絶海にあらず(著:北方謙三/中公文庫)を読んだ。
お得意の歴史物に帰ってきました!3連発で村上龍を読み通したので、胃がもたれてしまって、、、やっぱり、肌に合う歴史物がオイラにはイイらしい。
さて、この絶海にあらずであるが、北方謙三が好んで書いていた「南北朝時代」よりも更に古い時代の話しだ。時は平安時代中期、10世紀前半の一大イベント、「承平天慶の乱」を小説化した本です。学問の神様で知られる菅原道真は既に失脚し、903年に大宰府で亡くなっている。藤原家の天下となり、藤原純友も属していた北家は我が世の春を迎えつつあった。
ちなみに、10世紀がどんな時代だったのか、、、世界を見渡してみると、、、
お隣の中国では、唐が滅び、その北方に契丹が興り、中国南部には宋が興っている。つまり、そう!北方謙三の「楊家将演義」と「血涙」が描いている時代だ。
ヨーロッパの方へ目を向けると、東ローマ帝国が領土を再び拡張し、最後の隆盛期を迎えていた時代であり、フランク王国が消え、フランス王国(カペー朝)が始まったり、神聖ローマ帝国が成立した頃でもある。
ちなみに日本では、10世紀後半に藤原北家はあの「藤原道真」を排出し、全盛期を迎えるわけだ。そういえば、紫式部とか清少納言とかもこの時代だな。
そう考えると純友は、平安時代(藤原家)が隆盛を極めていく、まさにその真っ只中に身をおいていた訳だなぁ。
しかしわたしゃ、この頃の歴史が一番苦手だ、、、。というか勉強不足・知識不足、なによりも興味不足でダメだ。。。
やべぇ、また前置きが異様に長くなってしまった。本の紹介に戻らなきゃ。
今回の本は、上下巻2冊に分かれ、純友という男の半生を描いている。
平将門も前半にちょびっと出てはくるが、ホントにちょい役でしかない。承平天慶の乱として、歴史の授業では一括りにして覚えさせられ、どちらかと言えば将門の方が大物扱いされている現状に対し、真っ向から対立した考えを基に書かれているように思う。
純友と言う男が何をしたかったのか?何をしたのか?なぜそうせざるを得なかったのか?その辺りについて、自分も初めて知ることも多く「ふ~ん、なるほどねぇ。」とおもわされる事も多々あった。
それから、北方歴史小説の特徴、、、というかいまや必要不可欠の要素、「闇の財源」!
は今回も健在であった。水滸伝や楊家将では「塩」だったが、今回は「唐物(青磁など)」がそれだ。この闇の財源は、いつも権力の象徴への反発として取り扱われている。
全体を通して、非常に読みやすく、テンポも良いし、歴史に全く興味が無い人でも読み進められるようにグダグダと歴史の解説も無いし(つまり私が前半にちょびっと書いたようなやつ)、お薦め出来る本だとおもう。
ただ、ラストについてはなぁ。
ちょっと、途中から結末が見えただけに、残念だ。やっぱり、素人の私なんかが予想できるような結末ではなくて、「おおっ!やるな、北方!!」っていうサプライズが、予想できても良いから「単純に男泣き」するような結末なら、もっともっと良かったのになぁ~と思いましたがね。
え?結末??それは内緒でしょう!!