世紀末の隣人(著:重松清)を読んだ!
重松さんの本は好きだけど、果たしてルポルタージュというジャンルではその作風はどうなるのか気にしながら、手にしてみました。
本の内容紹介は以下のように書かれています。
あなたの隣で起きた12の事件。
<寄り道・無駄足>ノンフィクション
人が死んでいる事件なのに寄り道や無駄足とはあまりに不謹慎な・・・と思いつつ、重松さんなりの狙いがあるのだろうと思い読み進めました。
読後の感想をまとめてみます。
『世紀末の隣人』の内容紹介
12件の実際に起きた事件や社会現象を取り上げたルポルタージュなので、あらすじとしてまとめるのは不可能です。
なので今回は、12章それぞれが何を取り上げているのか紹介する形式にします。
夜明け前、孤独な犬が街を駆ける
副題(1999年9月残暑厳しい東京・池袋の白昼の繁華街で、通り魔殺人事件は起きた。)
1999年(平成11年)9月8日に発生した、池袋通り魔殺人事件を取り上げています。
事件の詳細はこちら。
23歳の男が白昼凶器を振り回して2人の女性を殺すに至った感情について追っています。
nowhere manひとりぼっちのあいつ
副題(ワイドショー、バラエティ???テレビの画面にかかるモザイクの向こうに何がある
のか。)
1999年に起きた女子医大生狂言誘拐を取り扱っています。
オウムを利用して有名になろうとした女子大生の話?
ともだちがほしかったママ
副題(各紙が大きく報じた音羽の幼女殺人事件。当初、「お受験」がこの事件を解くキーワ
ードと言われた。)
1999年11月22日に文京区で起きた2歳の女児殺害事件を取り上げています。
事件の詳細はこちら
誰もが陥りそうな事件として取り上げたのか?
支配されない場所へ
副題(「てるくはのる」━奇妙な記号を遺して、容疑者は自らの生命を絶った。)
1999年(平成11年)12月21日に京都市伏見区で起きた、小学生殺害事件を取り上げています。
事件の詳細はこちら
加害者が自殺したため、何も真相がわからない事件について書いています。
当世小僧気質
副題(「出家」がブームだという。人は何を“宗教世界”に求めるのか。)
この世の苦しみから逃れようとする現代人の心の飢えについて書かれています。
桜の森の満開の下にあるものは・・・・・・
副題(少女監禁事件を追って新潟・柏崎の現場へ。坂口安吾の文庫本をポケットにねじこんでー。)
1990年から2000年まで10年間に渡って少女を誘拐監禁した新潟柏崎で起きた事件を取り上げています。
事件の詳細はこちら
犯人とその親の心に踏み込んで書いています。
晴れた空、白い雲、憧れのカントリーライフ
副題(青い空と緑の大地。都会人の多くは「田舎暮らし」に憧れる・・・???。)
Iターン現象について取り上げています。
生きること、働くことの難しさを書いているように思います。
寂しからずや、「君」なき君
副題(2000年5月に起きた、バスジャック事件の犯人も17歳だった。「17歳」は危険な年齢と言われているが。)
2000年5月3日に起きた西鉄バスジャック事件を取り上げています。
事件の詳細はこちら
犯人が17歳であったことにクローズアップし、若者の心の揺れについて書いています。
「街は、いますぐ劇場になりたがっている」と寺山修司は言った
副題(和歌山のヒ素カレー事件の主役の家は、解体の日も人垣ができて・・・???。)
1998年7月25日に和歌山県和歌山市で起きた和歌山毒物カレー事件を取り上げています。
事件の詳細はこちら
犯人についてよりも、事件現場周辺で生活を送る人々に焦点を当てています。
熱い言葉、冷たい言葉
副題(カルロス・ゴーンの号令一下、日産自動車村山工場が閉鎖される。従業員の暮らしは、家族は、どうなるのか。)
2001年に日産の最高経営責任者(CEO)に選出されたカルロス・ゴーンが推し進めた大リストラについて取り上げています。
リストラの是非についてでなく、する側の論理とされる側の論理に焦点を当てています。
年老いた近未来都市
副題(デパートが撤退するニュータウン。アウトレットモールがオープンするニュータウン。あなたはそこに暮らし続けますか。)
国が推進した都市計画について取り上げています。
ニュータウンについてはこちら
多摩ニュータウンを取り上げ、現状について淡々と書いています。
ちなみに、GOOGLEさんで「ニュータウン 未来」と検索したらこんなサイトがトップにきました。
AIBOは東京タワーの夢を見るか
副題(大ブームとなった“犬型ペットロボット”。彼もまた、ぼくたちの新しい「隣人」だ
。)
世紀末にソニーから発表された犬型ロボットAIBOを取り上げ、東京の町並みについて書いてます。
AIBOについて
『世紀末の隣人』のおススメ度はいくつ?
正直言って、採点不可能です。
点数が付けられる類の本ではありません。
↓kindle版はこちら
点数が付けられませんが、この本が面白くない訳ではありません。
ただし、12章の全てが気に入ったり、面白いと感じることも無いと思います。
どれか1つは必ず心に響く章があるはずです。
『世紀末の隣人』をおススメする人
以下、該当する方は読んで見てください。
- 重松清の文章をこよなく愛している人
- 初めてルポルタージュを読む人
- 20世紀末から15年以上過ぎ、当時のことを思い返したい人
- 35歳以上の方が良いかも
『世紀末の隣人』をおススメしない人
以下、該当する方は止めておいた方が良いと思います。
- 重松作品はエッセイか小説だけ読みたい人
- 心に重いしこりを抱えている人
- 事件や現象に関わった人
『世紀末の隣人』の感想
私自身はこの本を読み終えた後、何とも言えない気分になりました。
あ~面白かった!
では無いですし、
重松の文章力は凄いなぁ~
でもありませんでした。
他の重松作品に見られるような「言葉使いの魔術師・重松」は見られないです。
それぞれの着目した視点は「重松ならでは」だと思いますが、実際の表現が普通すぎるように思います。
内容が内容なので、自重した書き方になっているのかも知れませんが、読む前に期待していた「重松が書くルポ」としては不満足に終わる結果となりました。
そういう意味で、重松らしくて「面白い!」と言えるのは、第10章の日産のリストラを取り扱った「熱い言葉、冷たい言葉」と第11章の多摩ニュータウンを取り扱った「年老いた近未来都市」の2つの話です。
文章にアイロニーが効いていて、私が好きな「重松文体」が見受けられました。
基本的にこの2つの話では、人が無くなる様な話ではない点だからかも知れません。
この本が書かれてから15年以上が経ち、風化していく事件もあり、いまや社会現象として取り上げるどころかごく普通の出来事になっている現象もあります。
世紀末から15年、過ぎ去った年月に対し色々と考えさせてくれた本でした。
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