lands_end’s blog

未破裂脳動脈瘤との闘いをコーギーに癒され暮らしています。鹿島アントラーズの応援と読書に人生の全てを掛けている40代の徒然日記です。

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『七つの会議』を読んだ!



七つの会議(著:池井戸潤)を読んだ!

2017年一冊目は池井戸作品になりました。
このヒトの本は、何を読んでも半沢直樹シリーズの臭いがしてしまうのは、あれだけドラマが売れてしまうと仕方の無いことでしょうか・・・。

 

『七つの会議』のざっくりしたあらすじ

東京建電で行われた不祥事の隠蔽にまつわる話しである。

強度不足のねじを使用することでコストカットを行い、大型の受注を取った課長は告発によって飛ばされる。
ただし、会社側はあくまでも不正に対する懲罰人事とは発表せず、パワハラで告発があったための人事異動とし、不正については公にせず隠蔽することした。

東京建電が隠した不正とは、強度不足の『ねじ』であった。
この『ねじ』は、列車や航空機など公共交通機関の座席に使用されており、一度事故が起きた場合、人命に関わるモノであった。
この不祥事めぐり、社内・外部の人間が様々な形で関わっていきます。

  • 強度不足のネジはどうなるのか?
  • 不祥事の結末やいかに?

以上が、ちょうざっくりなあらすじでした。
続いて、もうすこし突っ込んでまとめてみます。

 

8つの章が構成する『七つの会議』

この本は8章で構成されていて、それぞれの章で話が成立していて、ある意味、短編小説と言えるような作りにもなっています。

そこで、それぞれの各章を簡単にまとめてみます。

 

第1章『居眠り八角』

東京建電の営業のエースであり、第1営業課を率いる坂戸課長と、万年係長のダメ社員として社内に知られている八角とのやりあいが描かれています。

営業部長としてトップに君臨する北川は、ノルマを達成出来ない各営業課長やリーダーには厳しく当たるのに、なぜか八角にだけは絡もうとしないのであった。
その微妙な距離感は、北川と八角が同期入社だからという理由だけではない『何か』を感じさせます。

しかし、坂戸課長は他の営業課員が朝から晩まで必死に働いていても、自分のスタイルを変えない八角に怒りを感じ、毎日、事ある毎に八角を罵倒していました。
その待遇に不満を感じた八角は、坂戸をパワハラで訴えるのであった。
それに対し、社内の殆どの人間が八角の方が悪いので会社はまともに取り合わないだろう、と思っていたのだが・・・、会社の回答は坂戸を営業課長から外すという厳しいものであった。

単なるパワハラでの懲罰とは思えず、社内に疑惑の念が渦巻くのであるが、真相は闇のままであった。
そんな中、営業1課の後任となった原島課長は、八角に事の真相を追究する。
追求した結果、真相を知ってしまった原島もまた、身動きの取れない状態になってしまうのである。


第2章『ねじ六奮戦記』

明治40年創業の小さなネジ製作会社が舞台になります。

祖父、父と繋いできた町工場のあとを継いだねじ六の三代目は、妹を経理役員として2人で必死に工場を支えていた。
しかし、ジワジワと不況の波に押され、さらに経営の経験不足も相まって、ねじ六の経営状況は追い詰められていくのであった。
その苦しい状況にトドメを刺すような状況になったのが、東京建電による受注取消しであった。
コンペで必死に勝ち取った新しい『ネジ』の受注が、他社が出してきた破格の見積もりによってひっくり返されてしまいます。
どう考えても、要求されているネジの規格では達成できない見積もりのために・・・。
坂戸課長に、値段を下げるように要求されたことを拒否したことで、新しい受注の話しだけでなく、既存の納品まで失ってしまったねじ六は、じりじりと売り上げを落とし、ついに銀行からの借入金を得られない状況にまで追い詰めれていた。

もはやこれまでか・・・、とねじ六の経営陣も覚悟を決めた時、東京建電から一人の男が訪ねてきたのである。その男は、坂戸の後を継いだ原島課長であった。
原島の訪問目的は、可能な限り早急に、以前破談になった『ネジ』を作成し、納品してくれないか?と言うものであった。

既にジリ貧であったねじ六にとっては渡りに船であり、喜んでその仕事を引き受けるのであった。
しかし、なぜ、突然ねじの仕入先を変えるのかについては、東京建電からは説明を得ることは出来ず、何かひっかるものを感じていました。

銀行からの融資を得ることが出来たある日、応接室の床に1本のネジが落ちているのを見つけます。
それは、先日、原島課長が来社した際に持参した『ねじ』の1本でした。
彼は全て、持ち帰った筈だったのですが、1本だけ落とし忘れていたのです。

何気なく、その『ねじ』の強度を調べた社長は・・・。

 

第3章『コトブキ退社』

27歳の誕生日を一人で過ごした優衣は、社内不倫の果てに男に捨てられ、会社を辞めて別の人生を歩むことを決意するのであった。
しかし、毎日多くの時間を捧げてきた会社に何も残すことなく退社することに悔しさが募り、何とか、自分が成し遂げた何かを、退社までの数ヶ月で会社に残そうと決意するのであった。

