手紙(著:東野圭吾)を読んだ!
熱い男の歴史小説(楊家将と血涙)を連続して読んだので、今度は現代小説を読みたくなりました。
10年程前に読んだ時には、「いい小説だな~」という感想で終わりました。
それから10年、色んな経験を積み重ねた今の自分が、どんな感想を抱くのか楽しみにしながら読みました。
無事、読み終えたので感想をまとめます。
『手紙』のあらすじ 簡潔編と詳細編
私のあらすじは粗筋じゃなくて全文要約だ・・・。
とご指摘を頂いたので、あらすじの書き方に変化を付ける事にしました。
サッと読める簡易あらすじと、ちょいネタバレも含む詳細あらすじの2つです。
『手紙』の2分で読めるあらすじ
両親を早くに亡くしたため、親代わりとして弟の面倒を見てきた武島剛志と弟・直貴の物語である。
兄は、何とかして弟の直貴を進学させたいと願うのだが、怪我で職を失い、また十分な貯金もなく、考えた末に選んだ手段は「強盗」でした。
引越し屋の仕事で訪れたことのある、金がありそうな老婆が暮らす一軒家に押し入った彼は、金目のモノを盗むのだけのはずが老婆に発見され、勢い殺してしまうのでした。
強盗殺人犯の兄を持つことになった弟は、その後の人生の様々な場面において、兄の存在によって苦しめられることになります。
進学も、仕事も、恋愛も・・・。
苦難の末、結婚し娘を授かるが、その愛娘の人生にまで殺人犯である兄の影響が及び始めると、ついに直樹は決断します。
「兄との縁を断ち切るしかない」と。
弟からの絶縁状を受け取った兄が書いた手紙・・・
そして、事件に区切りを付けるべく兄が事件を起した家を訪れた直貴が見たものは?
『手紙』のネタバレも含む、読むのに10分は掛かるあらすじ
親代わりとなって弟を育てていた武島剛志は、出来の良い弟を何とか進学させたいと考えていました。
しかし、身体を痛めて職を失い貯金も無い兄がとった行動は、「強盗」でした。
以前、引越し屋の仕事で訪れたことのある、金がありそうな老婆が暮らす一軒家に押し入った彼は、目当ての現金を得ることに成功します。
しかし、目に留まった「弟が好きな天津甘栗」を手にしたことで逃げるタイミングを失い、その結果、住人の老婆に見つかってしまいます。
そして、逃げようとする老婆を、弾みで殺してしまいます。
刑務所へ送られる前に、直貴は兄と面会します。
そして、兄の思い違いを正すのでした。
天津甘栗を好きだったのは、僕じゃなくて、母さんだったろ・・・と。
強盗殺人犯の兄を身内に抱えることになった直貴の人生は少しずつ狂い始めます。
進学を諦めて高校の担任に仕事を斡旋してもらい、寮に住み込みで働き始めます。
兄から毎月届く手紙は、弟の事を気にする優しい兄の気持ちが溢れていましたが、
その兄のことを知られて自分自身が傷つくことを恐れる直貴は、職場で自分に好意を示す白石由実子に対し、敢えて兄が強盗殺人犯だと伝えて距離を置こうとするなど、極力、人に関わらないように生活をしていきます。
隠遁者のような生活を続けていた直貴でしたが、寮に居合わせた前科者が家族のために大学へ行こうとしていることを知り、彼が残していった荷物の中から通信制の大学案内を見つけると、一度は諦めた進学を目指すことにします。
そのことを手紙で知らされた剛志は、自分が犯罪を犯したことで直貴が断念したことを知っているだけに、非常に喜ぶのでした。
通信制の大学へ通い始めた直貴は、夜間スクーリングでキャンパスへ言った際に知り合った仲間と共にバンドを始めます。
直貴の隠された才能は、人を惹きつける歌声でした。
瞬く間に人気となったバンドがデビュー目前となった所で、事件はおきます。
直貴の兄が刑務所に居ることを知った会社は、直貴抜きでなければデビューさせないように仕組み、「またしても」人生を頓挫させられた直貴はバンドを脱退するのでした。
通信制から通学課程へ転籍した直貴は、生活費を稼ぐために昼間の仕事を止め、夜にバーで働くようになります。
そこへ、兄が強盗殺人犯だと伝えて遠ざけたはずの白石由実子が訪れ、再び彼らは定期的に会う様になります。
またこの頃から、兄の所為で何度も煮え湯を飲まされていた直貴は、兄への返事を出さなくなっていきます。
大学の級友から数あわせで合コンに呼ばれた直貴は、そこで良家の娘・中条朝美と出会います。
互いに惹かれあった彼らは、やがて深い関係となるのですが、彼らの前に立ちはだかるのは中条家とその親戚でした。
彼らは上流階級である彼らの財産と血を他人と分け合うつもりはなく、朝美の結婚相手は従兄弟を選んでいました。
中条家を訪れた直貴はその事実を知らされると、悩んだ末に、強盗殺人犯の兄の呪縛から逃れるには何としても朝美と結ばれるしかないと思い、朝美を妊娠させて事実婚を狙い避妊具に細工を施して彼女を家に呼びます。
そこへ従兄弟が現れ、しかもタイミングの悪いことに刑務所に居る兄から1通の郵便が届きます。刑務所からの手紙には、検閲を示す印が押されているのです。
