容姿を変えることが出来ると知った和子は、次々と顔のパーツを整形していきます。
鼻、口、瞼、目尻、頬骨、ついには性器の色や形まで変えることになります。
彼女の変身に費やした額は1千万円近くにもなりました。
その大金は、当然、普通の仕事で得られるものではなく、身体を売る以外に方法はありませんでした。
整形を始めたばかりの頃は、酷い容姿は変わらないので多くの風俗店で断られ、SM等の過激なプレイをする仕事しか出来ませんでした。しかし、整形を繰り返すうちに店のランクも上がり、一晩で稼げる金額は飛躍的に増えていきました。
道を歩けば、誰もが振り向く美人に変身した彼女は、多くのイケメンや金持ちと付き合うようになりますが、彼女の心が満たされることはありませんでした。
男とのセックスは全て整形のためであり、そこに愛情は感じなかったのです。
そんなある日、ホームで線路にハンドバックを落としてしまいます。
偶然その場に居合わせた大橋信夫が拾います。いたずら心を持った彼女は大橋をお茶に誘うのですが、彼は彼女が付き合ってきた男達とは違い、ごく普通のサラリーマンでした。
到底、付き合うことになるはずもない2人でしたが、紆余曲折を経て大橋と結婚することになります。しかし、整形を繰り返してきた彼女の身体は、もはや専業主婦として動くことは難しい状態になっていました。
やがて、大橋の不倫が発覚し、離婚することになります。
離婚した和子の心の飢えを満たすのはただ1つ、幼少時から憧れ続けた英介と恋をすることしかないと思うようになります。
英介は大学卒業後に地元の企業に就職し、結婚して子供も授かり幸せな家庭を築いていました。最初の英介の所在を確認した際、彼はニューヨークに赴任していました。
興信所には彼が赴任先から日本へ戻ったら知らせるように依頼していたところ、彼が地元の街へ戻ったと連絡が入ります。
長年の思いを果たす決意をした彼女は、風俗で稼いだ億単位の金を元手に、地元に高級レストランを開店するのでした。
小さな田舎町に出来た高級レストラン。
オーナーは田舎では決してお目にかかれないよう美貌の持ち主。
シェフはかつて高級ホテルで腕を磨いた実力者。
娯楽の無い田舎町で、彼女のレストランが話題になるまでそれほど時間は掛かりませんでした。決して安くない値段設定でしたが、街の人々が続々とレストランを訪れるようになります。
しかし、和子が来店を待っているのは、ただ一人の町民・英介でした。
そしてついにその日がやってきます・・・。
この先は、本書を読んでお楽しみください。
『モンスター』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は75点です。
面白い小説でした。
自分の知らない世界を覗けたことも良かったです。
ただ、ちょっと主人公が変身していく様が生々しくて気持ち悪さも感じました。
『モンスター』をおススメする人
この本はかなり読み手を選ぶような気がします。
- 生々しい表現(性描写も含む)が好きな人
- 虐げられた人間の復讐が好きな人
- 整形を肯定的に捉えられる人
『モンスター』をおススメしない人
以下の2点にご注意を!
- 生々しい表現(性描写)が嫌いな人
- 虐めや差別の話が嫌いな人
『モンスター』の読後感
自分の知らない世界(整形)の話という事もあり、かなり興味をもって読むことが出来ました。
基本的には面白かったのですが、得点は75点止まりになりました。
読み終えた感想を3点取り上げます。
強烈なまでの美醜への追及は理解し難い部分がある
主人公の和子だけではなく、彼女が整形費用を稼ぐために働いていた風俗店の女の子達の多くが、程度の差こそあれ整形をしている描写があります。
正直、顔や身体にメスを入れてまでも美しく整形したいと願う気持ちは自分には判りませんでした。
一方、私は背が低いです。視力もほぼ弱視に近いです。
もしもこの欠点を手術で改善出来るなら(視力はレーザーとかあるけど)、考えるかも知れないなぁ・・・とは思います。
人間がどれだけコンプレックスの塊なのか・・・
それを思い知らされる一冊だったように思います。
人は誰でも必ず幸せを掴むチャンスがある
どんなに苦しい人生を送って来た人にも、神様は平等にチャンスを与えてくれるのだと思いました。
整形を始めた頃の和子は、身体を売ろうとしても醜い容姿のために雇ってくれる店がない状況でした。
そんな折に出会った風俗店の元締め・崎村は、和子の人生における「幸せを掴むチャンス」を与えてくれた人だったと思います。
和子が働いている店に崎村が客として訪れて自分を抱いた時に、今までのセックスでは乾いた砂漠のような感情しか抱かなかった和子の心に「恥かしい」という感情を抱かせます。
さらに、和子が地元の町でレストランを経営している時に、フラッと店を訪れた崎村は和子に求婚するのでした。
醜い姿の和子を、
今の美貌を得る為に何をしたのかを、
全てを知った上で「故郷へ戻るけど一緒に来ないか?」と誘った崎村に、和子は心を揺さぶられます。
最終的に和子は英介を待つと決意しますが、この時の和子の感情の揺れ、心の葛藤は、「モンスター」ではなく「1人の恋する女性」だったと思います。
和子の人生にとって、最初で最後の温かい幸せを得るチャンスを断ったからこそ、その後の和子の人生を読んでいて余計に辛く感じました。
解説の中村さんは整形の描写がリアルと褒めるが・・・
本書の最後に、中村うさぎさんの解説があります。
その中で彼女が整形について書いている記述があります。
「世の中の多くの小説では、整形に描写が稚拙でリアリティに欠ける」と。
その点、この「モンスター」における整形の描写は秀逸だったと褒めていました。
この先、ちょっとネタバレあります。
中村さんの記述を読んで、自分が点を抑えた理由がハッキリしました。
それは、和子の死因に繋がるくも膜下出血の描写が惜しかったからです。
私はこのブログでも書いているように、昨年、脳動脈瘤の手術を受けました。その過程で多くの症例に触れる機会がありました。
その実体験を元にすると、余りにも脳動脈瘤の扱いが雑でした。
まあ、私が被験者だからそう思うだけで、そう思わない人の方が多いのかも知れません。
それでも、その雑さにガッカリした分、評価が下がってしまいました。
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