ジェノサイド(著:高野和明)を読んだ。
古本屋に行ったら、
『今人気の本10冊』とポップが貼られて並べられていた。
手に取って裏表紙の解説を読むと、サイエンス系ミステリー?の様だった。
正直、あまり得意な分野では無いけども、読書の視野を広げようと購入して読んでみました。
苦手な分野の小説を、敢えて読んだみた感想を、記事にまとめました。
この感想は、完全に一個人の私感です。
また、ちょいちょい、ネタバレ的な部分もありますので、ご注意ください。
世界を股にかけた冒険活劇
(粗筋)
日本の大学院で薬学の研究を行っていた研人は、同じ研究者である父を尊敬しつつ、どこか冷ややかな見方をしてしまう自分に複雑な思いを抱いていた。
ある日、父が急死したと知らせを受ける。24年間の親子関係は、決して蜜月と言えるもので無かったため、突然の訃報に戸惑いつつも、感情を表に出すことなく、喪主となった母を気遣いながら父を見送った。
父を見送り、日常に戻った研人の元に、父から遺言がメールで届いた。
メールの指示に従い行動した研人は、父の遺品『GIFT』を手にする事になる。
その『GIFT』が彼の平和な生活を一変することになるとは知らずに・・・。
難病に苦しむ息子の治療費を稼ぐために、軍を辞めて民間軍事組織に属し、傭兵としてイラクに滞在していたイエーガー。
勤務明けの休暇を愛息の元で過ごすために荷造りをしていた彼に、アフリカでの特殊な任務依頼が舞い込んでくる。
愛息の元で過ごしたかった彼だが、通常以上の破格の報酬に魅かれ、任務を受けた。
アフリカ中央のコンゴの森で『特別な●●』を保護した彼と彼のチームは、追っ手から逃れつつアフリカから日本まで旅をすることになる。
突如、この地球に生み出された『特別な●●』に国家存亡の危機を感じた米国首脳は、その『特別な●●』をこの地球上から消し去ることで危機を回避する決断をする。この地球上で最も金と力を持つ集団の一つである彼らが、名も無き「特別な●●」を消し去るために暗躍した結果、何の繋がりも無かった研人とイエーガーは巻き込まれていく。
「特別な●●」とは何なのか?
「特別な●●」がもたらす危機とは?
「GIFT」とは何なのか?
アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、日本を舞台に繰り広げられる冒険活劇の終着点はどこになるのか?
そして「特別な●●」の行く末はどうなるか?
理系が苦手な人には辛い本
「やっちまった…」
これは、上巻を読み始めて3分の1位で、私が感じた正直な感想です。
本の最後に付いている解説を読むと、
『著者は、このようなミステリー作品を作る際には細部まで手を抜かずに掘り下げることで、真実味が増す』と考えているらしく、それ自体は正しいと思います。
しかしですよ!
理系音痴の人間にとっては、掘り下げられた事象も、軽く書かれた事象も、正直なところ真実味はたいして変わらないのですよ。
だって、知識ないんだから。
難しい科学用語や薬学医学用語を並べられても、
読んでいて『おおっ、凄いなー』とテンションは上がりません。
むしろ、読み慣れぬ横文字や固有名詞を辿々しく読むたびに、
『テンションが下がってしまいます。』
その結果、作品世界に没頭することが出来ず、
『私はこのような科学系は苦手だ』という現実に意識が引き戻されてしまい、
読み進めるのが苦痛に感じるときもありました。
もう少し、専門分野の記述(医療系でも政治系でも)を減らしてくれたら、
読みやすかったのに!と思うのは私だけでしょうか?
『今人気の本!』
って古本屋のポップには書かれていたけど、
本当は、『科学、薬学に携わる人々への賛歌!』
って書いた方が良かったのでは?
最後まで読みきるためのコツ
我慢!
上巻を頑張って読み続けることです。
下巻になると物語は急展開を迎えますし、専門用語にも慣れてきます。
私的には、上巻の最後『第2部ネメシス』が始まった辺りから、物語に引き込まれ始め、下巻の前半『ルーベンスがハインズマン博士の家を訪ねる』頃には、かなり物語に前のめりになっていました!
とにかく、上巻は我慢です!
下巻は3つの要素が物語に引き込んでくれます!
下巻になれば楽しめる!
と先ほど書きましたが、その理由は、後半になると3つの要素が程好いバランスを保ちつつ、かつ、マニアックになり過ぎず、読み手を引き込んでくれるからだと思います。
- 1つ目は、父親に託された『GIFT』なる製造機を利用して、子供達の命を脅かしている難病の特効薬を作る。サスペンスドラマ的要素です。
見所は、無事に完成するのか?子供たちの命は救えるのか? - 2つ目は、研人の成長を見守る、いわばRPGゲーム的な要素です。
見所は、頼りなく、考えの無さすぎる行動にかなり上巻ではイライラさせられますが、ジョンフンと言う韓国人の親友を得たことで、研人が一人の大人として、そして研究者として変化していくのは、お約束ですが面白いです。 - 3つ目は、コンゴの森でヌースなる「特別な●●」を保護し、遠く日本までの逃避行を描いたアクション要素です。
見所は、4人の傭兵それぞれに特徴があり、彼らの危うい関係にハラハラさせられたり、脱出の最中に繰り広げられる戦闘シーン(かなり残虐な表現なので好き嫌いがあると思う)の表現はかなり秀逸です。
果たして彼らは逃げられるのか?と、先へ先へと読みたくなりました。
この3つの要素が、下巻を一気に読ませた要素だと考えています。
ジェノサイドのオススメ度は?
オススメ度は50点です。
下巻だけならもう少し高い評価なのですが、
上巻をもう一度読みたいかと聞かれると、正直なところ・・・です。
こんな人は読む前にちょっと考えて!
- 残虐シーンが苦手な方
描写としてはとても秀逸なのですが・・・。
残虐シーンの描写は、映像ではなくて本を読んでいるのに、思わず顔を背けたくなるほど秀逸な描写です。
ただ、コンゴの森で犬が毒殺されるシーンなどは、犬を飼っていることもあってちょっと受け入れがたいものが・・・。
また、子供兵の登場なども、結構エグイです。 - 頭が理系でない方
理系的脳みそが足りない方は、ちょっと考えた方が良いです。
単純に、アクション的要素を楽しみたい、サスペンスを楽しみたい、ミステリーを楽しみたいのであれば、結構、苦痛かもしれません。
特に、私のように、高校時代に理数系のテストで赤点を取ってしまったような人は、止めておいたほうが良いかもしれません。
前回の感想文『ソロモンの偽証』に続いて、あまり芳しくない内容の感想文になってしまいました。
でも、あくまでも、私の個人的な感想なので、作者の方、、、すいません。