それを従兄弟に見破られ、隠していた兄の事を朝美にばらされ、しかも細工をしていた避妊具までばれ、最後には彼女の父親が家を訪れ手切れ金を積み上げるに至り、朝美とは別れることにするのであった。
失意の中で就職活動を始めた直貴は、またしても兄の影に翻弄され続けます。
強盗殺人犯の兄の存在を隠し、兄はアメリカに居て殆ど音信普通であると面接で答えるのですが、なかなか思うように内定は出ない日々が続きます。
なんとか家電販売店に就職が決まると引越しをして、新しい住所は兄に伝えず、関係を絶とうとします。
しかし、勤務している店に窃盗犯が入り、警察が捜査に乗り出すとその煽りを受けて「強盗殺人犯の弟」であることが会社にバレてしまいます。
会社としては、その事実を知っても首にする事は出来ません。
その代わり、人目に触れない倉庫勤務に異動を命じるのでした。
不当な人事への怒りを抱きつつ働いてた直貴の元を、ある日社長が訪れます。
社長は、「君が不当な扱いを受ける人生を生き抜いて行くには、少しずつ君を大切に思う人の繋がりを増やすしかない」と述べるのでした。
そして、君は既にその絆を1本持っていると。
不当な人事の事を話した由美子が手紙を書いたことを悟った直貴は、彼女のアパートを訪れます。そこで彼が見つけたのは、兄からの手紙でした。
自分が出した記憶の無い手紙に対する兄からの返事・・・。
由美子がワープロで自分に成りすまして書いていたことを知った直貴は、怒りを露にするのですが、自分と同じような境遇で育ってきた由美子の思いを聞き、昼間に社長に言われた事を思い出し、彼女を大切に思う気持ちを逆に強くするのでした。
それから数年たち、由美子と結婚し娘を授かり3人で社宅に暮らしていました。
彼のささやかな幸せは、彼らの社宅に引っ越してきた1人の人間によって打ち砕かれてしまいます。
その人物は、窃盗犯が入った量販店で同僚だった男であり、直貴の兄が「強盗殺人犯」であることを知っている人物でした。
やがて、秘密は住人に知られ、大切な娘が兄の所為で悲しい思いをしている事を知ると、直貴はついに兄と縁を切ることを決断し、手紙を書きます。
ここからクライマックスまでは伏せることにします。
ポイントは、3つ!
- 弟からの絶縁状を受け取った兄の行動
- 兄が事件を起した家に、謝罪するために訪れた直貴が知る事実
- 絶縁したはずの兄に、とある方法で自分の姿を見せる最後のシーン
本書を読んで、それぞれの感想に浸ってください。
『手紙』のおススメ度はいくつ?
おススメ度は80点です!
10年前に初めて読んだ時は「いい話だなぁ~」と思いました。
今回、改めて読んだら「厳しい話だな~」と思いました。
人生が思うように行かないことを味わった10年だったということでしょうか?
『手紙』をおススメする人
この小説は万人に受けると思います。
思いますが、敢えておススメする人を上げるなら・・・
- 人間不信に陥ってる人!
読んで欲しいと思います。
人との絆を取り戻す気持ちになれるはずです。
『手紙』をおススメしない人
誰が読んでも感動できる1冊だと思いますが、
敢えておススメしない人を上げるなら・・・
- 最近、身内で罪を犯した人が居る場合は避けた方が良いかもしれない
時間が経ってからでないと読み進めるのは厳しいと思います。
『手紙』で一番心に残ったシーン
直貴がなんとか就職し、ささやかな幸せを掴みつつあった時に、運悪く店舗に泥棒が入り警察が捜索を行います。
その捜査の課程で、関係の無い直貴の「強盗殺人犯の兄」が会社に知られ、倉庫へ人事異動となります。
自分は関係ないのに、兄の所為でいつも酷い目に合うと苦しんでいる直貴の元を訪れた社長が、直貴の「なぜ差別されるのだ?」と言う問いかけに答えるシーンです。
「差別はね当然なんだよ」
平野社長は静かにいった。
直樹は目を見張った。差別はしていないという意味のことを言われると思ったからだ。
「当然・・・ですか」
「当然だよ」
社長はいった。
「大抵の人間は、犯罪からは遠いところに身を置いておきたいものだ。犯罪者、特に強盗殺人などと言う凶悪犯罪を犯した人間とは、間接的にせよ関わり合いになりたくないものだ。
ちょっとした関係から、おかしなことに巻き込まれないともかぎらないからね。犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、しごくまっとうな行為なんだ。自己防衛本能といえばいいかな」
「じゃあ、僕みたいに身内に犯罪者が出た者の場合は、どうすればいいんですか」
「どうしようもない、としかいいようがないかな」
中略
「だから」・・・「犯罪者はそのことも覚悟しなきゃならんのだよ。自分が刑務所に入れば済むという問題じゃない。罰を受けるのは自分だけではないということを認識しなきゃならんのだ。後略」
読めば読むほど深い。
そして、怖い。
人間と言う知性がある生き物ゆえの、
最も怖い一面をひん剥いた台詞だと私は思いました。
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