2017年元旦 天皇杯決勝
結果 鹿島 2 ― 1 川崎
56年ぶりに関西で行われた天皇杯決勝。関東圏在住の私としては無念である。
スタジアムで応援したかったのですが、先日のCWC決勝で大金を使った上、年始に関西まで遠征などしたら、間違いなく嫁さんに殺されてしまいます…。
なので、大人しくテレビ観戦をすることにしました。
準々決勝の広島戦から続き鹿島の選手の体調不良は改善せず、エース金崎は決勝も戻って来れませんでした。
他に、遠藤と西、そして柴崎のコンディションは気になりますし、準決勝の終盤に足を痛めていた山本の様子も気になります。
対して川崎Fは、CSの準決勝では不在だった小林と大島が先発メンバーに戻り、CSではベンチスタートであった中村も先発で出場するなど、明らかに前回対戦したチームよりはベースアップしていると思われます。
まあ、苦戦は仕方ないかなと覚悟しました。
前半、川崎Fの勢いに押される
川崎はクラブ創設20周年に華を添えようと、選手がかなり高いテンションで試合に入って来ました。
試合序盤、鹿島は思うようにプレーが出来ませんでしたが、
川崎Fの勢いに押されるまま下がらず、ギリギリで凌いだことが、
最終的にこの試合の結果を分けたのかも知れません。
後になって言えるかも知れませんが・・・。
川崎F飛ばしすぎでは?
特に大久保さん!
ガムシャラと言うか、死力を振り絞ってと言うか、前からしつこいくらいにチェイスしていました。
その姿勢が悪いわけではありませんが、ちょっと気になりました。
- GKのキックに飛び込む
→90分、しっかりと働く気は無いのか?
→絶対にガス欠になることは目に見えてます。 - チームとして連動してない
→最前線からチームとして連動して追いかけてないように思いました。
→大久保だけやたら必死に絡んでくるイメージでした。
最前線での大久保さん独り舞台を別にしても、中盤の激しさは川崎Fに軍配が上がってました。
ただ、ギアを上げっぱなしで最後まで持つのか?とも思いました。
もしも、前半に何度も繰り出された川崎Fの攻撃が決まっていたら、鹿島はボロボロになった可能性もあります。
例えば・・・
前半13分、
大久保が強引に突破して放ったシュートは、際どい所で曽ヶ端が右手で防ぎました
前半18分、
連動したパス回しから小林がダイレクトで放ったシュートは曽ヶ端が好捕しました
前半、本当に危ないシーンが多かったです。
小笠原がチームに喝を入れる
川崎Fの勢いに押され気味のチームを鼓舞するため、キャプテンが一芝居を演じます。
前半19分
ファウルで倒された小笠原が激昂して中村に詰め寄ります。
倒されたこと自体はそれほど悪質なファウルではありませんでした。
ただ、倒れた小笠原にボールを返そうとしたのか、悪意を持って行ったのか判りませんが、中村の蹴ったボールが倒れている小笠原にはヒットしたのは事実です。
詰め寄る小笠原に対し、後ろから大久保がドーンと当たると、あっさり小笠原は倒れました。
大久保自身、ヤバイと思ったのか直ぐに手を差し出して起こしていましたが、
倒れた小笠原の上から川崎Fの選手で一人喚いているのが気になりました。
無礼な奴です・・・。
小笠原の喝が効いたのか判りませんが、
押されっぱなしの鹿島DF陣から『闘う姿勢』が失われることはありませんでした。
省エネの攻撃と防御に徹する
鹿島は、準々決勝のサンフレッチェ、そして準決勝のマリノスとの2試合でも見せたような、省エネの攻撃と防御を決勝でも行っていました。
防御においては、がむしゃらに体力を使って追いまくるのではなく、パスが出るであろう人やエリアにはしっかりと寄せる。
また、シュートが打てるエリアに入ったら激しくあたる。それを徹底していました。
攻撃においては、ボールを失うと即危険になる中央から攻めるのではなく、逆カウンターを受ける恐れが低いサイドから攻めていました。
また、手数をあまり掛けずにゴール前に迫る攻撃を徹底しているように感じました。
この40日間で10試合を闘う中で、鹿島が会得した戦い方なのかも知れません。
以前から、守備から入ってカウンターでドーン!は得意なチームでしたが、
以前の『それ』とは微妙に違う気がするのです。
何故に川崎Fはセットプレーの対策をしない?
