ブレイブ・ストーリー(著:宮部みゆき/角川文庫)を読んだ!
宮部みゆきと言う作家は前から知ってはいたのですが、この人の歴史小説をちょっと立ち読みした時に、結構文章が自分に合うことが判り、古本屋で探したら偶々この本がセット売りされていたので買ってみた。
粗筋だが、定番といえば定番なファンタジー小説だ。
主人公の男の子の、小学校での生活やクラスメートとの日々の遊び、家庭での父や母との関係とちょっとした苛立ち、それらを本当に丁寧に描写し(多分、全体の1/4くらいは費やしているのではないだろうか)、いよいよ異次元空間へと旅立っていく。そして、仲間と出会い、敵と戦い、数多の謎を解き苦難を乗り越え、喜びを味わい、別れを知る。様々な体験をしていく中で、少年は成長していく。最後に目的を果たすと、また元の世界へ戻ってくる訳だが、、、誰も少年が異次元へ行っていた事など知らず、自分自身も異次元での体験がまるで夢だったかのような気持ちになる。。。
定番だ!いわゆるユメ落ち!!
かつて、ウイングマンという漫画があったが、その時に初めて知った『夢オチ』。
でも、面白かったし、何よりも懐かしかった。
小学生の頃、父や母との間に感じ始めていた違和感(別に嫌いという意味でなくて)と、自分自身を上手く表現できない苛立ち。仲の良い友人なのに、なぜか『あの子はダメよ』という態度を見せる母親に対する感情。欲しい物を買う為に建てた、不備だらけのお小遣い予算計画。そして、友人と夜通しゲームして遊んだ黄金の夜。さらに、十把一絡げだった女の子が、ある日、一人だけ例外に感じている自分に気付いた時の感情。
全てが、自分が辿って来た道だ。
本を読みながら、どうしてこの作者は『女のくせに少年の日々をなぜに知っているのだろう』と、何度も感心させられた。
気になった点もある。
例えば、主人公のワタルだけど、ちと大人びている、というかかなり大人だ。発言と行動、思考力と理解力は、正直小学5年生とは思えない。自分の子供の頃と照らし合わせてみても、『マジ??』って思う所が幾つかあったしね。
あとから知ったのですが、漫画の設定は中学生になっているらしい。そっちの方がしっくりくるけど、中学生となると、また、本の内容も変わるよな~。女の子に淡い恋心を抱く程度じゃなくて、もっと生々しい感情と行動をするようになるしなぁ。。。う~ん、そうすると、この本全体に漂っている、爽やかな『愛と勇気と冒険』が感じられなくなるかもなぁ。
なんて所が、気になりました。
この本は、確かに小学生や中学生が読んでも楽しめるのかも知れない。ただし、その楽しみ方は『そうそう、あるある~』的な楽しめ方じゃないかな。
私が思うに、30前後から40代半ば位で、まだ独身の男だったら、読みながら『日々、アドベンチャー気分だったあの頃』を思い出して懐かしく楽しめると同時に、『愛と勇気だけではどうにもならない現実』を知り、半ば諦めを感じている己を見つめ直す機会を与えてくれるようにも思う。まあ、そんな大層な決意までは抱かないけどね。
もちろん、結婚していたり、子供がいたら、また違う印象になるかも知れません。
・・・わたしゃ、もちろん前者っす。
それから、プロなんだから当たり前と言えば当たり前なのかも知れないが、文章が上手い。特に、表現の仕方が上手い。「・・・」の文章と言えばいいのかな?
宮部作品を、いくつか購入して、しばらく嵌りそうな気がする。