クレィドゥ・ザ・スカイ(著:森博嗣)を読んだ!
この巻は「スカイ・クロラ」シリーズとして刊行されいている長編作品としては最後の巻(2018年8月現在)となります。
最後の巻ではありますが、シリーズの時系列では、第1作目の「スカイ・クロラ」の前に当たります。
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ちなみに前作の「フラッタ・リンツ・ライフ」では主人公がクリタでした。
前作の最後は、クリタが不時着した飛行機から奇跡的に這い出したものの意識を失い、その後、収容された病院で意識を取り戻したところで話が終わっていました。
10年前にこのシリーズを初めて読んだ時は、数々の謎を抱え込んで消化不良のまま、悶々としながら読み始めたことを覚えています。
前作があんな終わり方なのだから、まあ、その続きが描かれるだろう?
しかし、この「スカイ・クロラ」シリーズのゴールはどうなるのか?
さて、結末は・・・
『クレィドゥ・ザ・スカイ』の感想をまとめます。
『クレィドゥ・ザ・スカイ』のあらすじ
本書も主人公は「僕」の表記で書かれています。
この「僕」が、本書では最大の謎になる訳で、正直、この「僕」に関わる事象を書かないとあらすじになりません。
つまり・・・
ネタバレ注意!
と言うことになります。
未読の方は、くれぐれもご注意下さい。
<はじまり>
病院で意識を取り戻した「僕」は、脱走してとある女性に電話をします。
女性は「僕」から電話があったことを喜び、車で迎えに来てくれます。
<フーコと僕の逃避行、そして別れ>
気がつくと「僕」はフーコが働く店にいました。
そして、1人暮らしを始めていたフーコの家に転がり込みます。
「僕」を匿おうとするフーコは、思案の末、僕と共に当てのないドライブに出ることにします。
2人は夜通し走り続け、見つけたモーテルに宿を取ります。
ふと僕は「電話を掛けたくなり」、フーコにお金を貰い公衆電話に向います。
電話先の女性は「1人で自分の所へ来るよう」と僕に告げます。
その女性は、僕が入院していた時に「見舞い」と称して訪ねて来たのでした。
彼女は、以前、僕に銃を突きつけたことを詫びるのですが、記憶が混乱している僕は何のことか思い出せませんでした。
あの時、彼女は立ち去り際に僕に連絡先を渡し、その際、注射を打ったのでした。
彼女との電話を終えて部屋に戻った僕は、フーコに別れを告げて1人で向かうことにします。
<夢と現実に途惑いつつも逃げた先で・・・>
フーコと別れ、一人で列車に乗ったはずが、目を覚ますとフーコが目の前にいました。
一緒に行けるところまで・・・と言う彼女と共に、目的地の駅に着いた僕は、フーコを残して公衆電話に向います。
電話を掛けようとすると、誰かが電話ボックスに乱入してきました。
よく見ると、その乱入者はクサナギでした。そして、僕は彼女に拳銃で撃たれます。
目を覚ますと、僕は列車に居ます。フーコは居ません。
全て僕の夢だったようです。
目的の駅に着くと、サガラ・アオイが僕を迎えに来ていました。
彼女の車で彼女の山小屋に向います。
なんと、彼女の家には格納庫があり、中には僕が慣れ親しんだ飛行機がありました。
夜、サガラの元へ1人の新聞記者が訪ねてきます。
僕は見つからないようにロフトに隠れて、彼らの話を聞いていました。
記者は、先日の大きな戦闘でクサナギが戦死したこと、また、クサナギがクリタを撃ち殺したことを話していました。
<クサナギの亡霊と僕の正体、そして逃避行ふたたび>
サガラは僕を街の精神科医の元に連れて行きます。
診察後、サガラの家に帰ろうとすると、彼女の車が不審な男達が見張っているのに気付きます。そこでサガラと僕は別々に行動し、見張りを巻こうとします。
1人で逃げていると、突然、僕の前にクサナギが現れます。
そして、クサナギは「僕」を「カンナミ」と呼びます。
クサナギは自分を銃で撃て、そうすればお前は逃げることが出来ると言います。
混乱した僕は目を瞑ります。
しばらくして目を開けるとクサナギは居ませんでした。
どうやら昼間から幻覚を見たようでした。
どうにか追っ手を振り切ったサガラと合流し、彼女の家に戻ります。
しかし、家の上空を不審なヘリが旋回しており、既に、家にも追っ手の目が及んでいるようでした。
捕まるわけにはいかない僕らは、サガラの家に火を放ち、サガラが格納庫に保管していた航空機を飛ばし、サガラの仲間の隠れ家まで逃避するのでした。
隠れ家についた僕は、そこでも再びクサナギの幻覚を見ることになります。
<ふたたびパイロットへ。そしてサガラが語る僕の秘密>
隠れ家に合流するはずだった、街の精神科医が来ません。
どうやら、捕まったようです。
彼の口からこの隠れ家が見つかるのも時間の問題だと考えたサガラの仲間は、別の隠れ家に移動することにします。
1機だけ格納庫に保管していた散香を移送する役を誰が担うのかで揉めていたので、僕は立候補します。
引越しの準備を急ピッチで進めていたのですが、移動を開始する前に、敵がやって来てしまいます。敵は2機の爆撃機まで同伴していました。
僕は散香で飛び立ち、2機の爆撃機を撃墜します。そして、援護にやって来た2機の戦闘機も撃墜するのでした。
僕は4機撃墜の戦果を挙げますが、サガラの仲間は全滅していました。
仕方なく、元の場所に散香を着陸させた僕は、兵士に取り囲まれます。
連行されるのかと思っていたら、1人の女性が僕の前にやってきます。その女性は甲斐でした。彼女は、僕が再びパイロットとして戦えるように手配することを約束してくれたので、僕は基地に戻ることを約束します。