CSの準決勝でも、鹿島のセットプレーでは得点の臭いがプンプンしていました。
(実際の得点は、後半開始のフワッとした時間帯にスローインから金崎のヘッドに繋げた点でしたが・・・。)
この天皇杯の決勝でも、川崎Fのセットプレーでの守備の不安定さは改善されてませんでした。
正確に言うと、セットプレーからの一連の流れの中で、川崎Fの選手たちは自分たちで状況を見極めて、ポジション修正ができないようでした。
あれから約1ヵ月半あったのに・・・です。
何故?
幾らでも対策の仕方はあったはずなのに?
敵チームのことながら、とても疑問に感じました。
- 前半22分の遠藤のFK ファーで山本がフリーでした。
- 前半36分 確かCKからの流れでしたがファーの山本から西に合わせてゴール・・・山本がオフサイドでしたが。
この2つのプレーで、点は取れると鹿島の選手たちは確信したと思います。
前半41分 山本のヘッド炸裂す!
川崎Fの穴でもあるセットプレーから先制点は生まれました。
右コーナーから遠藤の見事なセンタリング。
早くて鋭くて低くて、見事なセンタリングでした。
それを、少しマイナス気味に戻りつつ、頭にピタッと合わせた山本のシュートは、GKの手を掠めてゴールに決まりました。
CSの準決勝から天皇杯の決勝まで、働き尽くめの縁の下の力持ち役だった山本に、サッカーの神様はご褒美を用意していたのです。
前半は、押し込まれるシーンが多かっただけに、胸のすく一撃でした。
後半も川崎Fペースは変わらない
狙い通りと言える、少ないチャンスで得点することに成功した鹿島でしたが、
正直、選手のコンディションを考えると1-0でいけるようには思えませんでした。
後半開始と同時に、両チーム共に1枚ずつカードを使います。
- 鹿島は得点した山本に変わりファン・ソッコ投入
- 川崎は登里に変わって三好を投入
山本は準決勝で痛めた膝の状態が良くなかったようでした。
ソッコが悪いわけではないが不安が・・・
ソッコのDF力は決して低くありません。サイドも出来る選手です。
ですが、万全の状態のときの山本に比べれば、サイドでの守備は手薄になることは予想されました。
なので、石井采配にちょっと疑問がありました。
どうして、準々決勝、準決勝と西の代理を務めた伊藤ではないのかな?と。
確かに伊藤の本職は右サイドバックですが、しばらく試合に出ていなかったソッコよりは、試合感のある伊藤ではダメなのでしょうか?
それとも、伊藤が左サイドでは使えないと判断したのでしょうか?
後半9分 左サイドからやられる
心配していた通りとまでは偉そうに言いませんが、でも、懸念された左サイドを崩され同点にされました。
小林がスルーした時点で、かなりPA付近は危険な状態でしたが、三好が中央で溜めている時に、PA内に走りこんできた小林のケアが遅れたのが最大の原因かと思います。
ソッコが必死に戻りタックルしますが、ファウルでPKを恐れたのか中途半端なタックルとなり、バランスを保った小林が振りぬいた右足で同点弾を奪われました。
三好の絶妙なパス、小林のバランス、シュートも抑えた良いシュート。
完璧でした。
思わず、『上手いっ』と口走ってしまいました・・・反省です。
鹿島のプレス機能せず
同点にされてから約10分が、鹿島にとって最も危険な時間帯でした。
パスとドリブルを組み合わせた川崎Fの攻撃に対し、全くと言っていいほどプレスが出来ませんでした。
- 後半11分の三好(DFがブロック)
- 後半13分の小林(DFがブロック)
- 後半20分の小林(ポスト)
- 後半21分にソッコが小林にファウルでイエロー
久々に、やばい、何とかしてくれ~。と見ているほうはパニックになりました。
それでも、この約10分を凌げたことが、鹿島の勝ちに繋がったのでしょう。
川崎Fの三好、、、危険な奴だ、覚えておこう!