その彼女が取り組んだのは、残業する社員の腹を満たし、業務の効率を上げられるようにすることであった。

社内でのドーナツ無人販売である。

総務課の同期の友人の手を借りつつ、総務課への企画書を作り、煩く重箱の隅を突く経理課の追及を乗り越え、無人販売に協力してくれるドーナツ販売業者を見つけ、ついに彼女は目標であった『自分が働いた証』を東京建電内部に残すのであった。

社内販売が始まって間もなく、お金を払わずに持ち去る人間が居る事が発覚します。友人とその犯人を捜すと、なんとそれはかつての優衣の不倫相手であった。

この不倫相手に対して優衣が放つ一言が凄いです。
この本を数行で表していると私は思いました。

「これから私は、自分が本当に信じられるものを探す旅に出る」
かつての恋人に優衣は憐れみの視線を向けた。「だから、もう二度と私の前に現れないで。嘘吐きとニモモノには興味がないの。―行こう。」
(本文より引用)

 

第4章『経理屋家業』

コトブキ退社の章で主人公を務めた優衣の不倫相手・新田がこの章の主人公である。
既に前章を読んだ読者にとって、新田は東京建電の経理課に在籍し、性格的に難があることは周知の事実であり、おそらくほぼ全ての読者が新田に対して反感を感じながら読む状況であろう。
言うなれば、完全アウェイの中で彼の試合は始まりのである。

坂戸の後を継いだ原島課長と些細な事で揉めたことを契機に、原島に対して逆恨み状態になった新田は、原島に何か失態が無いか探るのであった。
その彼の目に、第1営業課から提出されていた書類が目に止る。

東京建電が社是としてコスト削減を推し進めている最中、第1営業部から提出された書類はその社是に逆らう形で、コスト増による発注替えが行われていた。

坂戸課長時代に新しい『ねじ』の新規発注先となったトーメイテックから、昔の発注先であったねじ六へ発注替えとなっていたのである。

不信を感じた新田は、上司である経理課長を巻き込み原島を追及するが、原島の態度は不思議なくらいに強気であった。
そのため、総務の部長をも出馬させ、社長を含む役員会でコスト増の話をぶち上げてもらったのであるが、その結果は『二度とこの件に触れるな』であった。

原島に痛い目を合わせてやろうと思って始めた発注替え追及であったのに、いまや、自分の話しを聞こうとしない直属の上司と会社自体を憎み始める結果となっていた。

そこで、事の真相を掴むべく、営業マンでもないのに組織の枠組みを越え、トーメイテックに足を伸ばして、新規発注と発注替えについてヒアリングを始めた彼の身に降り掛かることとは・・・。


第5章『社内政治家』

多くのサラリーマンの首筋を冷やした章ではないだろうか・・・。
口八丁で東京建電の営業課で昇進していた佐野が主人公である。

営業統括の北川部長の下で、順調に昇進を重ねていた佐野であったが、業績を落とした時に北川が庇わなかった事に対し、恨みを感じていた。
その心の隙に付け込んだ、製造部の部長・稲葉に酒の席に誘われ、上司の悪口や営業部の問題点をリークする失態を犯してしまう。
佐野の裏切りを知った北川は、営業から外し、社内の閑職であるカスタマー室へ飛ばすのであった。

東京建電の社是の1つに「クレームは消せ」というのがあった。

それに基づき、顧客から寄せられるクレームはカスタマー室で受けて、消す、日々を送っていた。しかし、単に全てを消して上に一切報告しないのでは、カスタマー室の存在価値も失われてしまい、カスタマー室自体が無くなってしまう可能性もあった。
そのため、クレームが発生している事、そしてそれに対してカスタマー室が適切に処理している事を、ほどよく社内会議に遡上しなくてはならなかった。
彼にとって、このカスタマー室で自分の存在意義を高めることで、再度、社内の花形である部署への復帰を狙っていたからである。


そのような視点で、会議の議題に上げるクレームを探していた時に目に付いたのが、顧客から営業へのクレームであった。
内容は、深夜でも構わず訪問してくる営業マンへのクレーム。
この類の営業へのクレームは、自分が営業に在籍していた頃には無かった点を匂わす事で、自分の優秀さを醸し出す作戦であったが、敢え無く北川に叩き潰されることになってしまった。

会議で恥をかき、起死回生の逆転を狙っていた佐野の元にもたらされたのは、再び椅子の座面の破損であった。
直接、クレームを寄せたカスタマーを訪ね、問題となった商品を持ち帰った佐野は、破損の原因を追究していく。

やがて、彼が辿り着いたのは、『ねじ』の強度不足であった。

そこに気付くと次々と発覚していく不思議な社内の業務実態。
営業1課による発注替えと発注戻しの真相と、強度不足が発覚した『ねじ』をつかった座面への営業課が行った不正に対して、カスタマー室として内部告発の形で手紙を出すことにしたのであった。

