lands_end’s blog

未破裂脳動脈瘤との闘いをコーギーに癒され暮らしています。鹿島アントラーズの応援と読書に人生の全てを掛けている40代の徒然日記です。

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『山女日記』を読んだ!



山女日記(著:湊かなえ)を読んだ!

重松さんのルポルタージュのあとに選んだ本本は、湊さんの短編小説でした。
8つの短編で構成されたこの本ですが、それぞれの短編の主人公が繋がっており、ひとつの長編小説とも言える内容です。
もっとも、読み始める前は「最近流行っている山ガール」を主役にした湊サスペンスなんだろう・・・とトンチンカンな予想をしながら読み始めたので、しばらくの間は頭が「???」となっていました。

読み終えたので、感想をまとめます。

 

『山女日記』のあらすじ・・・と言うか各章の紹介

8つの短編で構成されている本なので、全体のあらすじではなく、各章毎の紹介をします。

 

「妙高山」

新潟県妙高市にある標高2,454mの火山。日本百名山。

妙高山 | 妙高市観光協会

丸福デパートに勤務する江藤律子が主人公である。

デパートで催されていたアウトドアフェアで、気に入った登山靴があり購入したのが登山のきっかけであった。
同期の女子社員、舞子と由美の3人で登るはずが、舞子は当日体調不良でキャンセルとなり、それほど馬の合わない由美と2人で登ることに・・・。

律子は近々結婚を控えていたのですが、相手の家族との関係に迷いを感じ、このまま結婚していいのか悩んでいて、何かを探したくて登山をすることにします。
ちなみに由美は、律子が仲人を頼んでいる上司と不倫関係にあり、それを知っている律子はモヤモヤを増幅させながら登ることになります。

  • 律子の悩みは解決できるのか?
  • 律子と由美の関係はどうなるのか?

答えは本を読んでお確かめください。

 

「火打山」

新潟県糸魚川市と妙高市にまたがる標高2,462mの山。日本百名山と花の百名山の1つ。

火打山 | 妙高市観光協会

老人ホーム事務員・美津子が主人公である。

独身のまま40代を迎えたバブル世代の美津子は、意を決してお見合いパーティーに参加します。そこで、山好きの男・神崎と出会います。彼は登山靴を美津子にプレゼントして、一緒に山登りに行くことを約束します。

登山当日、経験者として神崎はアレコレと美津子の世話を焼くのですが・・・。
美津子は神崎に黙っている過去の経験がありました。

  • 美津子の過去の経験とは・・・?

彼らのその後は本書を読んでお確かめください。

 

「槍ヶ岳」

長野県松本市・大町市・岐阜県高山市にまたがる標高3,180mの山。日本で5番目に高い。日本百名山と花の百名山の1つ。

槍ヶ岳・穂高岳 – 登山・高原メインスポット - 松本市公式観光情報ポータルサイト 「新まつもと物語」

幼き頃に父と始めた登山を30過ぎても続ける牧野しのぶが主人公である。

しのぶの登山人生において2回チャレンジしたが、どちらもアクシデントで登頂を果たせなかった「槍ヶ岳」への挑戦が物語の舞台となる。

1度目の失敗は大学のサークルで仲間が怪我をして・・・
2度目の失敗は父と登った際に父が体調を崩して・・・
3度目は誰にも邪魔されないように独りで登り始めるしのぶでしたが、途中で出会った年配の男女の登山客と一緒に登ることになる。

優しそうでいて、実は無神経で失礼な年配の男性と、頑固で若年の言うことを聞こうとせず小言を並べる年配の女性、彼らとの同行を後悔していたしのぶでしたが、彼ら2人の真の関係を知って、自分の狭量な心を反省するようになります。

  • しのぶに己の心を省みさせることになった同行者の関係とは?

本書を読んでお確かめください。

 

「利尻山」

北海道の利尻島に位置する標高1,721mの山。日本百名山と花の百名山の1つ。

利尻山/利尻島観光案内

都落ちし、翻訳家と言えば聞こえは良いが仕事は殆ど無く、実家の農作業を手伝いながら年老いた父親の年金で養ってもらっている宮川希美が主人公である。

妹の自分とは違い、医師と結婚し子供も授かり、常に自分を見下すような言動をする姉から誘われた登山を、なぜかOKする希美。

宮川家の伝統どおり、この日のお出掛けも雨となった。
姉と小学5年の姪と3人で登り始めた希美は、どうせどこかのタイミングで姉から「仕事しろ」「自立しろ」など上から目線で言われると身構えていたのであったが・・・。

姉の口から語られたのは予想外の話であった。

  • 姉が語ったその内容とは?

本書を読んでお確かめください。

 

「白馬岳」

長野県と富山県とにまたがる標高2,932 mの山。日本百名山と花の百名山の1つ。

白馬村観光局-登山モデルコース

前章の利尻山で希美を山登りに誘った姉が主人公である。

とある事情を抱えながら、娘の七花と妹の希美と共に今回は白馬岳に挑みます。
途中、強風に煽られると互いの身体をロープで結び、娘の身を案じる母の目に映ったのは、自分が想像している以上に逞しく成長し、独りで大地を踏みしめて歩く娘の後姿でした。
その姿を写真に収めた彼女は、その写真をある人に送信するのでした。

  • シャメの送り先は誰なのか?

本書を読んでお確かめください。

 

「金時山」

神奈川県と静岡県にまたがる箱根山を形成する山の1つ。標高1,212m。

金時山トレッキング|箱根町観光協会公式サイト 温泉・旅館・ホテル・観光情報満載!