後半開始直後に投入された三好さん。
本当に危険な奴でした。
CSでは登里にかき乱され、嫌な選手だと思っていましたが、この決勝戦では登里はCSのようなプレイが出来ていないようでした。
それでも、彼が交代したのでひと安心と思ったのは不覚でした。
川崎Fのパスサッカーに三好のドリブルが加わると、一杯一杯の体力でやっていた鹿島の選手はきつかったと思います。
どこにパスが出るのか、それともドリブルなのか、予測も出来ないままに後半は20分過ぎまで翻弄されていました。
三好さん、良い選手だと思います。
ただ、持ち過ぎの感もあります。あと不用意なボールの失い方もしていました。
鹿島の選手が慣れてくると、対応出来るようになったところを見ると、まだまだこれからの選手なのかも知れません。
それでも、一芸に秀でれば、代表だって可能性はあるように思いました。
後半の男・鈴木投入も、効果が限定的でした
後半に出場して試合を決めるゴールを量産してきた鈴木ですが、この試合に限っては、苦戦をしていたように思います。
ポストになれるフィジカルはあるのですが、そこからの引き出しがまだ少ないように感じました。
足元の技術が低い訳ではないと思いますが、もう少し、引き出しを増やして欲しい。
相手の抜き方にしても、パスにしても、『良い・悪い』がはっきりし過ぎている様に思いました。
相変わらず、得点の臭いがする選手であることは間違いないのですが・・・。
石井采配の謎、何故に最後の交代でファブリシオ?
鹿島、最後の交代はファブリシオでした。
正直、この時は私ぼやきましたよ。
『何故にここでファブちゃんなの?』
『石井さん、何を感じたの??』
延長戦 鹿島らしさが戻る
延長戦に入ると、鹿島の選手のスタミナがさらに失われると危惧していました。
しかし、延長に入ってからは、鹿島のチームと選手達の経験が活きました。
多分、川崎Fの選手は『まだ30分プレーしなくてはいけない』
と感じていたのでしょう。
でも、鹿島の選手は『思うように動ける延長開始早々が勝負』
と考えていたのだと思います。
その証拠に、後半投入直後は上手く試合に絡めなかったファブリシオが躍動してましたから。
ついにファブリシオ噴火す!
後半4分 ファブリシオが決勝点を上げました!
直前のCKを西がヘディングで合わせますが、惜しくもクロスバーに阻まれました。
ただ、そのこぼれ球に連動して動いたのは鹿島の選手達でした。
永木、鈴木とヘディングで繋ぎ、PA内に残っていた西の元へボールが出ます。
相手の寄せでこぼれた先にいたのは、ファブリシオでした。
抑えたシュートは、ゴール右隅へ突き刺さりました。
試合後のファブリシオのインタビュー聞いて、ちょっと泣きそうになりました。
あんな頭してるけど、とても真面目で、良い人柄の選手だったんだな。と。
彼のコメントが、鹿島アントラーズというチームを見事に表現しているようで、嬉しかったです。
「日本に馴れるのに難しい部分があったが、クラブスタッフ、チームメイト、そして見捨てずに応援してくれたサポーターに感謝したい」
(ファブリシオ)
あの、レアルとの決勝での振り向きざまのシュートが決まって優勝していたら、彼の未来も変わったのでしょうが・・・。
これがサッカーの面白さの1つですね。
トドメがさせない鹿島
勝ち越しに成功した鹿島は、試合を決めようと攻め掛かります。
CKからのファブリシオのヘディングはポストに嫌われ、
ゴール前中央でダイレクトに打ったシュートはGKの正面へ。
ファブリシオさん、トドメが刺せません!
刺せないと、経験上手痛いしっぺ返しが来るのですが・・・。
川崎Fも足が止まる
前半、後半とあれほど鹿島を攻め立てた川崎F、流石にガス欠に陥ったようです。
足が止まってしまえば、如何に華麗にパスを回されても、対処はし易くなります。
前掛りになって攻めてくればくるほど、鹿島の網に掛かります。
網に掛かったら、カウンター発動の好機です。
ただ、人もボールも動くと途端に危険なプレーが生まれます。
後半11分の一連のプレーは、
この試合、最後の得点チャンスだったと言っても過言ではないかと思います。
ギリギリの所で、遠藤が頭でクリアして難を逃れました。
鹿島の選手一人一人の経験値
延長後半に入ると、18冠を獲得してきたチームの経験値、
そして、直近の40日間にレベルの高い10試合を行ってきた経験値、
それが活かされたように思います。
延長後半に入ると、急に鈴木の動きが変わったのを見て、思いました。
『これは勝てるな!』
状況を見極めつつ、ポストでボールを保持すると、サイドへサイドへ流れていきます。
若手にまで勝つための闘い方が浸透しているのは、鹿島の強みだと思います。
そんな中でも、チャンスと感じるとカウンターを発動させます。
延長後半7分、遠藤のセンタリングは惜しかった。
ゴール前の鈴木に通れば確実に1点でした。
スローで見ると、無理な体勢から利き足の左足でセンタリングを出していました。
右足じゃダメなのかなぁ・・・遠藤さん!
