スカイ・クロラ(著:森博嗣)を読んだ!
先日、古本屋で本を物色している時に、この本を見つけた。
かつて、映画を観たことがあったので、タイトルが目に止りました。
森さんの作品は、有名な『すべてがFになる』はかつて読んだことがあります。しかし、ガチガチの文系脳である私には、森さんの文章は難解すぎました。
映画スカイクロラの内容にはそれほど共感しなかったのですが、飛行中の映像がとても綺麗だったので、原作を手にして読みました。
・・・正確には、眺めた!と言うべきかも知れません。
難解すぎて、ほとんど理解できず、すぐに売ってしまいました。
映画はいつ観たのかなぁ・・・と思いスマホで調べたら、2008年8月でした。
ちょうど10年前のことでした。
区切りの10年と言うのも何かの縁だし、なにより10年分年取った自分なら、少しは理解できるかも知れないと思い、改めて購入して読むことにしました。
『スカイ・クロラ』を読み終えましたので、感想をまとめます。
『スカイ・クロラ』のあらすじ・・・みたいなモノ
いつもは、最初にあらすじをまとめています。
でも、この第1作目の「スカイ・クロラ」のあらすじをまとめるのは、読みながら無理だと感じました。
なぜなら、あらすじをまとめるのに必要なポイント(起承転結)がぼやけ過ぎていて、まとめようが無いのです。
なので、あらすじと言うより簡単な内容紹介としてまとめました。
『スカイ・クロラ』の簡単な紹介
欠員補充でとある基地に配属されたカンナミ・ユーイチが主人公であり、第1巻『スカイ・クロラ』は、カンナミの視点で語られています。
カンナミは戦闘機パイロットであり、彼の日常は、待機と平穏、そして殺し合いの日々であった。
物語は、同室のトキノ(パイロット)、整備士の笹倉、そして上司でありパイロットでもあるクサナギ・スイトと織り成す、カンナミの日々の生活を淡々と綴ったものです。
その物語のポイントとなるのは以下の5点です。
- 永遠の命をもった子供(キルドレ)とは?
- 決して死なない命とはどういうこと?
- 繰り返す人生とはどういうこと?
- 出会う人々がカンナミをクリタの代わりだと言った理由は?
- クサナギは本当にクリタと言う人物を射殺したのか?
物語のクライマックスでは、自ら死ぬことの出来ないクサナギは、カンナミに自分を射殺するように命令します。
命令を受けたカンナミは・・・。
第1巻では、多くの不明な点や謎などを回収せず、読者の心にモヤモヤを残したまま、物語は終焉を迎えます。
『スカイ・クロラ』の「BOOK」データベースからの引用
amazonの書籍紹介に使われている「BOOK」データベースによる内容紹介は以下の通りです。
僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供
正直、この紹介を読んで、本書を読む前に中身をイメージすることは絶対に不可能だと思います。
ただし、1度でも読み終えた後だと、なぜかスッと心に沁みる紹介文です。
『スカイ・クロラ』のおススメ度はいくつ?
採点はとても難しいです。
なので、3パターンで採点します。
●物語の背景や世界観を全く知らずに読んだ場合
おススメ度は40点!
正直、残される謎が多すぎて、途中で読書を放棄する人が多いと思います。
●多少、物語の背景や世界観を知って読んだ場合(ただし未読)
おススメ度は55点!
やっぱり、???な点が多すぎて、読むのが苦痛になると思います。
●シリーズ6冊を1度読みきったことが有る場合
おススメ度は75点!
シリーズ6冊を全て読みきった上で、あらためて『スカイ・クロラ』を読めば、書かれている様々な仕掛けがスッと頭に入ってきて、「あぁ、そう言う事だったのか・・・」となるはずです。
それでも、しっかりと理解するには難解な内容です。
なぜなら、物語があまりにも淡々と進むので、意識して読んでいないと、肝心な部分を読み飛ばしてしまうからです。
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ちょっと値段は高いですが、綺麗な空です。
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『スカイ・クロラ』をおススメする人、しない人
おススメする人は次の4点のいずれかに合致する人です。
- 森作品なら無条件で読みたい人
- しっかりと時間をとって小説を読める人
- 理解出来ない専門用語が多用されても、ある程度流して読める人
- 1度、シリーズ6冊を読みきった人。
逆におススメしない人は、上記4点に該当しない人です。
何にせよ、読みきるには忍耐が必要だと思います。
『スカイ・クロラ』を読み終えて感じたこと
冒頭に書いたように、私は10年のブランクがありますが、読むのは2回目です。
2回読んで多少なりとも「スカイ・クロラ」の世界観を理解できたのは嬉しいのですが、2回読んだ時間はそれなりの時間になるわけで・・・、正直、価値があったのか、勿体無かったのか、何ともいえません。
2度、読んだ上で、感じたことをまとめておきます。
『スカイ・クロラ』の独特な世界観をどこまで「自分なり」に楽しめるか?
