前回の記事では、手術を勧めない医師との出会いについてまとめました。
正直、『経過観察』という選択肢があることは知っていましたが、『未破裂脳動脈瘤の治療のためには、手術するしかない』と頭から信じ込んでいた私にとって、『無理に手術を選択しないで様子をみたらどうか?』と言う医師の勧めは、相当に意外な助言でありました。
今回の記事は、医師に勧められ実際に行った『経過観察』についてまとめてみたいと思っています。
私の場合は、6月~10月までの僅か4ヶ月だけでしたが、
『経過観察』って実際のところどうなんだろう?
と悩んでいる方に、本の少しでもアドバイスになれば幸いです。
未破裂脳動脈瘤の3つの治療方針のおさらい
「未破裂脳動脈瘤がありますよ!」
と言われたら、患者が取れる治療方針の選択肢は少ないです。
なぜなら、残念ながら現状では未破裂脳動脈瘤を『薬の服用』などの『内科的治療』で治すことは出来ません。
完治することを目的とするなら『外科的治療』・・・つまり『手術』を行うしか方法がありません。
しかも、その手術方法は2つしかありません。
その1 開頭クリッピング手術
読んで字のごとく、頭をパックリと開けて、脳動脈瘤にクリップを掛ける手術です。
※開頭クリッピング手術の中に『鍵穴手術』という術式もありますが、私はこの術式を勧める先生には会いませんでした。
開頭クリッピング手術のメリット
開頭クリッピング手術の歴史は40年以上あり、その分、成功(失敗も)の実績が蓄積されているため、手術として信頼できます。
きちんとクリップが掛かりさえすれば、再発の可能性はまずなく、再度、手術になることは少ないです。
頭を開けて手術するため、術中に動脈瘤が破裂しても対処がしやすいです。
開頭クリッピング手術のデメリット
頭蓋骨を約10センチ程度開けるわけで、恐怖感がある。
頭蓋骨を開ける訳なので、侵襲性が高い。
術後の入院が10日前後、その後の自宅療養が2週間程度必要となり、社会復帰まで早くても1ヶ月程度は必要となります。
創部の違和感が無くなるのは、個人差もあるが年単位です。
手術なので、死亡や後遺障害が残る可能性は当然ある。
その2 血管内治療(コイル塞栓術)
動脈瘤内にコイルを詰めて動脈瘤を閉塞する方法です。
一般的には、コイルは足の付け根から動脈内に挿入します。
血管内治療(コイル塞栓術)のメリット
頭蓋骨を開けないので、恐怖感がない!
術後の侵襲性が低い!
術後、数日で歩き回り、1週間程度で退院し、
早ければ2週間後には社会復帰が可能である。
血管内治療(コイル塞栓術)のデメリット
まだ10数年の歴史しかないので、実績的に安全面や確実性保障するには時期尚早と考える医師も多い
コイルが上手く収まらず、再度、手術となることもある。完治率が低い。
術中に万一動脈瘤を破裂させた時に、対処まで時間がかかる。
手術なので、死亡や後遺障害が残る可能性は当然ある。
全ての動脈瘤に施せるわけではない。(形や場所によっては難しい)
この2つの手術については過去にしっかりとまとめた記事がありますので、そちらも参考にしてください。
また、ネットではこちらのサイトが判り易いです。
その3 経過観察
読んで字のごとくですが、
『積極的な治療(手術)をせずに、様子を見る。』
と言うことです。
経過観察のメリット
手術ではないので、死亡も後遺障害も当然ない!
手術ではないので、痛みは無いし、傷もない。
費用も安い。(長年経過観察を行えばMRI費用が積み重なるので高くなる)
経過観察のデメリット
積極的治療を一切行わないので、決して脳動脈瘤が無くなる事はない!
常に未破裂脳動脈瘤の存在を意識しながら、日々生活することになる!
実際に体験した経過観察について
先生が、自信を持って勧めてくれたので、私は経過観察をしてみることにしました。
実際に、『経過観察を行ってみよう』と思ったのは、次のような気持ちがあったからだと思います。
- 手術への恐怖
- 私の動脈瘤の形は、開頭クリッピング術しか選択肢が無い状況
- 手術もせずに済むなら、良いのではないか?という淡い期待
このような気持ちから、経過観察をスタートしました。
経過観察1ヵ月後の気持ちと身体
経過観察を始め、最初は1ヶ月で通院して様子を見ることになりました。
先生に経過観察中に注意する点を聞いたところ以下のように言われました。
- 激しいスポーツさえしなければ(ラグビーやアメフトなど)、むしろ積極的に運動してください。
- 吐いて意識を失うような読み方で無いなら、家族や友人、仕事の付き合いのお酒を止める必要はありません。
- とにかくストレスをためないこと。
つまり、未破裂脳動脈瘤が見つかる前の生活を実践してください。
最初の1ヶ月はとても気持ちが楽になりました。
見えない手術への恐怖が、これほど自分にストレスを掛けていたのか?