天皇杯決勝、川崎F戦の総括
前後半90分は、終始、川崎Fの勢いに押されていた鹿島でしたが、終わってみれば、いつもの鹿島だったように思います。
最後の部分はしっかり守って最小失点に抑え、
少ないチャンスをきちんとモノにして、勝利を得る。
快勝だった、とか、楽勝だった、とか絶対に言えませんが、
鹿島の選手の表情を見ると、
『まあ、考えたとおりプレーして勝てた!』と書いてあるように思いました。
プレーするのは選手だけど、監督の意識に差がある
CSの決勝でも、今回の天皇杯決勝でも、試合後のニュースを見ていて思うことがあります。
それは、浦和や川崎の監督を非難するコメントの多い点です。
監督なので、チームの勝ち負けに責任はあると思います。
でも、実際にプレーするのは選手な訳で、
勝てない原因は監督・選手のどちらか一方にあるのではない!と私は考えてます。
しかし、今回の試合後のコメントを見て、ちょっと気が変わりそうです。
あえて、何がどうとか書かないことにします。
ただ、鹿島のサポーターである私としては、石井監督が鹿島アントラーズの監督で良かったと思います。
僅か半月の間に、2回も悔しい思いをしたら、寝れなくなりますから。
石井監督のコメント
「惜しくもクラブW杯決勝で負けてしまって、その悔しさは選手には当然ながらあった。もう1つのタイトルを獲りたいという気持ちが強かった。その気持ちが表れたと思う」
風間監督のコメント
(前略)結果としては悔しいですけども、勝つ以上に喜びがある。逞しくなった選手たちは僕にとって喜びであり、誇りでもあると思った試合だった」
危惧した通り、好不調の波がある柴崎
準決勝のまとめ記事で最後に書いたのですが、柴崎への危惧はある意味的中してしまいました。
なぜに彼はこれほどに好不調があるのでしょう?
どうして、守備で負けるのでしょう?
記憶違いかも知れませんが、後半、三好に振り切られたシーンがありました。
あのシーンを見たスカウトは、果たしてオファーを出す気になるのでしょうか?
心配です。
金崎不在で勝った意義
色々あった2016年でしたが、それでも金崎あってのアントラーズでした。
でも、彼が海外志向=日本代表への強い渇望があることは知っています。
だから、彼に海外から良いオファーが来れば、快く送り出してあげたいと思います。
そういう意味で、金崎が不在でも天皇杯を得ることが出来たことは、来季のシステム作りには役立つと思います。
もちろん、2017年シーズンもアントラーズでプレーしてくれるのが一番です!
大久保さん不発!
大久保さん、不発でしたね。
彼の貪欲なまでのゴールへの意識は嫌いではありません。
でも、ここ数年、ここぞの時に活躍できない点について、一度は冷静に振り返っても良いのではないかと思います。
ブラジルワールドカップで、何故、期待に応えられなかったのか?
彼はその疑問に答えを出していないように思います。
まあ、来年はFC東京に移籍するそうなので、FC東京の攻撃には注意しなくてはいけないですね。
今後も石井采配に期待できる
後半終了間際は申し訳ありませんでした。
『石井さん、なんで?どうして??』
なんて、失礼しました。
レンタル契約期間が1月1日までの選手のモチベーションをしっかりと保ち、
ここぞと言う時にその選手を信頼して送り出すことが出来るのが、
アントラーズがファミリーと称しているチームの特徴なのだと思います。
しかし、普通、来期の契約を結ばないチームのために、最終日まで闘いますかね?
しかも、語弊があるかもしれませんが『ブラジル人』ですよ?
キャプテン小笠原が言うように、
選手、監督、コーチ、サポーターが一丸となって闘えることが、アントラーズの最大の強みだと実感した試合でした。
そしてその強みを、上手に引き出すことが石井監督は出来ていると思います。