lands_end’s blog

未破裂脳動脈瘤との闘いをコーギーに癒され暮らしています。鹿島アントラーズの応援と読書に人生の全てを掛けている40代の徒然日記です。

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『半落ち』を読んだ!



半落ち(著:横山秀夫)を読んだ!

何でいまさら、半落ちを!?と思われるかもしれない・・・。
実は、今まで全く読む機会がなかったのだ。
面白い、凄い、という評判は聞いていたけど、、、
食わず嫌いでもなく、本当に機会がなかったのだ。

  

6人が紡ぐ、犯人の秘密と織り成す人間模様

(粗筋)

「妻を殺しました」

と現職警察官(梶)が自首してきたことで、物語は動き始めます。
別の事件の捜査指揮責任者であった志木警視は、上司からの命令で梶を取り調べることになる。しかも、数時間後の記者発表までに結果を出せと・・・。

(事件の内容)
アルツハイマー病が進行していく梶の妻は、7年前に白血病で亡くした一人息子の命日さえも思い出せなくなったことへの恐怖から、息子の母親として意識がしっかりしているうちに、「後生だから殺して欲しい」と夫へ頼む。その妻を不憫に思い、思わず妻に手を掛けしまう。
梶の殺しの動機は明白、妻を殺した手順も明白、自主に至った心境も明白になるなか、
ひとつだけ「梶の行動ではっきりしない事」がありました。
「妻を殺してから、自首するまで、どうして2日間も掛かったのか?」
この「空白の2日間」を巡り、梶を取り巻く人々の様々な人間模様が描き出されます。

  • 警察に都合の良いように自供を取るよう言われた取調べ官の志木。
  • 独自の調査で空白の2日間に迫るスクープを得る新聞記者の中尾。
  • 警察の調書を嘘と見抜きながら、検察組織のために口を噤む佐瀬。
  • 都落ちした過去を「人権派」として一発逆転を夢見る弁護士植村。
  • 警察・検察・弁護士3者が結託した茶番劇に独り抗う裁判官藤林。
  • 静かに、ただ静かに、あと1年の定年を心待ちわびる刑務官古賀。

彼ら全てが引き付けられた「空白の2日間の真相」とは一体何なのか?

 

絶妙な各個人毎の章!

本当に絶妙な量で書かれていると思います。1冊360ページの中に、メインとなる梶も含めれば、7人分の日々の仕事や生活の背景を描き出し、それぞれにちゃんと個性付けがされていました。
これ以上多ければ話が脱線してしまう、これ以上少なければ深みが出ない、そんな感じでした。
多分、読む人それぞれが抱える背景によって、読者が感情移入する人(章)が違うと思います。

私は、弁護士・藤林の章が心に残りました。
きっと、最近煩った病気の性で、「人生の終らせ方」をよく考えていたからだと思います。自殺しようと言う意味ではないですよ!

名裁判官だった藤林の父の最期の日々の描かれ方が、自分が今の両親に感じる心配とリンクするものがあり、そして、それが自分の身にも降りかかったかもしれないと思うと、読むのを止めて、ちょっと考えてしまいました。

 

半落ちのオススメ度はいくつ?

点数としては85点!

今回、読んでみて感じたことは、「この本に、今、出会ってよかった。」ということ。

この本が世を騒がしていた10数年前、30歳前後の私だと、きっと本を読んで得る感慨はずいぶん違ったと思う。人としてとても幼かったから。
でも、40歳を過ぎて、結婚して、仕事に失敗して、身近な人の最後を看取ったり、自分が病気して死を感じたり、そのような経験を得た後でこの本を読んだから、最後まで「飽きずに」読めたと思うのです。
逆に言えば、この本は高校生や大学生が読んだら、作者が描こうとしている本当の意味で面白さ(人の心の機微)を感じることが出来るのかちょっと謎です。
少なくとも、「今、いかにしても楽しむか!」しか考えていなかった頃の私が出会っていたら、たぶん、途中で投げ出していたかもしれません。

なんというか、一定のリズムや、物語全体に漂う暗さが気になるかもしれないので。

それと、この本を読んだ女性の方が、梶の事や「それぞれの男の(勝手な)男気」を、どう感じるのか?も、ちょっと気になるところです。 

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

 

  

世間を騒がせた「半落ち」の設定ミスとは何か?

これを書くと、完全にネタばれになるので、
まだ読んでない人、映像を見ていない人は、この先は見ないで下さい。

設定ミスとして騒がれた事を、色々とネットで検索して得たことをまとめます。

梶はかつて白血病で息子を亡くした事がきっかけとなり、ドナー登録を行い、その後、適合者が現れ、梶は実際に提供者となったことがありました。
妻を殺したあと、ほぼ天涯孤独となった梶は、ある種の血の繋がりを求めて、自ら死を選ぶ前の「空白の2日間」に、その時の「彼」に会いに行ったのである。
その結果、死を選ぼうとしていた梶の心に宿ったのは、
「どうしてもあと1年、51歳までは生きたい。」
ということでした。

なぜなら、51歳の誕生日までが提供期限だったからである。(現在は55歳まで)。

この設定がおかしい。と。
直木賞候補の委員たちは、この設定に疑問を感じ、骨髄バンク協会に尋ねた所、
「収監者を提供者として選ぶことはない」と。
だから、この本は片手落ちで、評価に値しないと・・・。

もうね、アホか・・・と。
小説だよね?ミステリーだよね?そこが重要なの?
私の勝手な考えではありますが、小説(ミステリー)に一番大切なのは、
読者が読み進めている間は、
「空白の2日間は何だろう?何が秘密として隠されているのだろう?」
とドキドキしながら読めることであって、
結末を知ったときに、
「ええーっ!まじか?そうきたかぁ・・・。」
と、素直に唸ることが出来たのであれば、
それは、小説(ミステリー)として成功なんじゃないのか?
と思うのですけどねぇ。

尚、色々とネット検索している時に、とっても詳しく解説している方のブログを見つけました。この方のサイトを読むと、自分のブログが幼稚に見えてちと恥ずかしいです・・・。

直木賞候補作『半落ち』の評判

 

ドラマもよかった

今日、ドラマも借りてきて観ました。
良かった。
小説の良さが失われることなく描かれていた。
本当に良かったです。

主役(寺尾聡)のキャスティングが成功なのかな?

自分が弱っているときに観てはいけないと思います・・・が、
悩んでいるときなら、何かをふっきる切っ掛けになるかもしれません! 

半落ち [DVD]

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