読み始めれば直ぐに感じると思うのですが、スカイ・クロラシリーズの世界観は本当に独特です。
そして厄介なことに、独特な世界観を持つくせに、その説明は一切(私の記憶ではなかった)ありません。
- 時代背景や文化的背景の説明はありません。
- 登場人物の名前は日本人的ですが、日本が舞台とは思えない描写。
- どちらかと言えばアメリカ的な匂いがします。
- 人々の生活的には現代と遜色なし。
- でも、時々、近未来的な描写があり。
- 戦闘機等は前時代的(プロペラ機)なモノで描写されてます。
- 個々の戦術的には近未来的な描写もあり。
とにかく、この不思議な世界についての詳細は一切語られません。
だから大切な点は、この独特な世界を、どれだけ脳内補完して楽しめるのか?
それが、この本を途中で放棄せずに読み進める鍵ではないかと思います。
タイトルの付け方は秀逸です
『スカイ・クロラ』
英語で書くと「THE SKY CRAWLERS」
日本語に直訳すると「空を這うもの」
最初はこのタイトルの意味がさっぱり判りませんでした。
なんで、こんなタイトルなんだろう・・・と。
でも2度目以降は、このタイトルがとてもシックリと来ます。
まあ、作者がそこまで意図していたのか判りませんが・・・。
『スカイ・クロラ』の表紙に書かれた詩が秀逸
真っ青で目を見張るカバーに、詩が刻まれています。
この詩が、とても素晴らしいです。
全6冊を読み終えた後、もう一度、この詩だけでも読む価値はあると思います。
僕はまだ子供で、
ときどき、
右手が人を殺す。
その代わり、
誰かの右手が、
僕を殺してくれるだろう。
『スカイ・クロラ』シリーズはどの順番で読むべきなの?
最初にこのシリーズを読み始めたとき、1冊目の『スカイ・クロラ』を読み、次に『ナ・バ・テア』を読んだのですが、混乱してしまいました。
なぜなら、1巻、2巻と、時系列通りに物語は進まないからです。
シリーズを刊行順に並べると以下の通りです。
- 「スカイ・クロラ」 The Sky Crawlers
- 「ナ・バ・テア」 None But Air
- 「ダウン・ツ・ヘヴン」 Down to Heaven
- 「フラッタ・リンツ・ライフ」 Flutter into Life
- 「クレィドゥ・ザ・スカイ」 Cradle the Sky
- 「スカイ・イクリプス」 Sky Eclipse
しかし、作品内の時系列順に並べると以下の通りです。
- 「ナ・バ・テア」
- 「ダウン・ツ・ヘブン」
- 「フラッタ・リンツ・ライフ」
- 「クレィドゥ・ザ・スカイ」
- 「スカイ・クロラ」
※「スカイ・イクリプス」は、外伝的な扱い。
ネット上には、多くの先輩方が様々な視点で記事をまとめています。
色んな考え方や意見があって、読んでいると面白いです。
皆さんの見解では、『時系列通りに読む』が優勢に感じます。
でも、刊行順に読むことで「作者の意図をトレース出来る」と言う人もいて、それは確かにその通りだと思います。
私の考えは、まずは『刊行順に読む』方が良いと思います。
不明な点があってもバンバン読み飛ばし、しばし我慢しながら読むことで、謎だったことが少しずつ、少しずつ繋がっていくのは、けっこう面白かったです。
そして、「スカイ・イクリプス」まで読んだら、あまり時間を空けずに、もう一度「スカイ・クロラ」を読むのが良いと思います。
そうすることで、かなりスッキリすると思います。
第2作目「ナ・バ・テア」の記事はこちら
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