第1章の「妙高山」に律子と由美と3人で登る予定にしていたのにドタキャンした舞子が主人公である。

舞子は、妙高山に登った2人の間に「ある種の絆」が芽生えていることに対し、少しの苛立ちと嫉妬を感じていた。

そんなある日、付き合っている売れない劇団員の彼氏から、山登りに誘われます。舞子は学生時代にバレーボールに打ち込み全国制覇を本気で目指していたので、やるならば日本一を目指すのが信条です。そのため、山登りもするなら日本一の富士山へ!と思っていたのですが、彼氏が連れ出した山は日本一の高さには程遠い山でした。

  • 彼が舞子に見せたかったモノは?
  • 舞子の心に何か変化は生まれるのか?

本書を読んでお確かめください。

 

「トンガリロ」

ニュージーランドの北島に位置する山岳国立公園の名前。ちなみにトンガリロ山は標高1,967 m。

トンガリロ国立公園 | ニュージーランド

宮川希美の友人である山ガールから絶大な人気を得ている帽子職人の立花柚月が主人公である。

卒業後、旅行会社に勤めていた時代に付き合っていた彼氏・吉田と15年前に行ったトンガリロトレッキングに、彼女は15年の年月を経て再びやって来たのであった。
人生で最も楽しかった「誰かと過ごした」日々からの決別を目指した柚月であったが、同じツアーに参加していた新婚旅行中の神崎夫妻や、山仲間と参加していた牧野しのぶと知り合い、彼らと親しくなるにつれ、自分の存在意義を見出していきます。

柚月の心の変化を、本書を読んでお確かめください。

 

最終章「カラフェス」

長野県松本市にある穂高岳の東側に広がる、氷河期に出来た渓谷で開催されるフェスティバル。2年に一度開催されている。
山と渓谷社のHP 2016年版

ヤマケイ涸沢フェスティバル2016

再び宮川希美が主人公である。

利尻、槍ヶ岳登山から数年たち、姉夫婦との登山が減ってしまったことで「山仲間」を探している彼女
「山女日記」というウェブサイトを見ていたときに、「クマゴロウ」なる女性の書き込みに書かれていた「カラフェス」へ参加することいします。
そこで知り合った「クマゴロウ」こと熊田結衣と意気投合し、一緒に山を登る仲間となるのでした。

希美の心の機微に、本書を通して触れてください。

 

『山女日記』のおススメ度はいくつ?

おススメ度は75点です!

山女日記 (幻冬舎文庫)

山女日記 (幻冬舎文庫)

 

1つ1つが独立した章になっていますが、その章毎の主人公が別の章の主人公の行き方にちょっとした影響を与えることもあり、長編小説としても楽しむことができます。

 

『山女日記』をおススメする人

  • 山登りが好きな人
  • 自然と向き合うのが好きな人
  • 自然の中で人が己の何かに気付く瞬間があることを知ってる人
  • 人間関係が細い線で繋がっていくことに美しさを感じる人

 

『山女日記』をおススメしない人

  • 湊作品はミステリー小説でなければ読みたくない人
  • 山登りはしたくもないし、読みたくもない人
  • 短編小説はその後が気になりすぎて好きになれない人

 

『山女日記』の読後の感想

山登りは嫌いではありません。
登っている時「異様なまでに無心になれる」のは好きです。
それと「戻ってきた時の何か置いてきた感」も好きなんです。
ちなみに「何かを達成した感」ではありません。

でも、下りがダメです。
学生時代に部活で痛めた膝が、どんなに気を付けて歩いても悲鳴を上げます。
登って降りてくることは出来ても、その後1ヶ月以上は足に痛みが残るため、医者からも止めるように言われました。

そのため、もう10年近く登っていません。
それでも、山登りをする人の気持ちは判ります。
それゆえ、それなりにこの本は楽しんで読むことが出来ました。
ですが、山登りに全く興味がない人が読むと、この本の良さは半減なんだろうなぁ~と思います。
単なる、人の心の変化を楽しむ本になってしまいそうですね。

それから、男目線ではなかなか良さを感じ辛いです。
たぶん、男の読者と女の読者では、良さのポイントは違うと思います。

それと、作者の湊さんは第4・5、及び最終に登場する宮川希美がお気に入り?なのではないかと思います。自分自身に照らし合わせているのか判りませんが・・・。

 

自分的には一番楽しめたのは「トンガリロ」

先に書いたように、男目線でもそれなりに楽しめたのは「トンガリロ」でした。
主人公の柚月の女々しさが、男の恋愛感に共通点があるように感じたからです。

男は過去の恋愛を引きずります。
元カノと行った場所、観た景色、食べたモノ、様々な思い出を後生大事にしまいこんで時々箪笥から引っ張り出して思い出に浸ります。

一方、女性の人は違うと思います。(あくまでも私個人の感想です)
女性の方は過去の恋愛を綺麗に上書きすると思っていただけに・・・。
昔の男との楽しい記憶を呼び覚ます旅に出るとは・・・思いもしませんでした。

こんな感じの男目線で共感できたので、「トンガリロ」が最も面白い話になってしまいましたが、女性読者の意見は違うのだろうなぁ・・・。

 

テレビドラマも見てみたくなった

2016年にNHKBSプレミアムで放送されたそうです。

www.nhk.or.jp

 

本を読んでいて、描かれている人間模様は面白かったですし、何よりNHKならお金掛けて映像作るので、きっと見応えのある山の景色が観れたのだろうなぁ・・・と思うと、見逃したので残念です。

再放送やらないかなぁ。

 

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