という程、よく寝れた記憶があります。
意外と、このままでいけるのではないか?
という気持ちが心に生まれかけていたと思います。
そのため、1ヶ月目の検診では特に問題なく、では、次は3ヵ月後に来てくださいと言われました。
経過観察が2ヶ月を過ぎた頃から・・・
1ヶ月目の検診は問題なく終え、2ヶ月目も無難に過ごし、
3ヶ月目に入る頃から、少しずつ、異変が現れました。
身体にでは無く、心に異変が起きたのです。
経過観察とは、
終わり無きたたかい!
この一言に尽きるのです。
気にしないようにしていても、心のどこかで無理をしているのです。
- 朝起きて、今日も目覚めたことに『ホッ』とします。
- 通勤で階段を走る、満員電車でもみくちゃになる、
その都度、『破裂』が頭を『フッ』とよぎります。 - 仕事中、来年の予定などを話していれば、自分に来年があるのか『思案』してしまいます。
- 飲んでいる時、どんなに楽しんでいても、自然と『セーブ』しています。
- 夜、風呂に入って寛いでいる時に、『ふと』お湯につかりすぎを心配し、慌てて出てしまいます。
- 布団に入り、『明けない夜』ではないことを願わずにいられません。
私は、たぶん、弱い人間なのです。
余計なことを考えすぎる人間なのだと思います。
それゆえ、少しずつ、少しずつ、心にストレスが掛かってしまったのだと思います。
経過観察を止める決定打は何だったのか
私は、未破裂脳動脈瘤のことを会社に報告していました。
病院探しなどで休むこともあるし、手術となればそれなりの期間休むこともあるので、先に伝えた方が良いと思ったからです。
※ちなみに、家族や友人、職場にどう伝えるかをまとめた記事もあります。
経過観察が3ヶ月を過ぎた頃、職場で一つのプロジェクトが持ち上がりました。
期間は2年ほどかかる仕事です。
普段手がけている仕事や、これまで手がけてきた仕事を考えれば、自分が担当者になってもおかしくはありませんでしたので、担当したい旨、上司に伝えました。
しかし、会社側の回答は『ノー』でした。
『心身ともに苦しい時期なのだから無理する必要がない』
と言うのが表向きの回答でした。
しかし、後に上司に無理言って教えてもらったのですが、
『可能性は極めて小さいとは言え、いつ倒れるか、いつ手術で不在になるか判らない人間に、プロジェクトは預けられない』
というのが会社側の本音でした。
もちろん、更なる裏の本音で、
『あいつの能力では無理だ!』
だったのかもしれませんが・・・・。
とにかく、上司としては推薦してくれたようですが、
会社側の判断も間違ってはいないので理解して欲しいと言われました。
確かに、万が一があった時にクライアントに迷惑が掛かるのは避けたいですし、かと言って最初から病気のことをクライアントに話すのは、フェアではないですし、
正直、自分自身でお手上げでの状況でした。
こうして、経過観察4ヶ月目が終了し、2度目の報告に通院するときには、
自分の中の気持ちは固まっていました。
- 『人生に全力で向き合えるようになりたい』
- 『だから手術をして前に進もう』
その気持ちを医師に伝えると、医師はある意味予想していたように、
『皆さん、だいたい同じ時期に同じように悩みます』と言いました。
『人それぞれ、考え方は違うと思いますが、半年、経過観察を続けてみませんか?』
と言われました。
一生懸命話しを聞いてくれて、とても親身になってくれる先生でしたが、
既に自分の気持ちとは溝が出来てしまっている事を肌で感じました。
(何ていうか・・・彼女と別れる時の感覚に近いような・・・)
今回のまとめ
こうして、私は『経過観察』へのチャレンジを4ヶ月で取りやめる事になりました。
取りやめた一番の理由は、
『拭えない破裂への恐怖』
そして次に
『引っ掛かりがあると楽しめない心の弱い自分』
そして最後に
『仕事にも影響が出たこと』
これらの理由で、自分には『経過観察』は合わなかったのだと思います。
次回、『未破裂脳動脈瘤と闘う ~自分の気持ちが固まった~』です。
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