甲斐から、隠れ家に残っているのはサガラだけだと聞き、僕はサガラを説得することにします。
1人で隠れ家に入り、サガラを見つけ出します。
投降するように説得する僕に、サガラは「ある秘密」を「僕」に語ります。
彼女が言うには、病院で別れ際に彼女が打った注射により、僕が再び「キルドレ」に戻ったと言うのです。
混乱している僕にサガラは銃を渡してこう言います。
これで自分を殺してくれ。と。
僕は、彼女の望みを叶えてやるのでした。
隠れ家から出た僕は、ずっと僕の頭を覆っていたモヤが晴れていることに気付きます。そして、甲斐の車に乗って、僕の居るべき場所へ向うのでした。
<僕はクサナギであり、カンナミであり・・・>
パイロットに復帰した僕は、ある日、基地の外で1人の記者に会います。
彼はサガラの家を訪ねて来た記者でした。
彼は、半年前に国境地帯で4機の飛行機が撃墜された事件の事を知っていました。そして、撃墜した人はクサナギだと僕に告げます。
ところが暫くしてから、彼は僕を「カンナミ」と呼び、ブーメランのキーホルダーを渡します。
そして、「僕はあなたの・・・」と言いかけて口をつぐみ、去っていったのでした。
空を飛ぶのに不要な「モノ」を持っていたくない僕は、もらったキーホルダーを川へ投げ捨ててしまいます。
BOOKデータベースの紹介文
amazonなどで書籍の紹介に使われている「BOOK」データベースによる内容紹介は以下の通りです。
ここにあるのは、空気、二機の飛行機。そして、見つめ合う目だ。
今回の内容紹介は謎過ぎます。全巻読み終えた後でもしっくりきません。
『クレィドゥ・ザ・スカイ』のおススメ度はいくつ?
「スカイ・クロラ」シリーズは、単体での採点が難しいので、今までの感想文とは異なり、3パターンで採点していました。
しかし、この巻に関しては、おススメ度は以下のように採点しました。
おススメ度は・・・採点不可能!
個人的な考えになりますが、絶対にこの巻だけを読むのは止めるべき!
第1作から4作まで読んでこそ、この巻の意味判るのだと思います。
完璧に判るかどうかは保障しかねますが・・・。
もう一度書いておきます。
この巻だけを読んではいけません!
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『クレィドゥ・ザ・スカイ』をおススメする人、しない人
おススメ度で書いたとおり、この巻だけを読むのは止めた方がいいです。
それを前提に、おススメする人は・・・
- 森作品なら無条件で読みたい人
- 時間をとってこの本を読める人
- 航空専門用語の多用に耐えて読みきれる人
逆におススメしない人・・・
- スカイ・クロラシリーズを1冊も読んでいない人!
『クレィドゥ・ザ・スカイ』を読み終えて感じたこと
読み終えて感じたことをまとめます。
1回目に、シリーズ第5作を通して読んだ時は、まったく完結した気分にはなれませんでした。
正直、内容自体も面白みを感じず、2度目は無いと思っていました。
しかし、入院している時に時間が余りまくったので、もう一度、6冊を読んでみたら理解できるかも知れないと思い手にしました。
その結果は・・・ホンの少しだけ、面白みがわかった程度です。
しかし・・・
「スカイ・クロラ」シリーズの事を記事にまとめている人は、たいてい絶賛している記事が多いと思います。
残念ながら、先輩諸兄の記事を読んでも、自分には「良さ」がピンときませんでした。
ところどころ、オッ!と思う考察はありましたが・・・。
多分、全体を通して「内容についての悩ましさ」が強くて、スカイ・クロラの世界に没頭することが出来なかったのが原因だと思います。
正直、否定的な記事を書いても意味があるのか悩んだのですが、自分的には面白く感じられなかったことを正直に記しておくのも必要かと思い、記事にまとめました。
これが、シリーズを2回読み終えた後の正直な気分です。
タイトルの英語表記『Cradle the Sky』の意味と表紙の詩について
タイトルは『クレィドゥ・ザ・スカイ』。
英語では『Cradle the Sky』。
今回の訳は難しい・・・。
Cradleは動詞でもあり名詞でもあり、揺り篭とか、育てるとか、発祥地とか・・・
あ!
「ソラの生まれた場所」
ってのはどうでしょうかね?
第5作目の表紙の詩は以下の通りです。
誰でもいいから。
破壊しなければ。
自由はつかめない。
この詩を読んで、最終巻である5巻目は「キルドレの生存原理」が書かれた本だったのかなぁ?と思いましたが・・・どうでしょうか?
『スカイ・クロラ』シリーズの各感想文
シリーズを刊行順に並べると以下の通りです。
- 「スカイ・クロラ」 The Sky Crawlers
- 「ナ・バ・テア」 None But Air
- 「ダウン・ツ・ヘヴン」 Down to Heaven
- 「フラッタ・リンツ・ライフ」 Flutter into Life
- 「クレィドゥ・ザ・スカイ」 Cradle the Sky
- 「スカイ・イクリプス」 Sky Eclipse
現在、記事にまとめ終えたのは、第1作目~5作目まで。
お時間がありましたら、是非、覗いて見てください。
「スカイ・クロラ」の感想文はこちらから
「ナ・バ・テア」の感想文はこちらから
「ダウン・ツ・ヘヴン」の感想文はこちらから
「フラッタ・リンツ・ライフ」の感想文はこちらから
全6冊のスカイ・クロラシリーズの感想文も、残りは外伝的存在の『スカイ・イクリプス』だけとなりました。
追記:『スカイ・イクリプス』の感想もまとめました!
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