その狙いは、顧客のためや、会社のためではなく、自分を追い込んだ北川を辞任させてやりたいという思いであったのだが・・・。

告発状によって、自身の返り咲きを願っていた彼は、彼の小さな器では処理しきれないサイズの問題を抱え込むことになってしまうのである。

会社ぐるみの隠蔽の前に、ただ無力感を感じる佐野であった。

 

第6章『偽ライオン』

営業統括の北川がこの章の主人公である。

佐野が出した告発状に対し、当初は恫喝で収めようとした営業統括の北川であったが、佐野の狙いが自分の失脚であるとしると、事の真相を全て明らかにすることで、佐野が穿り返した案件が、北川を超えて扱われているマターであることを教えてやるのであった。

因果応報という言葉があるように、今回の不祥事に関しては、北川は忸怩たるモノがあった。それは、かつて自分が手に染めた、隠蔽工作であった。
その隠蔽工作を知られている事もあり、北川は同期であり、かつての営業のライバルでもあった八角に対し、強く出れない関係だったのである。

佐野を黙らせるやり方を見ていた八角は、そんな北川を見て、呟くのであった。

業績の上がらない社員を威勢よく罵倒するが、その実、心に嘘を抱えて虚勢を張っている『偽ライオン』め・・・と。

驚愕の事実を知って、佐野が黙り込むことで、問題は解決したとトップへ報告しひと安心していた北川に、副社長・村西から呼び出しがかかった。
何事かと思いながら村西を訪ねた北川に突きつけられたのは、佐野が出してきたのと同じような告発状であった。
しかし、前回と異なり、手紙の宛先は副社長の村西になっていた。

東京建電は大手電機メーカーソニックの子会社であった。
お目付け役として、親会社ソニックから派遣されている村西は、東京建電の中では今回の『ねじ』に絡む一連の不祥事を、まったく知らされてはいませんでした。

東京建電の社員・役員・社長たちの狙いは、外部に漏れる前に『不良ねじ』によって作成された座席を、こっそりと人知れず取り替えてしまうことであった。

万一、リコールに発展した場合には、東京建電はおろか、親会社のソニックの屋台骨すら揺るがしてしまうことは明白であったからである。
それゆえ、北川としては社長と直で不祥事の隠蔽について話していても、副社長の村西には一切情報を流さないようにしていたのであった。

しかし、謎の告発状によって村西が事件を知ることになり、それは親会社へも知られてしまうことになるのであった。

 

第7章『御前会議』

副社長の村西が主人公の章である。

村西は事の真相を知ると直ちに親会社へ連絡を取り、子会社の東京建電で起きている不正隠蔽の件を報告した。

ソニック側はそれを直ぐに公表はせず、まずは事態の把握に努め、かつ被害額の算定をするため、調査チームを東京建電に派遣したのであった。

一方、村西も独自に報告書をまとめるために調査を行う中で、万年係長・八角と面談を行うのであった。
八角から『東京建電の体質の問題』と言われ、話を聞くべき人物の名前を告げられる。

かつて、東京建電に在籍した人物に話を聞いた村西は、かつてその人物と北川が行った不正隠しと、その実態を知りながら見て見ぬ振りをして、今やソニックの役員になっている人物のことを知らされるのであった。

調査結果が出て、ソニックの社長・役員が一同に会する御前会議が開かれ、今回の一連の不祥事とその隠蔽が明らかになった。
同時に、数千億円に上る損害賠償についてもハッキリしたのであった。

調査結果を元に、ソニックが出した判断は・・・。

 

第8章『最終議案』

この章については、多くは書かないようにしておく。
次に読むときの楽しみが無くなってしまうし・・・。

この章は、前章の『御前会議』において出されたソニックの決定に関して、東京建電トーメイテックを巻き込んで沸き起こる騒動について描かれています。

  • 今回の不正がなぜ起きたのか?
  • 第1営業課長の坂戸のスタンドプレーだったのか?
  • なぜ、不正をせずにはいられなかったのか?
  • そもそも一課長が出来ることなのか?
  • なぜ、最初の時点で東京建電はしかるべき対処を取らなかったのか?

事件の全容と、その後が描かれています。

 

『七つの会議』のオススメ度はいくつ?

おススメ度は75点!

前半の4章が独立した作りになっていることで、読者に犯人の尻尾を掴ませることなく、ミステリーを最後まで楽しむことが出来ると思います。

取り立てて、不正やその不正隠しに『あっ!』と驚くような仕掛けはありません。

ごく普通の手段ですが、それを知ったときに『やっぱり』とか『なんだ』とはならないのは、作者の腕を評価すべきと思います。

 

七つの会議 (集英社文庫)

七つの会議 (集英社文庫)

 

 

まとめ

会社ぐるみの不正隠しや不祥事、またはブラックな働き方や職場でのパワハラなどを取り上げた、現代社会の働き方に疑問を投げかける問題作~。
なんて批評もされているサイトがありましたが・・・。
どうですかね?
私は、あんまりそう言う見方は出来ませんでした。

シンプルに、ある中小企業で起きた不祥事を解き明かすミステリー!
として読んだ方が、面白いと思います。

まあ、若干ですが、読みながら『うっ!』となる台詞はありましたが・・・。
サラリーマンって、しんどいっすね。

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